RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十六篇第六章 天下分け目の大戦・伍

天馬ロイvs蒼騎マリア

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視線と視線を交わらせ、膝と膝を突き合わす
事となった帝国軍中将マリア・シリウス。

そして、革命軍幹部ロイ・バーナード。

此の二人は、とある太い縁で繋がっていた。



「あの時は……正直、どうしたらいいか解らなかった……だけど、私は帝国軍の中将。貴方は…反逆の旗を立て帝国軍を脱退し、今や政府を打倒しようとする同盟軍に席を置いている……此れは大きな裏切りよ。ロイ・バーナード……ッ!」



唇を噛み締めながら言葉を紡ぐマリアの心は
此の言葉を額面通りに映しただろうか?

其の言葉の真意は肩を震わせ表情を強張らせ
たまま何とか口を開く其の姿から見て取れる
様な気にもなってしまう。



ロイとマリア。



此の二人の出逢いは幼少期に遡る。

生まれは共に、時の街ジュードオークス。

其の南西に在る小さな田舎町であった。

互いの父と母も此の二つの家は旧知の中。

まるで、兄弟の様に育って来たのだ。

そして、二人の間柄は所謂、“許嫁”。

両親から言い渡された其の事実を二人は子供
の頃に意味を理解してから心底、嬉しく感じ
其の未来が訪れる事を信じていた。

いや、疑う余地すら無かったというのが正確
な表現だった様にも思う。

月日は流れ、関係性も想いも変わらず正義感
の強かった二人は将来設計の中に帝国軍への
加入を強く志す事となる。

努力を惜しまぬ二人は切磋琢磨しながら其の
帝国軍への入隊試験をパスするのだった。

入隊後も二人は不変の愛を確かめながら此の
時代に於いて平和を求めて行った。

其の平和の形は何なのか。

互いに言葉に言い表して貰えれば此の二人の
関係性と想いがどれだけか伝わる筈だ。




“マリアが幸せに暮らせる世の中を”



“ロイが幸せに暮らせる世の中を”




此の二人にとっての平和の形の最優先は互い
が互いを思っての事であった。

ならば、何故両者は今敵対する立場に居るか
其処だけが全く見えて来ない景色だ。

ロイの突然の脱退。

そして、時を同じくして起こった革命軍への
加入、此の事が大きな変化を起こした。

其れは、約三年前の出来事。

此の頃、帝国軍、いや政府に於いては内々で
王家ケーニッヒの力が弱体化の一途を辿って
いた真っ只中であった。

此処に、宰相ガズナの暗躍と陰謀が遠大にも
響いて来るのだが其れは他の帝国軍隊士達も
浮かべていた政府への不信感と同義。

ロイとマリアも同じくして政府への不信感を
募らせていた事には何の違いも無い。

だが、ロイはとある事件で大きな出逢いの中
揺れる胸中を更に掻き乱されてしまった。



其れは、革命軍総長ノア・クオンタムとロイ
が其の事件の中で邂逅してしまった事に起因
し其の戦いの中、ロイはノアという男が開く
事になるであろう未来に希望の光を灯した。



此の出逢いの直後でもあった。

ロイは大きな信念を胸に帝国軍という組織の
中から脱退を図ったのだ。


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