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88話「緑と桃と薄桃と」
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「紅蓮の大火炎よ、全てを覆い、燃やし尽くせ……エクスプロージョン!」
「聖なる雷土の力を以て、邪なる者へ裁きを! セイントボルト!」
髪の緑な魔法使いと、髪の桃色な魔法使いが同時に呪文を唱える。
髪が緑の魔法使い、ブリーツは、じりじりと後退しながらエクスプロージョンを放ち、ストーンゴーレムは二発で砕き、ある程度まとまったモンスター群は一発で蹴散らした。
髪が桃色の魔法使い、ミーナは初歩的な光魔法、セイントボルトを駆使し、ブリーツが打ち漏らしたモンスターを出来る限り馬車へ近付けないように倒していく。
「なんか、さっきと変わってないぞ、これは……」
いや、さっきよりも厳しいんじゃないか? ブリーツは、口に出してから、心の中でそう思った。魔法使い二人で、この量のモンスターを捌くのは無謀だ。一度でも、一匹でもモンスターに近寄られてしまったら、一見、じりじりと押されている程度に見える戦線は、一気に崩壊してしまうだろう。そして、戦士の居ない戦線を立て直すのは、非常に困難だ。
「接近戦する奴、居ないぞこれー!」
打ち漏らしが多いほど、二人が後退する速さも早くなる。ブリーツは、幸運にも魔法の弾幕の隙間を通り、自分たちの間近に迫ったモンスターを見る度に、冷や汗をかいている。
「アークスもサフィーも、すぐに戦えそうにないしなぁ。片や足を砕かれて、片やボロボロだからな。これは……」
「ミズキとエミナが居るぴょん!」
「あの二人か? 魔法使いだったぞあれ。魔法使い四人とか、どんなバランスだよー! 戦うってレベルじゃねーぞ!」
「ミズキとエミナは接近戦も得意な魔法使いぴょんよ! エミナのドリルブラストとか、とんでもない威力でストーンゴーレムを砕くんだぴょん!」
「そうなのか? なんか、可愛い顔してアグレッシブな奴らだったんだな……」
「だから、二人が来るまで待つぴょんよ!」
「二人が来るまでかぁ……でも、あの茶色い髪のは……」
「エミナだぴょん! 聖なる雷土の力を以て、邪なる者へ裁きを! セイントボルト!」」
「おお……エミナちゃんっていうのか。そのエミナちゃんは、サフィーとアークスにかかりきりだから、来るならきっと、どっちかと一緒だぜ?」
「だったらミズキが居るぴょん!」
「どっちにしろ前衛一人じゃねーか! ……ってか、その前衛も、何故か帰ってこねーし! 紅蓮の大火炎よ、全てを覆い、燃やし尽くせ……エクスプロージョン!」」
ブリーツとミーナは、絶え間なく魔法を討ちながら、情報交換も行っている。
「しかも、結構重症だったぞ、そいつ! 紅蓮の大火炎よ、全てを覆い、燃やし尽くせ……エクスプロージョン!」
二人は懸命に、魔法による弾幕を張るようにはしているものの、魔法使い二人に対して、モンスターは凄まじい数で押し寄せてくる。近接戦闘が出来るとはいえ、手負いの魔法使いが一人加わったところで、戦局が変わるとは思えない。
「聖なる雷土の力を以て、邪なる者へ裁きを! セイントボルト!」
ミーナの手からセイントボルトが放たれる。
「うおっ!?」
悲鳴を上げたのはセイントボルトに当たったモンスターではなく、ミーナだ。ブラッディガーゴイルに向けて放ったセイントボルトは外れ、ブラッディガーゴイルは一気にミーナとの距離を詰めた。
「うわぁ! まずいぴょん!」
「灼熱の火球よ、我が眼前の者を焼き尽くせ……ファイアーボール!」
