『遠い星の話』

健野屋文乃(たけのやふみの)

文字の大きさ
上 下
89 / 243
5章 最近、強くなった太陽風のせいかも知れない。

9話 おもちゃの世界を作るために・・・

しおりを挟む


『サマルカンド郊外・小高い丘』


見下ろす峡谷は、神話の世界の様に美しかった。


ソフィーとデューカは、高性能双眼鏡でその美しい景色を眺めた。



「デューカらしい発想ね。


機械のおもちゃに過ぎないアンドロイドだからこそ、人類の宇宙船がこの星に降り立った時、あれほど熱狂したのかもしれない。


私達は人類だった頃の記憶を持っているからなおさらね。


でも、私はこのおもちゃぽさ、好きよ。


私たちがこうやって生きてるのって、お菓子のおまけのおもちゃみたいなものなのよ。」



「お菓子のおまけか・・あれ俺好きだった。俺はおまけ目当てで買ってたわ」



「だとしたら、おまけの人生の方が、本当の人生と考えられなくもない。


5000年前の人類は、このおもちゃの世界を作るために、高度に科学文明を発達させた。


そう思うと楽しいじゃない?」



「ソフィー、お前、相当ポジティブだわ」



「そうお」



「もし、また人類として生きられたら、戻りたい?」


「さあ、人類って色々面倒だしね。」



太陽が地平線に沈みかけた頃、空軍機が上空を旋回し始め、峡谷の底に放置された1000機の特殊機械兵を、眩いサーチライトで照らし始めた。



「来たみたい。」



ソフィーはデューカに言った。



渓谷は、見ようによっては難攻不落の砦の様に思えた。




『サマルカンド郊外・峡谷』



装甲騎兵を率いて到着したハミルは、車両から降りると、深い霧が出始めた峡谷地帯を見つめた。


高層ビルの様な巨石達が、ハミルの前に立ちふさがるように聳えていた。


「これ以上の、車で進むのは無理だな。」



ハミルは、装甲騎兵達に徒歩での進行を命じた。



『サマルカンド郊外・小高い丘』


うつ伏せで丘の下を監視しているフィーの機体は柔らかな曲線で構成されており、女っぽさを醸し出していた。その曲線は人だったころのソフィーを完全に再現していた。


デューカは、その機体をチラッと見た。

おもちゃにしてはかなり高価な機体だ。



人だったころと同じ声質のソフィーが言った。



「そうね・・・装甲騎兵の数、ざっと2000から3000。」



「楽勝だな。」



「ここでの作戦は、始まりに過ぎない。」




参謀兵から暗号通信がソフィーの思考回路に届いた。



「・・・アローン兵5000機、配置に着きました・・・」


「・・・了解・・・。」

ソフィーは意思を送った。


「私たちも、行くよ。」



ソフィーとデューカとアローン兵20機は、地面を這うように持ち場へ向かった。


つづく


いつも読んで頂き、ありがとうございます。
毎週、土曜日更新です O(≧∇≦)O イエイ!!
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

びるどあっぷ ふり〜と!

高鉢 健太
SF
オンライン海戦ゲームをやっていて自称神さまを名乗る老人に過去へと飛ばされてしまった。 どうやらふと頭に浮かんだとおりに戦前海軍の艦艇設計に関わることになってしまったらしい。 ライバルはあの譲らない有名人。そんな場所で満足いく艦艇ツリーを構築して現世へと戻ることが今の使命となった訳だが、歴史を弄ると予期せぬアクシデントも起こるもので、史実に存在しなかった事態が起こって歴史自体も大幅改変不可避の情勢。これ、本当に帰れるんだよね? ※すでになろうで完結済みの小説です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

四代目 豊臣秀勝

克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。 読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。 史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。 秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。 小牧長久手で秀吉は勝てるのか? 朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか? 朝鮮征伐は行われるのか? 秀頼は生まれるのか。 秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~

アンジェロ岩井
SF
「えっ、クビですか?」 中企業アナハイニム社の事務課に勤める大津修也(おおつしゅうや)は会社の都合によってクビを切られてしまう。 ろくなスキルも身に付けていない修也にとって再転職は絶望的だと思われたが、大企業『メトロポリス』からの使者が現れた。 『メトロポリス』からの使者によれば自身の商品を宇宙の植民星に運ぶ際に宇宙生物に襲われるという事態が幾度も発生しており、そのための護衛役として会社の顧問役である人工頭脳『マリア』が護衛役を務める適任者として選び出したのだという。 宇宙生物との戦いに用いるロトワングというパワードスーツには適性があり、その適性が見出されたのが大津修也だ。 大津にとっては他に就職の選択肢がなかったので『メトロポリス』からの選択肢を受けざるを得なかった。 『メトロポリス』の宇宙船に乗り込み、宇宙生物との戦いに明け暮れる中で、彼は護衛アンドロイドであるシュウジとサヤカと共に過ごし、絆を育んでいくうちに地球上にてアンドロイドが使用人としての扱いしか受けていないことを思い出す。 修也は戦いの中でアンドロイドと人間が対等な関係を築き、共存を行うことができればいいと考えたが、『メトロポリス』では修也とは対照的に人類との共存ではなく支配という名目で動き出そうとしていた。

処理中です...