『遠い星の話』

健野屋文乃(たけのやふみの)

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10章 時の記憶

1話 俺たちって可愛いな 当然だ

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自動制御モードして、機械ネズミを乗せた宇宙船は、静かに苔玉星の宇宙港に入港した。


「うん、良い宇宙港だ」


宇宙船から出ると、自慢のドローンのペガサス号に乗り込み宇宙船の外に出た。

小さいながら重力はあるらしい。

そして、ペガサス号の飛び心地は最高だ。

自然と頬が緩み笑顔が零れた。


「あれ?」

宇宙港のロビーには、誰もいなかった。

どこの宇宙港もにぎやかなモノだが、何かが動く気配すらなかった。


「なんだよ!折角来たのに!おい猫どもめ!

お前らの親友が遠くから来てやっとと言うのに!」


アルバムは、宇宙港の管制室を探した。

標識らしきものも、いっさいなかった。


大体こういう作りの宇宙港の管制室と言うのは、ある場所は大体決まっている。


「ホンマに!これだから猫は!常識ってもんが!」


アルバムはペガサス号で、それらしき管制室へ向かった。





【苔玉星宇宙港管制室】


それは苔玉星の周辺宙域に、少しずつ接近していた。


「惑星評議会案件だったら面倒だな」

あゆみは、呟いた。


管制室のモニターに、不思議な物体が映し出された。

小さな準惑星サイズの何かだ。


『太陽系のデータには記載はない。だからと言って評議会案件の可能性は否定できないが』

バイカルはそう言うと、計器がすぐに測定を開始した。


『直径約1000キロ、惑星としては小さい方か』

(ちなみに月の直径は、3474キロ)


「天然の惑星ではなく、人工口物の様に見える」

『惑星型の巨大な宇宙ステーションの類か?』


惑星の外側には大きな時計の針が見えた。

時針分針だけで、秒針は見当たらない。

この大きさだと針の長さは、500キロ近くに及ぶはずだ。

巨大過ぎる時計だ。


『無駄な事を』

「どこかの誰かが、宇宙空間からでも見える時計を作りたかったのか」

『宇宙船なら時計ぐらいあるだろうよ』

「浪漫だろ」

『費用対効果の概念がないのか』

「宇宙は広いからな、金銭感覚も様々だろう」



そんな話をしていると、管制室の扉が開き、ペガサス号に乗った機械ネズミが入って来た。


「おおおおお!猫ども来てやったぞ!にゃーにゃー喜べ!」


『ネズミが来たぞ』

「らしいな」

『にゃーにゃー喜ぶべきか?』

「喜ぶべきだな」

『にゃーにゃー』

「にゃーにゃー」

『これで良いか?』

「合格だ」


「おい!猫ども!もっと感情込めろよ!棒読みじゃね―か!」

「猫に演技力を求めんなよ」

「演技って!本音で語りあおうぜ!って言うかお前ら、宇宙港の管制室でコタツに入ってんじゃねーぞ!」

『猫と言ったらコタツだろ』

「雰囲気だ台無しだぞ!」

『コタツは良い、猫の楽園だ』




「これだからネズミは、構って欲しいのか?」

「折角遠くから来たんだから、そりゃあ構って欲しいさ」

「ネズミが猫に愛情を求めんなよ!本来なら天敵だぞ」

「天敵な関係を越えてこその愛情だ。深いだろう」

「やれやれ、じゃあ早速、構ってやるよ。この不思議な惑星は何だと思う?」


機械ネズミのペガサス号は、コタツの上に着陸した。

コタツに潜ってるあゆみとバイカルには、その姿は見えないが、絶対カッコつけながら、着陸したに違いない。


コタツの中にもそんな雰囲気が伝わってきた。

そして、機械ネズミは、知性的な目をキラリと輝かせたはずだ。

その知性はまあ信頼が出来る。


そしてコタツの上で、機械ネズミのアルバムは、説明を始めた。


「これは時計の星だな、もちろん自然に出来た星ではない。

どこかの知的生命体が、何万年以上も前に作った準惑星サイズの人工の星だ。

時計の星の表面には巨大な時計が設置されており、それゆえに時計の星と呼ばれている。星の内部は、今も多くの歯車が回っており、時計としての機能を維持している。

見た目はアンティークに見えるが、これだけの機構を何万年も持たせる技術は、相当な高度な文明でなくては不可能だ」


『しかし、俺たちって可愛いな』

「当然だ」


「猫ども、ちゃんと聞けよ!」



つづく
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