134 / 243
7章 それぞれの思惑
13話 記憶保持者の消去依頼?
しおりを挟む
『首都・記憶図書館最深部』
青い視野レンズの参謀兵は、ソフィーから譲り受けた感情ファイルを自身の思考回路にインストールした。
一般的感情がないと、一般的なアンドロイドと接する際に不都合があるからだ。
心配なのは感情故に、戦闘力が低下する可能性だ。
☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡
インストールを終了したが、今のところ変化はない。
参謀兵は、思考回路内の情報を見渡した。
>問題ない
そして、鏡に映る自分をチラッと見た。
鏡の中の自分は、清涼感のある制服を着ていた。
記憶図書館司書は、一般の図書館と違い、きちっとした制服を着ていた。
参謀兵は戦闘兵器とは思えないその姿に、気恥ずかしさを感じた。
「感情故なのか」
そう思った直後、思考回路表層に突然現れたソフィーの感触に慌てた。
ソフィーの感触が思考回路中に充満していった。
上品で優しい感触。
参謀兵が人間ならば、A10神経をドーパミンが駆け巡り「快感」もしくは「幸せ」と表現をしただろうが、彼の自意識はそれを認識出来るほど、人間的では無かった。
青い視野レンズの参謀兵の、思考回路に鮮明に映ったソフィーは高めのトーンで、
「元気?」
と明るく聞いてきた。
絶対服従な命令しか受け取ってこなかったアローン兵の参謀への挨拶としては、あまりにも場違いな言葉に、バグを起こしそうになった。
参謀兵が、かろうじて
「はい」
と答えた。
「仕事は進んでる?」
「はい、現在、人類当時の消去された情報の登録ナンバーを洗い出しました。
人類時代の記憶の消去された情報は、全体の31%」
「約31%も!」
「その消去理由の内訳は、約15%が記憶保持者の消去依頼によるものです」
「記憶保持者の消去依頼?」
「精神的トラウマを起こす可能性のある記憶に関しては、記憶管理局に申請を出し、申請が通れば消去が可能な様です」
ソフィーは、その話をどこかで聞いた事を思い出した。
たいていのアンドロイドは、申請の面倒さと人類時代の記憶の貴重さを考えて、見向きもしなかった。
「私だって、消したい記憶が無い訳じゃないけど、嫌な事を忘れて楽しい思い出だけで、生きるなんて。
でも、記憶消去理由の約15%もあるとはね」
ソフィーと参謀兵の間に、数十秒の沈黙が流れた。
まだ間の感覚が理解できない参謀兵が、話す気配が無いのでソフィーは
「続けて♪」
と促した。
つづく
【ソフィー】アローン兵と唯一リンクするアンドロイド 人類だった頃は女性
【青い視野レンズの参謀兵】ソフィーに忠誠を尽くす参謀兵(優先順位1)
青い視野レンズの参謀兵は、ソフィーから譲り受けた感情ファイルを自身の思考回路にインストールした。
一般的感情がないと、一般的なアンドロイドと接する際に不都合があるからだ。
心配なのは感情故に、戦闘力が低下する可能性だ。
☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡 ☆彡
インストールを終了したが、今のところ変化はない。
参謀兵は、思考回路内の情報を見渡した。
>問題ない
そして、鏡に映る自分をチラッと見た。
鏡の中の自分は、清涼感のある制服を着ていた。
記憶図書館司書は、一般の図書館と違い、きちっとした制服を着ていた。
参謀兵は戦闘兵器とは思えないその姿に、気恥ずかしさを感じた。
「感情故なのか」
そう思った直後、思考回路表層に突然現れたソフィーの感触に慌てた。
ソフィーの感触が思考回路中に充満していった。
上品で優しい感触。
参謀兵が人間ならば、A10神経をドーパミンが駆け巡り「快感」もしくは「幸せ」と表現をしただろうが、彼の自意識はそれを認識出来るほど、人間的では無かった。
青い視野レンズの参謀兵の、思考回路に鮮明に映ったソフィーは高めのトーンで、
「元気?」
と明るく聞いてきた。
絶対服従な命令しか受け取ってこなかったアローン兵の参謀への挨拶としては、あまりにも場違いな言葉に、バグを起こしそうになった。
参謀兵が、かろうじて
「はい」
と答えた。
「仕事は進んでる?」
「はい、現在、人類当時の消去された情報の登録ナンバーを洗い出しました。
人類時代の記憶の消去された情報は、全体の31%」
「約31%も!」
「その消去理由の内訳は、約15%が記憶保持者の消去依頼によるものです」
「記憶保持者の消去依頼?」
「精神的トラウマを起こす可能性のある記憶に関しては、記憶管理局に申請を出し、申請が通れば消去が可能な様です」
ソフィーは、その話をどこかで聞いた事を思い出した。
たいていのアンドロイドは、申請の面倒さと人類時代の記憶の貴重さを考えて、見向きもしなかった。
「私だって、消したい記憶が無い訳じゃないけど、嫌な事を忘れて楽しい思い出だけで、生きるなんて。
でも、記憶消去理由の約15%もあるとはね」
ソフィーと参謀兵の間に、数十秒の沈黙が流れた。
まだ間の感覚が理解できない参謀兵が、話す気配が無いのでソフィーは
「続けて♪」
と促した。
つづく
【ソフィー】アローン兵と唯一リンクするアンドロイド 人類だった頃は女性
【青い視野レンズの参謀兵】ソフィーに忠誠を尽くす参謀兵(優先順位1)
0
お気に入りに追加
11
あなたにおすすめの小説

びるどあっぷ ふり〜と!
