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41話「しばしの楽しい食事」
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サフィー達四人がウエイトレスに注文してから、最初に運ばれてきたのはミートポタージュだった。
「お待たせしました。こちら、ミートポタージュです」
若い女性のウエイトレスが、トレーから皿を持ち上げながら言った。
「あ、それ、ポチのです。こいつのです」
ドドがポチを指さす。
「ああ、ワンちゃんのですか。はい、美味しいスープよ」
ぐったりと床に寝そべったポチの前に、ウエイトレスがにっこりと微笑みながら、スープを置いた。ポチはいつものように無表情のまま、ゆっくりと体を起こしてスープの方を見た。
「こちら、ベリーパンです」
「あ、私です」
サフィーが言う。
「それからこちらが……」
ウエイトレスは、全ての皿をテーブルに並べ終わるまでに、三回往復することになった。そのうち、三回目はフルーツポンチを単品で持ってくることになった。フルーツポンチは重いので、他のと一緒には運べないからだろうと、一同はなんとなく察した。
「以上でご注文のメニューはお揃いでしょうか?」
「えーと、あと、フランス料理のフルコースを……」
「全部揃ってます!」
この期に及んでブリーツがボケをかましそうだったので、サフィーがブリーツの声を掻き消すように、大き目の声で言った。
「ではごゆっくりどうぞ」
ウエイトレスは、にこやかな表情をし、会釈をしてカウンターの方へと歩いていった。
「しかしまあ……なんか、大袈裟なのが来たな」
ブリーツが、サフィーの前にあるフルーツポンチを見て感嘆した。
「何でしょうね、これ。外側は堅そうだけど」
「中はちゃんと、フルーツだったみたいよ。ヤシの実っぽいけど……この辺りで採れるのかしらね?」
サフィーの前に置かれているのは、外側に硬質の皮を纏った、何らかの木の実だ。その中には様々な果肉がボール状に切り抜かれたものが入っていて、フルーツポンチになっている。隣にあるのは同じくサフィーが頼んだベリーパンだが、それと比較しても、かなり大きい。
「なんつーか……それ、全部サフィー一人で食うのか?」
「うん。あ、でも、ちょっと大き目だから、味見くらいはしていいわよ、みんな」
「ああ、そう? じゃあ頂き……いてっ!」
サフィーが、フルーツポンチに手を伸ばそうとする、フォークを持ったブリーツの手をはたいて払った。フォークがブリーツの手から落下する。
「味見していいって言ったじゃんかー!」
「真っ先に食べないでよ。一口目は私が……」
サフィーは口を尖らせてブリーツに文句を言いながら、手に持ったスプーンをくり貫かれた木の実の中に入れた。
スプーンにすくわれたのは、薄ピンクの玉だ。サフィーはそれを口に運ぶ。
スプーンから、様々なフルーツの味が混ざり合ったジュースと、薄ピンクの玉状の果肉が、サフィーの下の上へと滑り落ちていく。
「んー……美味しい! これ苺茄子だわ!」
苺茄子。苺なのだが、細長くて大きな茄子のような形をしていることから、それは苺茄子と名付けられた。味は、その大きさに見合った大味なもので、普通サイズの苺よりも薄味だ。しかし、大きな苺茄子はかぶりついて豪快に食べられるという利点があったり、今回のように調理用としての需要が高く、人気の果物である。
「ああ、この自然な感じがいいわ。ここ、いいお店ね。ドド、一口どうぞ」
「あっ、ありがとうございます」
ドドは自分のスプーンで、フルーツポンチの中身を一つ、取り出して口へ入れた。ドドのすくったのは緑色だ。ドドがそれを、美味しそうに口に運ぶ。
