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第十六篇第六章 天下分け目の大戦・伍
匂いを探る星猫
しおりを挟むティアの言葉にマリアは動きを止める。
そして、緩りとティアが差し出した人差し指
の先が自身に向けられた事を知る。
「マリア中将…貴女にはわたくしの波動をマーキングさせて貰いましたの。わたくしは貴女の位置を其れを探って知ることが出来ますわ」
ティアの覚醒が秘める固有特性は“匂探”。
相手に自身の波動をマーキングする事に依り
其の匂いを探って相手の位置を掴む事が可能
になる特性である。
「匂いをマーキング…?そんなのいつ…私の身体にしたのか甚だ疑問ね……」
「いつというのは不必要なんですわ。覚醒と同時に其れを可能にするのがわたくしの固有特性の優れている部分ですから」
「成る程…なら、貴女相手に範囲的に攻撃するのは得策じゃないのかもしれないわね…かといって…」
「真っ正面からだけでわたくしを打倒するのは簡単ではないという事も御理解頂けますように」
勝ち誇る笑みを浮かべたティアの表情に対し
マリアは再び怒りを噛み殺す様に唇を噛むと
青い稲妻を奔らせ、地面を蹴る。
そして、稲光が強くなると共に其のスピード
を加速させて行くとまたしても背後を取って
真横に刀を薙ぎ払う。
しかし、ティアは其の攻撃に対して寸分さえ
狂い無く三叉槍で受けて見せた。
「波動の匂いが色となってわたくしの視界に映っていますよ、マリア中将」
其の言葉を聞き終えたマリアは一度、三叉槍
を刀で弾くと距離を取って見せる。
「(やはり正攻法だけでは…此の女を打ち崩すのはかなり難易度が高いわね……しかし其の匂いとやらを打ち消すのも容易じゃないわ)」
実は、マリアは先程から全身に自身の蒼色の
波動をくまなく流し込んでいた。
ティアが与えた其の匂いの元を断とうと考え
其の行動に至ったのだが此の考えはどうやら
好転する考えでは無かったらしい。
自慢の速度も来る方向が完全に解られている
此の状況では、撹乱の意味を為さない。
しかし、正面から正攻法でと言えどティアの
持つ流水のギフトの特性“連撃”の範囲攻撃は
中々に厄介である事も承知済み。
「(だとしたら…何処迄…私のチカラがあの女を凌駕出来るか…もう其の道しか無いわね)」
ふう、と息を吐いたマリアは全身へと流れて
いた波動の道筋を一点に纏め上げる。
其の行く先は、マリアの刀の刀身であった。
そして、再び地面を蹴り上げる。
「(正面から…?策を弄さずにただ突き進んで来る程…マリア中将は弱者では無い筈ですわね…何か…来る…!)」
正面から迫り来るマリアが振り上げた刀の鋒
がティアへと差し向けられる。
其の攻撃を、ティアは撫子色の水流を纏わせ
強化した三叉槍で受け止め様とした。
だがしかし、ティアの予感は当たっていた。
マリアの振り切った刀の一撃はティアの其の
予測の更に先へと行き、勢い良く背後に向け
ティアを吹き飛ばして見せたのだ。
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