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3章 12人の思惟

9話 乗れるかどうか試してみます?

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前の市長は、イケメンとは言えないまでも、

感じの良い顔立ちをしていた。


市長の胸の前には、高架橋があり、

妖精のパイロットが、

コックピットに今すぐにでも乗れる状態だった。

まるで、兄・狼図の部屋に会った

モビルスーツの格納庫ジオラマそのものだ。



騰子は、その市長の式神の横に立って、

動きを止めていた。

まるで自分も魂の入っていない式神の様に・・・



何がしたいんだろう?

笑わせようとしてるの?

ちょっと怖いんだけど・・・


一見、人と見分けが着かないけど、

人とは違う感覚を、持ってるのかも知れない。


思惟たちには、

状況を判断出来ずスルーすることにした。


 

「前の市長が式神だって事は、

もしかして今の市長も式神なんですか?」


「今も・・・と言うか、市長も昔の領主も、

ずっと私たちが送り込んだ式神です」


会璃(あいり)の、答えにニッキ―は驚いた。

正確には・・・ニッキ―だけが驚いた。その他の思惟は、


「ねえ、ねえ、これ私たちも乗れるの?

オリジナルの時、姫さまの式神に乗ったみたいに」


すっぽんと汎都(ぱんと)&舞夢(まいむ)は、

遊園地に遊びに来た子供のように

目を輝かせた。


「それは・・・・」

会璃は、言葉を選んだ。そして、


「あなたたちの魂の状態次第です」


魂の状態・・・・


それは、思惟オリジナルの時とは、

魂の状態が違うって事?


それはそうだよね。12人に増えちゃったんだから・・・


ニッキ―は、自分自身の状態に恐怖した。

自分が、未知の者へ変わってしまったかも知れない恐怖。

いや違う、今も変わって行ってる気がする。

多分・・うん。



「我々は、今、あなたたちがどのような状態なのか、

判断出来ずにいます。」


会璃は、ニッキ―に向かって話していたが、

ニッキ―のかなり青ざめた表情を見て、

すっぽんと汎都・舞夢に話を振った。


「乗れるかどうか試してみます?」


「イエーイ、もちろんですぅ」

すっぽんと汎都・舞夢は、声をそろえて歓喜した。



なぜ?なぜ?なぜ?

なぜ?こいつらは、こんなに能天気に喜べるの?


ニッキ―は困惑した。


市長の横で動きを止めていた騰子が、

ニッキ―に向かって微笑んだ。


ちょっと薄気味悪かったが、

なぜかその微笑みは、ニッキ―の心の奥に強く突き刺さった。

それは痛みではなく、安らぎだったような・・・




つづく
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