RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十六篇第六章 天下分け目の大戦・伍

過去を紡ぐ御守り

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「絶技…… 蒼天雷駆・鳴神そうてんらいく・なるかみッッ!!!!」



蒼色の稲妻が魅せる奔跡を残しながらマリア
が天を駆ける様にして加速して行く。

そして、ティアに向けて其の一閃を向ける。



「マリア中将……心にも無い事は言うべきではありません……貴女も見たでしょう?ロイさんの軍服に縫われた“御守り”をッ!!」



ティアが必死に叫んだ其の声はマリアの耳に
届くとほんの一瞬の迷いを其の一閃に与えて
時が止まったかの様な錯覚に陥る。

だが、改めて唇を噛んだマリアは言葉を一閃
で掻き消すかの様に強く前を向いた。

しかし、其のほんの一瞬の迷いが仇となった
事は明白だった様に思う。

ティアは三叉槍を旋回させ地面に突き刺すと
天に昇る撫子色の水流の奔流を生み出した。

其れでもマリアの放った一撃は止まらない。

水流を斬り裂く様に突き出した刀の鋒は水流
は捉えたモノのティアには届かなかった。

其の隙に、刀を突き出した儘、動きを止めた
マリアの背後を緩りと距離を取るかの様にし
足を進めて歩いて行く。



「マリア中将…ロイさんがどうして軍を裏切りわたくし達と共に歩んだのか…其の理由を知らずにそんな悲しい事を言わないでください…緩りと聞いて頂く為ですから…御容赦してくださいね…マリア中将…そして…ロイさん」



ティアが静かに天に三叉槍を向け突き上げる
と空に撫子色の天の川が突如として流れる。

其の天の川を流れ、水流を纏う星屑の流星群
が轟々と音を立てて降り注いだ。



「絶技… 流星群・涙乃雫りゅうせいぐん・なみだのしずく……」



美しく煌めきながら降り注いだ流星群は背後
に立つマリアを包み込んで行った。

其れと同時に、瞳を閉じるティア。

そして、建物の屋根から傷を押してマリアに
向けて駆け出して行くロイの姿。

仰向けに倒れ込んだマリアの身体から覚醒の
チカラが溶けて行くのを目で確認したティア
も覚醒を解きマリアに向けて近付いて行く。



「マリア中将…申し訳ありません。後は…ロイさんからしか…伝えてはならない事だと思いますの…」


「…ロイ…から…?」



お腹の前で手を結んだティアが再度、其の目
を閉じると同時にマリアの視界にロイの姿が
飛び込んで来るのだった。



「マリア…ッ…済まねェ……副長にもこんな辛い役目させちまって…俺は…俺ァ……ッ」



倒れ込んだマリアの首に手を回して涙を堪え
ながら何とか口を開くロイ。

マリアにもう戦うチカラは無く、声を荒げる
程の余裕も無かったからか膝を着くロイの腰
にぶら下がる御守りを握ってみた。



「………もう、こんなの持ってないものだとばっかり…」


「バカ言え…此れだけじゃねェ…。マリアに貰ったモンは全部手元にあんだよ…」



ひび割れた眼鏡のガラスの先で肩から震える
ロイにマリアは視線を改めて合わせた。
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