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8 あやかしの章

駆け抜ける黄金の騎馬武者

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敵兵の増援により、東部戦線の膠着状態は終了した。
味方の増援が来るかどうかは、解らない。
そんな最戦前、俺の戦友たちは、1人、また1人、死んでいった。

もう敵兵が目視出来る距離にいる。
「来る、俺を殺しに多くの敵兵が」

督戦隊(とくせんたい)に、追い立てられた敵兵は、
危険を顧みる事を許されないらしく、猛烈な突撃を敢行してくる。

機関銃掃射の爆音の中、隊長が叫んだ。
「来るぞ!白兵戦用意、銃剣を着けろ!」
「銃剣って、マジかよ」
誰かが、泣きそうな声で呟いた。

バシン!
そんな音だったと思う。
敵兵の狙撃手が、うちの隊長を撃ち殺した。

「隊長ー!」
軍曹が叫んだ。

士官学校を出たばかりの、若い将校だった。

指揮官を失った俺たちの小隊は、パニクった。
「どうすんだよ!どうすんだよ!」

代わりに指揮を取るはずの軍曹もパニクっていた。

味方の戦闘車両が、火を吹いて爆発炎上した。

それを合図に俺たちは、

絶叫と共に向かってくる敵兵に向かって、
乱射した。

その最中、何が起きたのか分からなかった。

銃撃と爆音に包まれていた、戦場が静まり返ったのだ。

見ると、騎馬に跨った黄金の甲冑の武者が、
黄金の刀を抜き、現代戦の戦場を駆け抜けていた。

駆け抜けた後、敵兵たちは、戦意を喪失し、

ただぼんやりと立ち尽くしていた。

俺の横で、ダメ軍曹は言った。
「あれは・・・人の縁を斬る黄金の騎馬武者」
「縁を斬る?」
「ああ、この辺りの都市伝説だ」

黄金の甲冑の騎馬武者は、黄金の刀を振り回しながら、
俺たちの自軍の陣地を駆け抜けた。

そして今、俺はボーと立ち尽くしている。
俺は周りの戦友を見渡した。

俺の記憶では、堅い絆で結ばれていたはずの戦友たちのはずだ。

それが今や、よそよそしい赤の他人に見えた。

人との縁、仲間との縁。家族との縁。

社会との縁、組織との縁。国との縁。

そう言った物に対して、繋がりを感じられない。

縁が、リセットされてしまったらしい・・・

静まり返った戦場で、俺、1人の孤立感。

これが、東部の1つの戦線で起きた小さな異変だ。




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