16 / 110
16話「ミーナのリボン」
しおりを挟む
「はぁ……はぁ……もう少しだ……」
アークスの体力は、アークスの予想以上に擦り減っていた。トロールに気を付けるために耳を澄まし、音を立てずに、常に周りを警戒しつつ移動している。また、気持ちも焦っていて、何度も悪い足場に躓いては転びそうになった。それが原因で、アークスは、予想以上に激しい体力の消耗に晒されることになっていた。
「あの花畑も、あいつに間違いないよな……」
荒い息をしながら、アークスは考えた。あのトロールが土を撒き散らしていたから、あんなに不規則で荒々しい轍が花畑に出来ていたのだ。あれは、あのトロールが力任せに歩いた足跡と、土を蹴散らした事によって出来たものだ。
アークスは、二つの川の間にある花畑を再び通った時に轍を見て、それを確信した。
「ミーナ……どこに……」
アークスの頭の中で、魔女の依頼と、ここでの状況がぴったりと合致していた。あのトロールのせいで、ミーナは立ち往生しているか、もしくは……無事ではないかもしれない。死んでしまっている可能性すらあるが……大怪我でもしていたら、すぐにでも病院へと運ばないといけない。アークスは焦る一方だ。
「ん……これは……」
アークスの目に、見慣れない何かが映った。アークスは、見慣れない何かの元へと小走りで近付いた。
「リボン……」
薄紫色のリボンが木の枝に引っかかっている。そういえば、魔女が言っていた。ミーナの帽子には、リボンが沢山付いている。
これがその中の一つなのだろうか。だとしたら、ミーナは無事なのだろうか。
帽子についているリボンが、それのみ、この木の枝に引っかかっているという事は、ミーナはここを焦って通り過ぎたということか。それとも、うっかりリボンを木の枝に引っ掛けてしまっただけなのか……。
「近くに居るのかな」
ここにリボンが引っ掛かっているという事は、ミーナがここを通ったという事だ。ここにきて初めてミーナがここに居たという形跡が見つかった。アークスが見逃していなければだが、ミーナの居た形跡は、この川でしか見つかっていない。ミーナはこの近くに居るのかもしれない。
「……」
アークスは、大声でミーナを呼ぶか迷った。ここでミーナを呼べば、ミーナが見つかるかもしれないが、もしトロールが近くに居た場合、叫び声で気を引いてしまうかもしれない。
周りを見渡す。前方の木々の間に見え隠れしているのは川だ。あとほんの少しで河原に着くという地点に居る。
この川は、さっきの川よりも幅が狭く、石が転がっている河原もさっきの川よりも狭くなっている。なので、森を抜けてから川までは、かなり近い。
「魔法の練習なら、さっきの所の方がいいな。火の手が上がりにくい」
アークスは呟きつつ、辺りを観察する。河原の幅が狭いということは、森の木が多く、障害物が沢山あるということだ。
この状況は、アークスにとっては有利な状況だ。ミーナは探しにくいが、トロールの視界は狭くなるし、身を隠す場所も多い。
あんなに派手に暴れているトロールならば、視界が悪くとも音だけで分かる。大きな音を立てながら移動しているのだから、近付いただけで分かるだろう。そこまで考えた時、アークスは気付いた。
「あ……」
ミーナがここに居る可能性は、更に高まる。ここはトロールから身を隠すためには絶好の場所だ。ミーナはやっぱり、あのトロールに狙われていて……どこをどう通ってきたかは分からないが、ここへと身を隠すことになった。アークスは、そんな推測を思いついた。
「よし……」
だとすれば、近くにミーナが居る可能性は、かなり高い。そして、あんな大袈裟な音を立てて移動しているトロールが、こんな静かな所の近くに居るわけがない。だったら、ミーナを呼んでみるべきだ。
「ミーナーっ!」
アークスは叫んだ。アークスの甲高い声が辺りに響き渡る。
「ミーナーっ! 聞こえたら返事してくれー!」
これだけ叫んでも、特に辺りに変化は訪れない。どうやらトロールは近くには居なさそうだ。
「ミーナーっ!」
引き続き、トロールの音に注意しながら、ミーナを探すことにする。ミーナを探すのには、むしろ今が一番のチャンスだ。
「ミーナ……むぐっ!?」
突然、何者かがアークスの口を手で押さえた。
アークスの体力は、アークスの予想以上に擦り減っていた。トロールに気を付けるために耳を澄まし、音を立てずに、常に周りを警戒しつつ移動している。また、気持ちも焦っていて、何度も悪い足場に躓いては転びそうになった。それが原因で、アークスは、予想以上に激しい体力の消耗に晒されることになっていた。
「あの花畑も、あいつに間違いないよな……」
荒い息をしながら、アークスは考えた。あのトロールが土を撒き散らしていたから、あんなに不規則で荒々しい轍が花畑に出来ていたのだ。あれは、あのトロールが力任せに歩いた足跡と、土を蹴散らした事によって出来たものだ。