見るからに鋭い長い爪がミーナを襲おうとした時、ファイアーボールがブラッディガーゴイルの横から命中し、ブラッディガーゴイルは地に伏した。
「危ねー危ねー。てか、こっちやばいやばい!」
ブリーツが走って後退を始めた。
「あ、ま、待つぴょん!」
ミーナもそれに続く。
「うおお……紅蓮の大火炎よ、全てを覆い、燃やし尽くせ……エクスプロージョン!」
「せ、聖なる雷土の力を以て、邪なる者へ裁きを! セイントボルト!」
走って交代しながらも、二人は魔法を撃ち続けたが、戦線が再び拮抗た時には、既に馬車の間近だった。
「わっ! もうこんなに近くに!」
外の騒がしさに反応して馬車から飛び出してきたのは、ミーナよりも少し薄いピンク色の髪をした魔法使いだ。
「よう、ミズキちゃんかな? 戦線復帰できるのかい?」
「あっ、どうも、ええと……」
「ブリーツだ」
「ブリーツさん。大丈夫です、痛み止め、打ってもらいましたから。本当は安静にしてないといけないんだけど……闇を射抜く光の刃、その先にあるのは希望の道……シャイニングビーム!」
ミズキが会話をしながらシャイニングビームを放った。情報交換をしながらもモンスターの相手をしないと、モンスターはぐいぐいと進軍の勢いを強めてしまうからだ。
「だよな、じゃあ激しく動くなんて無理だぜやっぱ……紅蓮の大火炎よ、全てを覆い、燃やし尽くせ……エクスプロージョン!」
ブリーツがミーナの方を見ながらエクスプロージョンを放つ。
「むー……馬車を逃がすしかないぴょんけど……」
「二人が危ないから、出来るだけ動かさないって話だったけど、もう無理だよな、こりゃ」
「あの、僕が接近戦して出来るだけ時間を稼いでみようか?」
「出来るか? その体で」
「やってみる! 深い闇の如く光を引き裂く力を我に……ソードオブエビル!」
ミズキの手に黒い光が集まり、収束すると、一瞬のうちに膨張して剣の形になり、ミズキはそれを握った。
「ライブレイドの方が使い慣れてるけど、威力的はこっちの方が高い筈。慣れないと……」
ミズキは、使用回数においてはライブレイドの方が多いのだが、ライブレイドは、属性としては雷属性に属する魔法だ。ミズキは雷属性魔法の腕は凡庸だが、闇属性においてはかなりの適性がある。
得意な属性の魔法を使うのは、魔法使いにとっては常識で、わざわざ威力の出しにくい苦手な魔法を使う魔法使いは、その魔法に相当なこだわりがあるか、あるいは魔法使いとしての訓練を受けていないか、魔法において知識の乏しい人かのどれかであろう。
ミズキが闇属性と光属性が得意な事は、ミズキ自身も最近知った。なので、それまで使っていた雷属性のライブレイドから、闇属性のソードオブエビルに切り替えようと思っているのだが……これもなかなか慣れない。というのも、同じ魔法の剣を作り出す魔法でも、魔法によって、剣の握り心地や重さ、大きさがまちまちだからだ。
「ふぅぅぅ……」
ミズキが深く、そしてゆっくりと息を吐きながら、敵を見据える。敵は一旦、三分の一まで削られたが、今は、また元の勢いを取り戻しているような気がする。もしかすると、元の数にまで復帰したのかもしれない。
「出来るかな……」
一番重篤な傷を受けているサフィーだが、ミズキが見た時には、それほどの傷を負っていても、敵の只中で戦い続けていた。殲滅速度も相当なものだった。ミズキに同じことが出来るかというと、無理だろう。職業としては近接戦が最も得意な戦士と、多少は近接戦闘が出来る程度の魔法使いとでは、近接戦闘力には天と地ほどの差がある。
「突出した所を狙うしか……」
