RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十六篇第五章 天下分け目の大戦・肆

縁在る者の嘆願

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突き付けられたケルベロスのファングが牙を
剥き出しにして口を開くと其処から柳色へと
染まるマグマの噴火が起こった。

其の噴火は轟音と共に大爆発を起こしロイの
身体を完全に爆炎の中へと誘う。

其れを見たマッドは一度ロイとの距離を取る
様にバックステップを踏むのだが其処に想像
とは違う位置からロイの声が轟く。



「臆病だな…距離を取るなんてよ。臆してる間に新時代は訪れるぞ!!」



ロイはマッドの背後で刀を天に向け突き立て
落雷を引き起こすと其れを刀身に呼び寄せて
鋒に其のチカラを集約して見せる。

落雷が臙脂色に染まり切った。

そして、マッドに向けて低空飛行を始めると
刀を脇に構えて加速して行く。



「絶技… 天麗御雷あまうるわしのみかづちッッ!!!!」



マッドを一閃する様に通過の際に迅雷の一撃
を叩き込んだロイはマッドの背後で刀を横に
薙ぎ払った状態で瞳を閉じていた。



「ぐっ……貴様…」


「次は当てるって言ったろ?だが…アンタもそう易々と倒れちゃあくれねェか」



振り返ったロイは何層にも重なり盾となった
柳色のマグマを視界に収める。

特性“貫通”に依り防御不可となった一撃でも
あれだけの層を破けば減速するのは当然。

其れでも、マッドの肩付近を大きく斬り裂き
多量の血が地上でマグマに溶け合っている。



「今度こそ…トドメを刺すぜ」


「ほざいていろ…反逆者が。貴様には幸福なる未来は訪れない」



マッドは強く練り上げた波動と共に両腕から
柳色のマグマを放とうと準備を整える。

其の、瞬間だった。

一人の女性の声が戦場に轟く。



「待って!!」



ロイとマッドの中央に空から舞い降りたのは
蒼色の雷を纏った一人の女騎士の姿だった。



「……出来るなら逢わずに終わらせたかったぜ?此の戦はよ…」



そう呟いたロイを一瞥した青色の髪の女性は
マッドに向けて向き直り口を開いた。



「同盟軍ロイ・バーナードを私に譲って下さい…監獄署長マッド殿」


「次から次へと…騒がしい事だ。中将殿…何故此の戦いの最中に飛び込んで来たのか」


「私は此の者と決着を着ける運命に在ります。唐突で申し訳ありませんがお譲り下さい」


「……私情を挟むおつもりか?」


「そうかもしれません。ですが、此処だけは譲れないのです」


「……まあ、良い。此の傷の代償を支払わせぬ儘というのが気に入らないが。此処は貴女にお譲りしましょう。中将殿…」



マッドはそう言い残してロイに深い怨念の様
な視線をぶつけた後で青い髪の女性を一瞥し
背を向けるのだった。

そして、突如として現れた青い髪の女性との
空間に誘われたロイは顔を引き攣らせて其の
女性が振り返る動作を見守った。



「逢わずに終わらせる…か。ロイ…貴方があの時…此の選択をした時点でそんな未来は訪れないわ…!」



苦心を浮かべて言葉を放ったのは帝国軍中将
マリア・シリウスであった。

因縁ある二人が、視線を交わらせる。
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