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3章 12人の思惟

10話 翡翠の仮面

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地下牢の天井から水滴が、

青い翡翠の仮面を着けた使鬼(しき)の身体に、

滴り落ちていた。


水滴は、正確に1秒に1滴落ち、

それによって、この使鬼は、

牢獄の暗闇中で、時を知った。


地下牢に誰か降りてくる音がした。

その音に、強く拘束された使鬼の心の底から、

怒りが湧き出してきた。


この不条理な扱い!

動きを強く制限されたこの楔!

そして不味い飯!



「愚かな番人ども!すぐに俺をここから出せ!」


暗い地下牢内で、使鬼が喚き散らした。


使鬼の足は重い鎖でつながれていた。


重い鎖を引きちぎろうと、身体を必死で動かすたびに、

地下牢はわずかに揺れた。



牢番の妖精が姿を現すと、使鬼はさらにヒートアップした。


「おいこら!なんだこの不味い飯は!

俺がここから出た時には、お前からぶっ殺してやるからな!」

この恨み絶対忘れないからな!えー何とか言えよ!

俺とは話したくもないって事か!チビのくせに!」


妖精の牢番は、使鬼の言葉に大して心を動かされる事も無く、

仕事をこなした。


身長3センチの妖精は、身長2メートル近くはある使鬼を見上げた。

そして、手に持った小さな鍵を回した。


妖精にしたら見上げるように高い牢獄の鉄格子は、

「ギー」と音を立てながら開いた。



「あー、手に繋がってる鎖を繋いでる壁、壊れてるじゃないですか」


妖精の牢番は、苦情を言った。


「あー、ごめんごめん。強く引っ張り過ぎた。

だからさ、もっと強くしてほしいって頼んでたのに・・・

俺的にはさ、命を懸けて引っ張っても壊れない程、

頑丈にしてほしいんだけどさ」


「無理ですって、そんな予算ありませんよ。

だいたい、この牢だって特別予算ですよ。」


「う~ん、なんて言うか、

俺は強く強く拘束されたいんだよね。

俺の力ではどうしようもない力で、

不条理に、その方がより力が沸くんだよね」


「知りませんよ」


「まあいいよ。今度姫さまに直接頼んでみる」


「姫さまだって、牢獄プレイなんかに、

これ以上予算はつけませんよ」


「プレイじゃねーし・・・」


使鬼は、小さな妖精を肩に乗せると、階段を静かに昇って行った。



つづく
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