「ああ、メロンですね、これ。甘くて美味しいです」
ドドが満面の笑みでフルーツをほおばっている。
「じゃあ俺も。フォークしかないけど」
「……」
「な、なんだよ。ポチみたいな顔して」
サフィーのじとりとした目線がブリーツに刺さる。
「……別に。どうぞ」
なにやら不本意そうなサフィーを横目に、ブリーツがフォークをくり貫かれた木の実に入れる。
「んじゃ、頂きまーす」
フォークを上げると、その先には二つの丸い果肉が刺さっていた。一つは薄桃色で、一つは赤い。
「おっと、二本釣りだ」
ブリーツは一瞬戸惑ったが、思い切って二つの果肉をいっぺんに口へと運んだ。
「ん、みずみずしいな……お、どうしたサフィー?」
「……いえ、何でもないけど……なんかイライラするのよね、ブリーツって」
「ええ!? 何だよそれー。理不尽過ぎて、どうしていいか分からんぞー」
サフィーが本気で苛立っている顔をしている。なんという理不尽だろうと、ブリーツは心の中で嘆いた。
「くそっ、苦労が絶えんぜ……もぐもぐ……」
ブリーツが、サンドイッチをぱくつきながら吐き捨てた。ブリーツの食事は骨付きのローストラム肉と、サンドイッチだ。
サンドイッチには、刻んだ野菜とカッテージチーズ、スライスされたローストビーフが挟んであり、マスタードと、ビネガードレッシングで軽く味付けがしてある。
「ん……うまいうまい……」
ブリーツがもうひとくち口に含んで、シャキシャキと美味しそうな音を立てながら租借する。そんなブリーツの目に、ふと、ポチの姿が映る。特に意識していたわけではない。なんとなく視線を下げただけだが、ポチの姿が映ってしまったのだ。
「……なんだ、やっぱりミルク舐めてるじゃねーか」
ブリーツは、特に悪意があって言ったわけではないのだが、ポチはすぐさまスープを飲むのをやめ、物凄い速さでブリーツの方へと振り返った。ブリーツは、ポチが物凄い剣幕で睨みつけているように見える。ポチ全体からみなぎる威圧感も、普通の魔獣とは思えないほどだ。
「ブリーツ、さっきのウエイトレスの言う事、聞いてなかったの? それはミルクじゃなくて、ミートポタージュでしょ。そんなことやってると、そのうちポチに首をカッ切られるわよ」
「ん? あ、ああ……そうだったよな、そういや。忘れてたぜ。て、てかさ、それ、冗談じゃねーぞ。この迫力は凄いぞー……」
ポチから出るあまりの気迫に、ブリーツは身動きできない。
「じゃあ、怒ってるんでしょ。人の気分を害したら謝れって、常識でしょ」
「む……そ、そうだな。ええと、すまんかった、本当に」
「……」
ポチは依然として体を動かさず、ブリーツを睨んでいる。
「い、いや、本当にすまなかったって。俺が悪かったよ。俺の勘違いだ」
「ぐるる……」
ポチは、僅かに喉を震わせると、ブリーツの方を向いた首を元に戻し、スープをペロペロと舐め始めた。
「ほっ……」
ポチが食事に戻ったようなので、ブリーツは胸を撫で下ろして安心した。
「はー……店の雰囲気はいいんだが、なんだか癒されねーなー……はむ……」
ブリーツはぐったりとして、皿の上の骨を持ち上げた。骨の先にはカットされたラムの肉が付いている。ブリーツはそれに食いつくと、噛み千切った。
「自業自得でしょ。自分のデリカシーの無さ、分かった?」
サフィーがやれやれといった様子で他人事のように言った。相変わらずフルーツポンチをパクパクと口に入れている。
「んなこと言ったってなぁ……むぐむぐ……」
肉は噛み千切れるほど柔らかいが、歯応えもちゃんとあり、肉の歯応えが楽しめる。赤身が多いのも、柔らかさと歯応えのバランスが良いことの一因だろう。
「んん……うまいなぁ……」
ブリーツが、更にパクつく。肉が骨に付いている状態で調理されているので、美味だと言われる骨のまわりの肉も余すことなく頂けるというのも、骨付き肉の利点だ。
「お待たせしました。こちら、ミートポタージュです」
若い女性のウエイトレスが、トレーから皿を持ち上げながら言った。
「あ、それ、ポチのです。こいつのです」
ドドがポチを指さす。
「ああ、ワンちゃんのですか。はい、美味しいスープよ」
ぐったりと床に寝そべったポチの前に、ウエイトレスがにっこりと微笑みながら、スープを置いた。ポチはいつものように無表情のまま、ゆっくりと体を起こしてスープの方を見た。
「こちら、ベリーパンです」
「あ、私です」
サフィーが言う。
「それからこちらが……」
ウエイトレスは、全ての皿をテーブルに並べ終わるまでに、三回往復することになった。そのうち、三回目はフルーツポンチを単品で持ってくることになった。フルーツポンチは重いので、他のと一緒には運べないからだろうと、一同はなんとなく察した。
「以上でご注文のメニューはお揃いでしょうか?」
「えーと、あと、フランス料理のフルコースを……」
「全部揃ってます!」
この期に及んでブリーツがボケをかましそうだったので、サフィーがブリーツの声を掻き消すように、大き目の声で言った。
「ではごゆっくりどうぞ」
ウエイトレスは、にこやかな表情をし、会釈をしてカウンターの方へと歩いていった。
「しかしまあ……なんか、大袈裟なのが来たな」
ブリーツが、サフィーの前にあるフルーツポンチを見て感嘆した。
「何でしょうね、これ。外側は堅そうだけど」
「中はちゃんと、フルーツだったみたいよ。ヤシの実っぽいけど……この辺りで採れるのかしらね?」
サフィーの前に置かれているのは、外側に硬質の皮を纏った、何らかの木の実だ。その中には様々な果肉がボール状に切り抜かれたものが入っていて、フルーツポンチになっている。隣にあるのは同じくサフィーが頼んだベリーパンだが、それと比較しても、かなり大きい。
「なんつーか……それ、全部サフィー一人で食うのか?」
「うん。あ、でも、ちょっと大き目だから、味見くらいはしていいわよ、みんな」
「ああ、そう? じゃあ頂き……いてっ!」
サフィーが、フルーツポンチに手を伸ばそうとする、フォークを持ったブリーツの手をはたいて払った。フォークがブリーツの手から落下する。
「味見していいって言ったじゃんかー!」
「真っ先に食べないでよ。一口目は私が……」
サフィーは口を尖らせてブリーツに文句を言いながら、手に持ったスプーンをくり貫かれた木の実の中に入れた。
スプーンにすくわれたのは、薄ピンクの玉だ。サフィーはそれを口に運ぶ。
スプーンから、様々なフルーツの味が混ざり合ったジュースと、薄ピンクの玉状の果肉が、サフィーの下の上へと滑り落ちていく。
「んー……美味しい! これ苺茄子だわ!」
苺茄子。苺なのだが、細長くて大きな茄子のような形をしていることから、それは苺茄子と名付けられた。味は、その大きさに見合った大味なもので、普通サイズの苺よりも薄味だ。しかし、大きな苺茄子はかぶりついて豪快に食べられるという利点があったり、今回のように調理用としての需要が高く、人気の果物である。
「ああ、この自然な感じがいいわ。ここ、いいお店ね。ドド、一口どうぞ」
「あっ、ありがとうございます」
ドドは自分のスプーンで、フルーツポンチの中身を一つ、取り出して口へ入れた。ドドのすくったのは緑色だ。ドドがそれを、美味しそうに口に運ぶ。
「ああ、メロンですね、これ。甘くて美味しいです」
ドドが満面の笑みでフルーツをほおばっている。
「じゃあ俺も。フォークしかないけど」
「……」
「な、なんだよ。ポチみたいな顔して」
サフィーのじとりとした目線がブリーツに刺さる。
「……別に。どうぞ」
なにやら不本意そうなサフィーを横目に、ブリーツがフォークをくり貫かれた木の実に入れる。
「んじゃ、頂きまーす」
フォークを上げると、その先には二つの丸い果肉が刺さっていた。一つは薄桃色で、一つは赤い。
「おっと、二本釣りだ」
ブリーツは一瞬戸惑ったが、思い切って二つの果肉をいっぺんに口へと運んだ。
「ん、みずみずしいな……お、どうしたサフィー?」
「……いえ、何でもないけど……なんかイライラするのよね、ブリーツって」
「ええ!? 何だよそれー。理不尽過ぎて、どうしていいか分からんぞー」
サフィーが本気で苛立っている顔をしている。なんという理不尽だろうと、ブリーツは心の中で嘆いた。
「くそっ、苦労が絶えんぜ……もぐもぐ……」
ブリーツが、サンドイッチをぱくつきながら吐き捨てた。ブリーツの食事は骨付きのローストラム肉と、サンドイッチだ。
サンドイッチには、刻んだ野菜とカッテージチーズ、スライスされたローストビーフが挟んであり、マスタードと、ビネガードレッシングで軽く味付けがしてある。
「ん……うまいうまい……」
ブリーツがもうひとくち口に含んで、シャキシャキと美味しそうな音を立てながら租借する。そんなブリーツの目に、ふと、ポチの姿が映る。特に意識していたわけではない。なんとなく視線を下げただけだが、ポチの姿が映ってしまったのだ。
「……なんだ、やっぱりミルク舐めてるじゃねーか」
ブリーツは、特に悪意があって言ったわけではないのだが、ポチはすぐさまスープを飲むのをやめ、物凄い速さでブリーツの方へと振り返った。ブリーツは、ポチが物凄い剣幕で睨みつけているように見える。ポチ全体からみなぎる威圧感も、普通の魔獣とは思えないほどだ。
「ブリーツ、さっきのウエイトレスの言う事、聞いてなかったの? それはミルクじゃなくて、ミートポタージュでしょ。そんなことやってると、そのうちポチに首をカッ切られるわよ」
「ん? あ、ああ……そうだったよな、そういや。忘れてたぜ。て、てかさ、それ、冗談じゃねーぞ。この迫力は凄いぞー……」
ポチから出るあまりの気迫に、ブリーツは身動きできない。
「じゃあ、怒ってるんでしょ。人の気分を害したら謝れって、常識でしょ」
「む……そ、そうだな。ええと、すまんかった、本当に」
「……」
ポチは依然として体を動かさず、ブリーツを睨んでいる。
「い、いや、本当にすまなかったって。俺が悪かったよ。俺の勘違いだ」
「ぐるる……」
ポチは、僅かに喉を震わせると、ブリーツの方を向いた首を元に戻し、スープをペロペロと舐め始めた。
「ほっ……」
ポチが食事に戻ったようなので、ブリーツは胸を撫で下ろして安心した。
「はー……店の雰囲気はいいんだが、なんだか癒されねーなー……はむ……」
ブリーツはぐったりとして、皿の上の骨を持ち上げた。骨の先にはカットされたラムの肉が付いている。ブリーツはそれに食いつくと、噛み千切った。
「自業自得でしょ。自分のデリカシーの無さ、分かった?」
サフィーがやれやれといった様子で他人事のように言った。相変わらずフルーツポンチをパクパクと口に入れている。
「んなこと言ったってなぁ……むぐむぐ……」
肉は噛み千切れるほど柔らかいが、歯応えもちゃんとあり、肉の歯応えが楽しめる。赤身が多いのも、柔らかさと歯応えのバランスが良いことの一因だろう。
「んん……うまいなぁ……」
ブリーツが、更にパクつく。肉が骨に付いている状態で調理されているので、美味だと言われる骨のまわりの肉も余すことなく頂けるというのも、骨付き肉の利点だ。
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