アークスは、二つの川の間にある花畑を再び通った時に轍を見て、それを確信した。
「ミーナ……どこに……」
アークスの頭の中で、魔女の依頼と、ここでの状況がぴったりと合致していた。あのトロールのせいで、ミーナは立ち往生しているか、もしくは……無事ではないかもしれない。死んでしまっている可能性すらあるが……大怪我でもしていたら、すぐにでも病院へと運ばないといけない。アークスは焦る一方だ。
「ん……これは……」
アークスの目に、見慣れない何かが映った。アークスは、見慣れない何かの元へと小走りで近付いた。
「リボン……」
薄紫色のリボンが木の枝に引っかかっている。そういえば、魔女が言っていた。ミーナの帽子には、リボンが沢山付いている。
これがその中の一つなのだろうか。だとしたら、ミーナは無事なのだろうか。
帽子についているリボンが、それのみ、この木の枝に引っかかっているという事は、ミーナはここを焦って通り過ぎたということか。それとも、うっかりリボンを木の枝に引っ掛けてしまっただけなのか……。
「近くに居るのかな」
ここにリボンが引っ掛かっているという事は、ミーナがここを通ったという事だ。ここにきて初めてミーナがここに居たという形跡が見つかった。アークスが見逃していなければだが、ミーナの居た形跡は、この川でしか見つかっていない。ミーナはこの近くに居るのかもしれない。
「……」
アークスは、大声でミーナを呼ぶか迷った。ここでミーナを呼べば、ミーナが見つかるかもしれないが、もしトロールが近くに居た場合、叫び声で気を引いてしまうかもしれない。
周りを見渡す。前方の木々の間に見え隠れしているのは川だ。あとほんの少しで河原に着くという地点に居る。
この川は、さっきの川よりも幅が狭く、石が転がっている河原もさっきの川よりも狭くなっている。なので、森を抜けてから川までは、かなり近い。
「魔法の練習なら、さっきの所の方がいいな。火の手が上がりにくい」
アークスは呟きつつ、辺りを観察する。河原の幅が狭いということは、森の木が多く、障害物が沢山あるということだ。
この状況は、アークスにとっては有利な状況だ。ミーナは探しにくいが、トロールの視界は狭くなるし、身を隠す場所も多い。
あんなに派手に暴れているトロールならば、視界が悪くとも音だけで分かる。大きな音を立てながら移動しているのだから、近付いただけで分かるだろう。そこまで考えた時、アークスは気付いた。
「あ……」
ミーナがここに居る可能性は、更に高まる。ここはトロールから身を隠すためには絶好の場所だ。ミーナはやっぱり、あのトロールに狙われていて……どこをどう通ってきたかは分からないが、ここへと身を隠すことになった。アークスは、そんな推測を思いついた。
「よし……」
だとすれば、近くにミーナが居る可能性は、かなり高い。そして、あんな大袈裟な音を立てて移動しているトロールが、こんな静かな所の近くに居るわけがない。だったら、ミーナを呼んでみるべきだ。
「ミーナーっ!」
アークスは叫んだ。アークスの甲高い声が辺りに響き渡る。
「ミーナーっ! 聞こえたら返事してくれー!」
これだけ叫んでも、特に辺りに変化は訪れない。どうやらトロールは近くには居なさそうだ。
「ミーナーっ!」
引き続き、トロールの音に注意しながら、ミーナを探すことにする。ミーナを探すのには、むしろ今が一番のチャンスだ。
「ミーナ……むぐっ!?」
突然、何者かがアークスの口を手で押さえた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
異世界に転生したら、いきなり面倒ごとに巻き込まれた! 〜仲間と一緒に難題を解決します!〜
藤なごみ
ファンタジー
簡易説明
異世界転生した主人公が、仲間と共に難題に巻き込まれていき、頑張って解決していきます
詳細説明
ブラック企業に勤めているサトーは、仕事帰りにお酒を飲んで帰宅中に道端の段ボールに入っていた白い子犬と三毛の子猫を撫でていたところ、近くで事故を起こした車に突っ込まれてしまった
白い子犬と三毛の子猫は神の使いで、サトーは天界に行きそこから異世界に転生する事になった。
魂の輪廻転生から外れてしまった為の措置となる。
そして異世界に転生したその日の内に、サトーは悪徳貴族と闇組織の争いに巻き込まれる事に
果たしてサトーは、のんびりとした異世界ライフをする事が出来るのか
王道ファンタジーを目指して書いていきます
本作品は、作者が以前に投稿しました「【完結済】異世界転生したので、のんびり冒険したい!」のリメイク作品となります
登場人物やストーリーに変更が発生しております
