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9 なつめぐの章

我に、プチシュークリームを!

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大地が揺れた。
震度7くらいだろうか?

震度7に至ると、幾つかの結界が崩壊する。


闇が開き、我は光に包まれた。
場所は、少女の部屋。
我は、少女の事をほとんど何も知らない。
なぜこの少女の無意識内に転移したのか?

調べるべきことが山ほどある。

「お姉ちゃん、怖い顔して、どうしたの?」

ベットで、少女の妹らしき娘がゲームで遊んでいる。

中学生ぐらいだろうか?

怖い顔?
まあ外見は【お姉ちゃん】だが、中見は長い事封印されていた古代神だからな。
古代では慈悲深い神と慕われていた我も、さすがにあんなに長い事封印されると、怖くもなる。

しかし、そんなに表情に出てるのか?
我は、鏡で我の顔を確認した。
平均的な女子高生顔の少女が映っている。

可愛らしい♪


多少怖い顔だとしても、まさか【古代神】だとは気付くまい。
さて問題はこの【お姉ちゃん】キャラ設定だ。
この妹に【お姉ちゃん】は、どういう態度で接していたのか?

そんな事を考えていると、我の意識は少女の無意識に落ちて行った。
      
    
   

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆





ああ~、プチシュークリームが食べたい。
古代にはあんな可愛く、甘いものなどなかったし・・・



そんな事を考えていると、再び、闇が開き、我は光に包まれた。
何らかの理由で、女子高生の意識と我の意識が交替したのだろう。


目の前には、嫌な感じの男が、
「お前、ふざけんじゃねーぞ!」
と、この古代神に向かってほざいた。

正確には、我が依り代としている少女に対してだろう。

長い事古代神をやっていたが、そんな事を言われた事はなかった。
それはもう怒りを通り越して笑えてくる。

しかし、口の中が切れて痛いし、血の味がする。

状況から、この男に殴られたのだろう。
この少女は、呆れるほど、控えめで優しい少女だ。
それゆえに、付け込まれやすい。

男の手には拳銃。
拳銃で脅されて、男の部屋に連れ込まれたらしい。
 
本物か?
殺傷兵器特有の気配がする・・・

少女は、恐怖から気を失ったらしい。
結果、我と交代したのか?

しかし、なかなか危機的な状況ではないか!
我の全身に、戦士の血が駆け巡った。

我は
「なんなんですか!」
と嫌な感じの男を挑発した。

嫌な男は拳銃のグリップで、殴りつけてきた。

たまらん!戦いの感触がたまらん!
さらに戦士の血が我の身体を駆け巡った。

この戦場の昂揚感!

さて、拳銃など、古代神の前ではおもちゃに過ぎない。
たかが人間が、古代神を脅すとは!

我は、瞬時に拳銃を奪った。

その瞬発力に依り代の少女の身体が、少しきしんだ。

人間の少女の身体に、古代神の瞬発力は、負担を与えすぎるのだ。
後で、この少女は激しい筋肉痛と疲労感に襲われるだろう。


すまぬ。乙女よ。


何が起こったか解らない表情の男の髪を掴み、

「目には目を、歯には歯を・・・口の傷には、口の傷を・・・だろ?」

と奴の顔を床に叩きつけた。


人類想いな我は、一応、人類の法典に基づき、嫌な感じの男を罰した。

口と言うか、顔中血まみれなのは、誤差と言う事で・・・・


血まみれの男を拘束すると、我は急いで少女の携帯を取り出した。

いつまた少女の意識と交代するか、解らない。
我は急いで、現状を把握した。


携帯を使いこなせる古代神など、我ぐらいの者だ!


背後で、血まみれの男がうめき声を上げた。
我を見上げる男の目は怯えていた。

「心配するな、殺しはしない。こう見えても我は死刑反対論者だ。
お前は生きたまま地獄へ行き、死ぬことも許されず、古代神を侮辱したことを悔いて暮らせ」

ふっ!っと息吹をかけると、男が座っている場所に穴が開き、男はその穴に落ちて行った。
どちらにせよこんな奴を、我の依り代の、この弱っちぃ少女の近くにいさせる訳には行かない。


さて、やるべきことは終わった。


後は・・・我は、この前交替した時に、ネットで探し当てたケーキ屋に急いだ。
プチシュークリームが格別との噂のケーキ屋だ。

我は街を疾走した。中身は古代神とは言え、容姿はいたって普通の女子高生だ。
なんの問題はない。

我は、若干の興奮とともに、ケーキ屋に入った・・・

目当てのプチシュークリームが目の前に!

ん?!えっ!この感覚は、まさか交替か?


マジで・・・


*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆



何で私、ケーキ屋さんに、いるんだろう?

意識を取り戻した少女は、不思議に思った。
口中の傷の痛みと、全身を襲う筋肉痛とひどい疲労感。

「まただ・・・」

教室から出た後の記憶がない。
でも、とても嫌な存在を、誰かが消してくれたような爽快感が心には、残っていた。



「なんかプチシュークリームが食べたくなった」

少女はプチシュークリームを幾つか買うと、1つだけその場で口に運んだ。

その一口に、少女の無意識の底に沈んでいる古代神は、激しく歓喜した。




おしまい
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