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3章 12人の思惟

13話 石の箱

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会璃(あいり)は、すっぽん思惟の股のコテカを、
じっと見ていた。

清楚で上品な顔立ちの会璃が、
凝視するものとしては、かなりエロチックなのだが、
でも、それだけ、地下の妖精たちにとって、
重要な物なのかも知れない。

・・・と言う事は、思惟たちにとっても、
重要な取引材料だ。

「あの~これ着けたままで、大丈夫ですか?
曾じいちゃんの大切な物なので、着けていたいんですが。」

すっぽん思惟は聞いた。

会璃の目が、鋭利な刃物のように光った。
姫様の有能な側近の目だ。
地方の田舎町では、絶対に見ることがない目だ。

「外しちゃダメ!」ニッキーは思ったが、
口に出すことは出来なかった。

「着けたままで大丈夫ですよ」
と会璃さんは優しい口調で答えた。

無理に、奪う気はないみたい。

「は~い」

すっぽん思惟が、
コテカを着けたまま棺桶のような石の箱に入ると、
まるで王墓に眠る古代の王の様な威厳が感じられた。

騰子さんが、重そうな石の蓋をゆっくりと閉め始めると、
ニッキーは、埋葬される偉大な王を、
送る忠臣の様な気分になった。

・・・・王よ。偉大なる王よ。
貴方の英雄的行為によって、
民に大いなる安らぎが訪れました。
偉大なる王よ!安らかにお眠りください・・・・

と呟きたくなったくらいだ。

ニッキーは、じっとすっぽん思惟の顔を見つめた。

もしかしたら、最後かも・・・なんて思ったから・・・

閉まる瞬間、すっぽん思惟は、
見たことがないくらい真剣な目をしていた。

石の蓋はかなり重そうで、
中からは重くて、動かせそうもない。

その石を動かせる騰子さんの腕力は、半端ない。
一見、影のある繊細な女人に見えるが、やはり式神なのだろう。

石の蓋が閉まると、石室内は静まり返った。

何が起こるんだろう?と、
3人の思惟たちは、石の棺桶を見つめた。

「・・・」

数分くらい、静寂は続いた・・・・

「失敗ですね」

会璃は、静かに言った。

・・・・偉大なる王よ、失敗かよ。がっかりだよ・・・・

忠臣ニッキーは、心の中で呟いた。

騰子さんは、重い蓋をあけた。

「何?何?何か起こった?」

満面の笑顔で、すっぽん思惟は飛び上がった。

「ぽんちゃん、失敗だったみたい・・・」

汎都 or 舞夢は言った。

「えーマジですか~何がいけなかったんですか?」

「我々の技術不足と、
あと・・・思惟様の素質でしょうか。
申し訳ありません。」

会璃は、答えると、
「さて・・・次は・・・」そんな目線で、
思惟たちを見つめた。特にニッキーを・・

・・・だよね。
すっぽんと汎都舞夢は、似たようなキャラだし、
だとすると、そうくるよね。

・・って、言うか、これ、明らかに棺桶だろう!

高級感は、王様級ではあるけど!
でも、生きているのに、まだ生きてるのに、
棺桶になんか入りたくない。
それもこんな地底の世界で!

ニッキーの心の中の呟きが、
聞こえる訳もない会璃は、ニッキーに可愛く微笑んだ。
いや、例え聞こえても、
その可愛い微笑みの種類は、変わらなかったに違いない。

そんな微笑みに、ニッキーはビビった。


つづく
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