敵陣深くに斬り込んだら、一瞬にしてやられてしまうだろう。まずは敵陣の突出した部分から仕掛ける。ミズキは土を蹴って、モンスターの大群に向かっていった。
「聖なる雷土の力を以て、邪なる者へ裁きを! セイントボルト!」
髪の緑な魔法使いと、髪の桃色な魔法使いが同時に呪文を唱える。
髪が緑の魔法使い、ブリーツは、じりじりと後退しながらエクスプロージョンを放ち、ストーンゴーレムは二発で砕き、ある程度まとまったモンスター群は一発で蹴散らした。
髪が桃色の魔法使い、ミーナは初歩的な光魔法、セイントボルトを駆使し、ブリーツが打ち漏らしたモンスターを出来る限り馬車へ近付けないように倒していく。
「なんか、さっきと変わってないぞ、これは……」
いや、さっきよりも厳しいんじゃないか? ブリーツは、口に出してから、心の中でそう思った。魔法使い二人で、この量のモンスターを捌くのは無謀だ。一度でも、一匹でもモンスターに近寄られてしまったら、一見、じりじりと押されている程度に見える戦線は、一気に崩壊してしまうだろう。そして、戦士の居ない戦線を立て直すのは、非常に困難だ。
「接近戦する奴、居ないぞこれー!」
打ち漏らしが多いほど、二人が後退する速さも早くなる。ブリーツは、幸運にも魔法の弾幕の隙間を通り、自分たちの間近に迫ったモンスターを見る度に、冷や汗をかいている。
「アークスもサフィーも、すぐに戦えそうにないしなぁ。片や足を砕かれて、片やボロボロだからな。これは……」
「ミズキとエミナが居るぴょん!」
「あの二人か? 魔法使いだったぞあれ。魔法使い四人とか、どんなバランスだよー! 戦うってレベルじゃねーぞ!」
「ミズキとエミナは接近戦も得意な魔法使いぴょんよ! エミナのドリルブラストとか、とんでもない威力でストーンゴーレムを砕くんだぴょん!」
「そうなのか? なんか、可愛い顔してアグレッシブな奴らだったんだな……」
「だから、二人が来るまで待つぴょんよ!」
「二人が来るまでかぁ……でも、あの茶色い髪のは……」
「エミナだぴょん! 聖なる雷土の力を以て、邪なる者へ裁きを! セイントボルト!」」
「おお……エミナちゃんっていうのか。そのエミナちゃんは、サフィーとアークスにかかりきりだから、来るならきっと、どっちかと一緒だぜ?」
「だったらミズキが居るぴょん!」
「どっちにしろ前衛一人じゃねーか! ……ってか、その前衛も、何故か帰ってこねーし! 紅蓮の大火炎よ、全てを覆い、燃やし尽くせ……エクスプロージョン!」」
ブリーツとミーナは、絶え間なく魔法を討ちながら、情報交換も行っている。
「しかも、結構重症だったぞ、そいつ! 紅蓮の大火炎よ、全てを覆い、燃やし尽くせ……エクスプロージョン!」
二人は懸命に、魔法による弾幕を張るようにはしているものの、魔法使い二人に対して、モンスターは凄まじい数で押し寄せてくる。近接戦闘が出来るとはいえ、手負いの魔法使いが一人加わったところで、戦局が変わるとは思えない。
「聖なる雷土の力を以て、邪なる者へ裁きを! セイントボルト!」
ミーナの手からセイントボルトが放たれる。
「うおっ!?」
悲鳴を上げたのはセイントボルトに当たったモンスターではなく、ミーナだ。ブラッディガーゴイルに向けて放ったセイントボルトは外れ、ブラッディガーゴイルは一気にミーナとの距離を詰めた。
「うわぁ! まずいぴょん!」
「灼熱の火球よ、我が眼前の者を焼き尽くせ……ファイアーボール!」
見るからに鋭い長い爪がミーナを襲おうとした時、ファイアーボールがブラッディガーゴイルの横から命中し、ブラッディガーゴイルは地に伏した。
「危ねー危ねー。てか、こっちやばいやばい!」
ブリーツが走って後退を始めた。