高鉢 健太
SF
オンライン海戦ゲームをやっていて自称神さまを名乗る老人に過去へと飛ばされてしまった。
どうやらふと頭に浮かんだとおりに戦前海軍の艦艇設計に関わることになってしまったらしい。
ライバルはあの譲らない有名人。そんな場所で満足いく艦艇ツリーを構築して現世へと戻ることが今の使命となった訳だが、歴史を弄ると予期せぬアクシデントも起こるもので、史実に存在しなかった事態が起こって歴史自体も大幅改変不可避の情勢。これ、本当に帰れるんだよね?
※すでになろうで完結済みの小説です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武
潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【本格ハードSF】人類は孤独ではなかった――タイタン探査が明らかにした新たな知性との邂逅
シャーロット
SF
土星の謎めいた衛星タイタン。その氷と液体メタンに覆われた湖の底で、独自の知性体「エリディアン」が進化を遂げていた。透き通った体を持つ彼らは、精緻な振動を通じてコミュニケーションを取り、環境を形作ることで「共鳴」という文化を育んできた。しかし、その平穏な世界に、人類の探査機が到着したことで大きな転機が訪れる。
探査機が発するリズミカルな振動はエリディアンたちの関心を引き、慎重なやり取りが始まる。これが、異なる文明同士の架け橋となる最初の一歩だった。「エンデュランスII号」の探査チームはエリディアンの振動信号を解読し、応答を送り返すことで対話を試みる。エリディアンたちは興味を抱きつつも警戒を続けながら、人類との画期的な知識交換を進める。
その後、人類は振動を光のパターンに変換できる「光の道具」をエリディアンに提供する。この装置は、彼らのコミュニケーション方法を再定義し、文化の可能性を飛躍的に拡大させるものだった。エリディアンたちはこの道具を受け入れ、新たな形でネットワークを調和させながら、光と振動の新しい次元を発見していく。
エリディアンがこうした革新を適応し、統合していく中で、人類はその変化を見守り、知識の共有がもたらす可能性の大きさに驚嘆する。同時に、彼らが自然現象を調和させる能力、たとえばタイタン地震を振動によって抑える力は、人類の理解を超えた生物学的・文化的な深みを示している。
この「ファーストコンタクト」の物語は、共存や進化、そして異なる知性体がもたらす無限の可能性を探るものだ。光と振動の共鳴が、2つの文明が未知へ挑む新たな時代の幕開けを象徴し、互いの好奇心と尊敬、希望に満ちた未来を切り開いていく。
--
プロモーション用の動画を作成しました。
オリジナルの画像をオリジナルの音楽で紹介しています。
https://www.youtube.com/watch?v=G_FW_nUXZiQ
普通の女子高生だと思っていたら、魔王の孫娘でした
桜井吏南
ファンタジー
え、冴えないお父さんが異世界の英雄だったの?
私、村瀬 星歌。娘思いで優しいお父さんと二人暮らし。
お父さんのことがが大好きだけどファザコンだと思われたくないから、ほどよい距離を保っている元気いっぱいのどこにでもいるごく普通の高校一年生。
仲良しの双子の幼馴染みに育ての親でもある担任教師。平凡でも楽しい毎日が当たり前のように続くとばかり思っていたのに、ある日蛙男に襲われてしまい危機一髪の所で頼りないお父さんに助けられる。
そして明かされたお父さんの秘密。
え、お父さんが異世界を救った英雄で、今は亡きお母さんが魔王の娘なの?
だから魔王の孫娘である私を魔王復活の器にするため、異世界から魔族が私の命を狙いにやって来た。
私のヒーローは傷だらけのお父さんともう一人の英雄でチートの担任。
心の支えになってくれたのは幼馴染みの双子だった。
そして私の秘められし力とは?
始まりの章は、現代ファンタジー
聖女となって冤罪をはらしますは、異世界ファンタジー
完結まで毎日更新中。
表紙はきりりん様にスキマで取引させてもらいました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる