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11章 ファンファーレが鳴る中
9話 機械ネコ、嫉妬する
しおりを挟む宇宙船内の錬たちは、解放されたみたいだ。
「やれやれ」
錬の呟く声が聞こえた。
『やれやれ』錬の兄、藍(らん)の口癖だった。
沙羅の心に錬の兄の顔が浮かんだ。
「藍(らん)会いたい」
小さく呟くと、抱きしめてるあゆみと目が合った。
沙羅があゆみを撫でると、あゆみは視線を外した。
>藍って誰だよ!
>俺と言う猫が居ながら、この人類は!(爆汗)
そこへ本物の猫の白猫と黒猫が、沙羅の元に駆け寄ってきた。
「あらここに居たの♪」
あゆみが見上げる沙羅は、すっごく嬉しそうに答えた。
>もしかして俺を降ろして、本物を猫を抱っこするとか?
あゆみは激しく嫉妬の炎を燃やしそうになったが、白猫と黒猫はバイカルとバイカルに跨る知佳に興味津々だった。
>そう言えば、生猫はバイカルと親しかった。ナイスバイカルだ(歓喜)
「これをご覧下さい」
機械ネズミは、これでもかってくらい知的そうに言った。
>お前、自分の名前を忘れてしまった事も、解らないくせにさ。
管制室のスクリーンには、この惑星の周辺の宙域が映し出された。
人類が撃破した評議会側の戦闘艦の破片が、映し出された。
「現在、我々は危機的な状況にあります」
>人類が敵を撃破して逃げ込んだせいで、
>機械猫要塞の居場所を、敵に知られてしまった。
その事実を機械ネズミは言わなかったが、沙羅は理解したような表情をした。
「さらに」
機械ネズミが言うと、スクリーンに宇宙機動艦隊が映った。
「我々に、この規模の艦隊と対峙する戦力はありません」
機械ネズミは、そう続けた。
「我々はあなた方人類を欲していました。なのにあなた方を守る事が出来ません」
管制室内は静まり返った。
いつもは騒がしい機械ネコたちも、静まり返っていた。
沙羅はそんな機械ネコたちを見回してから、
「解りました」
知佳は、くるりとこん棒を回した。
そのこん棒に、機械ネコたちの視線が集まった。
「何とかなるんじゃないの、ねっ寅くん」
と知佳はバイカルの頭を撫でた。
期待されたバイカル満更でもない顔をした。
白虎のバイカルがそんな顔をしたもんだから、なんとなく大丈夫な雰囲気が管制室に流れた。
>策はあるのか?
あゆみがそんな視線を送ると、バイカルは微笑んだ。
>あっお前、それ何の策もない顔じゃん
そんなバイカルに跨る知佳が
「ここを出よう!そう言う事でしょう」
機械ネコたちは、気まずそうな目を逸らした。
「怒ってる訳じゃないよ。この基地はあたし達にとっても大切な場所になるはずだから。あたしたちも守りたい!それだけだよ。ねっ沙羅」
「そうね」
「さっ寅くん、宇宙船に向かって走って!」
知佳に言われ、バイカルは人類の宇宙船に向かって疾走した。
あゆみを抱いた沙羅も、その後を追った。
つづく
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