「あ、ま、待つぴょん!」
ミーナもそれに続く。
「うおお……紅蓮の大火炎よ、全てを覆い、燃やし尽くせ……エクスプロージョン!」
「せ、聖なる雷土の力を以て、邪なる者へ裁きを! セイントボルト!」
走って交代しながらも、二人は魔法を撃ち続けたが、戦線が再び拮抗た時には、既に馬車の間近だった。
「わっ! もうこんなに近くに!」
外の騒がしさに反応して馬車から飛び出してきたのは、ミーナよりも少し薄いピンク色の髪をした魔法使いだ。
「よう、ミズキちゃんかな? 戦線復帰できるのかい?」
「あっ、どうも、ええと……」
「ブリーツだ」
「ブリーツさん。大丈夫です、痛み止め、打ってもらいましたから。本当は安静にしてないといけないんだけど……闇を射抜く光の刃、その先にあるのは希望の道……シャイニングビーム!」
ミズキが会話をしながらシャイニングビームを放った。情報交換をしながらもモンスターの相手をしないと、モンスターはぐいぐいと進軍の勢いを強めてしまうからだ。
「だよな、じゃあ激しく動くなんて無理だぜやっぱ……紅蓮の大火炎よ、全てを覆い、燃やし尽くせ……エクスプロージョン!」
ブリーツがミーナの方を見ながらエクスプロージョンを放つ。
「むー……馬車を逃がすしかないぴょんけど……」
「二人が危ないから、出来るだけ動かさないって話だったけど、もう無理だよな、こりゃ」
「あの、僕が接近戦して出来るだけ時間を稼いでみようか?」
「出来るか? その体で」
「やってみる! 深い闇の如く光を引き裂く力を我に……ソードオブエビル!」
ミズキの手に黒い光が集まり、収束すると、一瞬のうちに膨張して剣の形になり、ミズキはそれを握った。
「ライブレイドの方が使い慣れてるけど、威力的はこっちの方が高い筈。慣れないと……」
ミズキは、使用回数においてはライブレイドの方が多いのだが、ライブレイドは、属性としては雷属性に属する魔法だ。ミズキは雷属性魔法の腕は凡庸だが、闇属性においてはかなりの適性がある。
得意な属性の魔法を使うのは、魔法使いにとっては常識で、わざわざ威力の出しにくい苦手な魔法を使う魔法使いは、その魔法に相当なこだわりがあるか、あるいは魔法使いとしての訓練を受けていないか、魔法において知識の乏しい人かのどれかであろう。
ミズキが闇属性と光属性が得意な事は、ミズキ自身も最近知った。なので、それまで使っていた雷属性のライブレイドから、闇属性のソードオブエビルに切り替えようと思っているのだが……これもなかなか慣れない。というのも、同じ魔法の剣を作り出す魔法でも、魔法によって、剣の握り心地や重さ、大きさがまちまちだからだ。
「ふぅぅぅ……」
ミズキが深く、そしてゆっくりと息を吐きながら、敵を見据える。敵は一旦、三分の一まで削られたが、今は、また元の勢いを取り戻しているような気がする。もしかすると、元の数にまで復帰したのかもしれない。
「出来るかな……」
一番重篤な傷を受けているサフィーだが、ミズキが見た時には、それほどの傷を負っていても、敵の只中で戦い続けていた。殲滅速度も相当なものだった。ミズキに同じことが出来るかというと、無理だろう。職業としては近接戦が最も得意な戦士と、多少は近接戦闘が出来る程度の魔法使いとでは、近接戦闘力には天と地ほどの差がある。
「突出した所を狙うしか……」
敵陣深くに斬り込んだら、一瞬にしてやられてしまうだろう。まずは敵陣の突出した部分から仕掛ける。ミズキは土を蹴って、モンスターの大群に向かっていった。
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