20230205、「異世界に転生したので、ゆっくりのんびりしたい」から「異世界に転生したら、いきなり面倒ごとに巻き込まれた!」に題名を変更しました
小説家になろう様にも投稿しています
とあるおっさんのVRMMO活動記
椎名ほわほわ
ファンタジー
VRMMORPGが普及した世界。
念のため申し上げますが戦闘も生産もあります。
戦闘は生々しい表現も含みます。
のんびりする時もあるし、えぐい戦闘もあります。
また一話一話が3000文字ぐらいの日記帳ぐらいの分量であり
一人の冒険者の一日の活動記録を覗く、ぐらいの感覚が
お好みではない場合は読まれないほうがよろしいと思われます。
また、このお話の舞台となっているVRMMOはクリアする事や
無双する事が目的ではなく、冒険し生きていくもう1つの人生が
テーマとなっているVRMMOですので、極端に戦闘続きという
事もございません。
また、転生物やデスゲームなどに変化することもございませんので、そのようなお話がお好みの方は読まれないほうが良いと思われます。
家ごと異世界ライフ
ねむたん
ファンタジー
突然、自宅ごと異世界の森へと転移してしまった高校生・紬。電気や水道が使える不思議な家を拠点に、自給自足の生活を始める彼女は、個性豊かな住人たちや妖精たちと出会い、少しずつ村を発展させていく。温泉の発見や宿屋の建築、そして寡黙なドワーフとのほのかな絆――未知の世界で織りなす、笑いと癒しのスローライフファンタジー!
転生ヒロインは不倫が嫌いなので地道な道を選らぶ
karon
ファンタジー
デビュタントドレスを見た瞬間アメリアはかつて好きだった乙女ゲーム「薔薇の言の葉」の世界に転生したことを悟った。
しかし、攻略対象に張り付いた自分より身分の高い悪役令嬢と戦う危険性を考え、攻略対象完全無視でモブとくっつくことを決心、しかし、アメリアの思惑は思わぬ方向に横滑りし。
チートな転生幼女の無双生活 ~そこまで言うなら無双してあげようじゃないか~
ふゆ
ファンタジー
私は死んだ。
はずだったんだけど、
「君は時空の帯から落ちてしまったんだ」
神様たちのミスでみんなと同じような輪廻転生ができなくなり、特別に記憶を持ったまま転生させてもらえることになった私、シエル。
なんと幼女になっちゃいました。
まだ転生もしないうちに神様と友達になるし、転生直後から神獣が付いたりと、チート万歳!
エーレスと呼ばれるこの世界で、シエルはどう生きるのか?
*不定期更新になります
*誤字脱字、ストーリー案があればぜひコメントしてください!
*ところどころほのぼのしてます( ^ω^ )
*小説家になろう様にも投稿させていただいています
月が導く異世界道中
あずみ 圭
ファンタジー
月読尊とある女神の手によって癖のある異世界に送られた高校生、深澄真。
真は商売をしながら少しずつ世界を見聞していく。
彼の他に召喚された二人の勇者、竜や亜人、そしてヒューマンと魔族の戦争、次々に真は事件に関わっていく。
これはそんな真と、彼を慕う(基本人外の)者達の異世界道中物語。
漫遊編始めました。
外伝的何かとして「月が導く異世界道中extra」も投稿しています。
転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。
克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位
2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位
婚約破棄されたので森の奥でカフェを開いてスローライフ
あげは
ファンタジー
「私は、ユミエラとの婚約を破棄する!」
学院卒業記念パーティーで、婚約者である王太子アルフリードに突然婚約破棄された、ユミエラ・フォン・アマリリス公爵令嬢。
家族にも愛されていなかったユミエラは、王太子に婚約破棄されたことで利用価値がなくなったとされ家を勘当されてしまう。
しかし、ユミエラに特に気にした様子はなく、むしろ喜んでいた。
これまでの生活に嫌気が差していたユミエラは、元孤児で転生者の侍女ミシェルだけを連れ、その日のうちに家を出て人のいない森の奥に向かい、森の中でカフェを開くらしい。
「さあ、ミシェル! 念願のスローライフよ! 張り切っていきましょう!」
王都を出るとなぜか国を守護している神獣が待ち構えていた。
どうやら国を捨てユミエラについてくるらしい。
こうしてユミエラは、転生者と神獣という何とも不思議なお供を連れ、優雅なスローライフを楽しむのであった。
一方、ユミエラを追放し、神獣にも見捨てられた王国は、愚かな王太子のせいで混乱に陥るのだった――。
なろう・カクヨムにも投稿
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる