上 下
27 / 85
2章 分身の術?

10話 初めての朝

しおりを挟む
12人の思惟になって初めての朝が来た。


ニッキ―にとって、いつもと違うのは、ベットではなく、女将の間の居間に敷かれた布団から目覚めた事だ。


そして、目を開けると・・・


ニッキ―が寝ている布団を囲んで、何人かの思惟が話し合っていた。


目覚めた直後に、数人の自分が自分の布団を囲んでいる状態の意味を、理解するのに、ニッキ―は数十秒要した。


そして、自分を囲むその状況を素早くデジカメで記録した。


「おはよう」×2


同時に、2人の思惟から声を掛けられ、両頬にキスをされた。

多分、この2人は昨晩、裸の思惟を両脇から抱きしめていた2人だ。


少なくともこの2人も、昨日までは、1人の思惟として生きていた存在。

同じ過去の記憶を共有している存在。


・・・とりあえず、両頬をキスされる自分の自撮りを完了。

確認すると、照れまくるニッキ―が写っていた。


しかし、今目覚めていて良かった。

もしニッキ―の目覚めが、数分遅ければ、ニッキ―のチーム名が、「裸族」だの「コテカ」などに決められるところだった。

 

【チーム・コテカ】なんて、女子だけのチームの名前としてありえないだろう!

大体、コテカが必要な人員など、1人もいない!


とりあえず、ニッキ―は急いで目を覚まして、 「曾おじちゃんに因んだ名前が良い」と主張する裸族の思惟の意見を、覆して、【南の島】で落ち着かせた。

その流れで、思惟αのチーム名が【北の島】食料調達班が、【西の島】と決まった。



「南の島って、何よ!曾おじちゃんは、ニューギニア戦線の生き残りだよ!コテカはその証明!」

と裸族の思惟は、反論したが、その他の思惟の同情の視線を受け、ニッキ―は【南の島】を、なんとか押し切れた。



 大勢の思惟と食事を済ますと、

「うん、それじゃあ、あなたは、今から学校に行って、いつも通りの生活をしてね」


女将のあみちゃんから、そう言われた。


「私が?」


女将のあみちゃんは、ニッキ―の耳元に近づいて

「南の島ではあなたが一番普通でしょう。」

と囁いた。女将のあみちゃんは、大人の女の匂いがした。



確かに、思惟・裸族バージョンを学校に行かせる訳には行かない。

そんな事をすれば今以上に混乱する。

この思惟・キス魔バージョンもあり得ないだろう。


「それじゃあ~お着替えしましょうね」

そう言ったのは、そのキス魔バージョンの2人だ。

キス魔バージョンは、ニッキ―の浴衣を脱がせに掛かった。


「1人で着替えれるから」


「何恥ずかしがってるの?同じ思惟じゃない」


「同じ思惟・・・」


ニッキ―は数秒考えてから抵抗を止め、キス魔の2人に身体を委ねた。


この状態をどう定義するのか?

自分と他者との境界線をどこに置くか?

1人の思惟としての境界線とするのか、

12人の思惟としての境界線とするのか?の違い?


自分の浴衣を脱がそうとする自分。

だとすると、別に特別な事ではない。

 

しかし、自分の・・・思惟の中に、裸族やキス魔の要素があった事は、ショックだ。                                              


どちらかと言うと、控えめで、人見知りな人生を送ってきたはずなのに・・・


ニッキ―は、2人のキス魔に送られて女将の間を出た。



女将(仮)の継母の朝は、誰よりも早い。 

旅館のフロントホールでは、継母が、色々な備品を磨きまわっていた。

お蔭で、旅館はいつも輝いている。



ニッキ―はいつも通り「行ってきます」と挨拶した。


「思惟ちゃん、いってらっしゃい」

と言う継母は、優しく誰もが好感のもてる表情だった。

しかし、それが営業用なのか、私的なものなのか、未だに区別は出来なかった。



それに比べて、あの2人のキス魔の思惟の表情は、完全に私的な表情をしていた。


「悪くは、ない・・・」


ニッキ―は呟いた。




つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

魔法少女のなんでも屋

モブ乙
ファンタジー
魔法が使えるJC の不思議な部活のお話です

💚催眠ハーレムとの日常 - マインドコントロールされた女性たちとの日常生活

XD
恋愛
誰からも拒絶される内気で不細工な少年エドクは、人の心を操り、催眠術と精神支配下に置く不思議な能力を手に入れる。彼はこの力を使って、夢の中でずっと欲しかったもの、彼がずっと愛してきた美しい女性たちのHAREMを作り上げる。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...