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第十六篇第三章 天下分け目の大戦・弐
絶やさぬ笑顔
しおりを挟む「(まあ……全身を縛り付けるってのはこの人と僕ちんの力量差じゃムリ……そんでも打てる手は打ち続けて行かなきゃなんないっしょ~)」
エゼルはニヤリと笑みを浮かべながらアルマ
の身体に向けて槍の先端を突き立てる。
引き寄せられ片手の自由を失ったアルマへと
其の槍の先端が迫った時だった。
「甘ェなァ………茶菓子がってくれェ…甘ェよ……同盟軍のイケイケ兄ちゃん……ッ!」
アルマの目が変わった。
其の視線の鋭さにエゼルは得体の知れぬ悪寒
に襲われると危機を感知する。
攻め手は完全に自身の筈であるにも関わらず
其の悪寒の正体がエゼルの攻めを鈍らせた。
「ぐがァァ!!!!」
大きく口を開いたアルマの口元から放たれた
何かが卯ノ花色の爆発を持ってエゼルを襲い
爆風と共に身体を吹き飛ばす。
白煙から姿を現したエゼルの身体が地面へと
背を付けて倒れ込み、サングラスが破損して
ヒビ割れを起こしていた。
「……ぐっ…い、今のは……何っしょ……?」
「悪ィな……兄ちゃん…。オメェと俺の実力差はよォ……天と地程あんぜェ…?」
痛みに堪えながら身体を起こしたエゼルの目
に映ったのは既に覚醒を終えたアルマの姿。
「業火覚醒……“ 吼吠猿破”……」
全身の筋肉が増強され大猿の姿に変化。
更に、トンファーも身体のサイズに合わせて
巨大化し大きな二本の角を持つ。
此れが、獣人化を果たすアルマの覚醒だ。
「い、今のが……アンタの覚醒の固有特性か何かっしょ?そのヤベー声みてぇなの……」
「おうよ……俺の覚醒の固有特性はよォ…“圧声”だァ……声を炸裂させる特性……更にはギフトの特性“爆破”と合わさって大爆発を起こす必殺技みてェなモンよ……」
「な~る。そりゃあまた……特性ガチャ、大成功みたいなモンかな~…ヤベェっしょ」
固有特性“圧声”。
声を光線に変えて炸裂させる能力。
其れに加えてギフトの得意特性“爆破”に依り
範囲すら最大限化されているのだ。
エゼルは焦りすら通り越して既に笑う事しか
出来ない状態へと追い込まれている。
「こんな時までヘラヘラと……オメェには戦いの覚悟ってモンがねェのかよォ……!」
「へ?なんそれ……僕ちんはいつだって大真面目……その上で笑顔をチカラに変えて来たってコト、見せてやるっしょ~!!」
アルマに向けて距離を詰めて行くエゼル。
そう、エゼルの笑顔は決して相手を舐めるか
の様なモノでは無い事は確かなのだ。
命を賭ける戦争の中でもブレない心。
其れが彼の強さの秘訣。
エゼルは四本の腕を駆使しながらアルマへと
攻め込んで行くが何度も何度もアルマの放つ
“圧声”に依って吹き飛ばされ続ける。
其れでも、笑顔は絶やさない。
そして立ち上がる。
倒れ込む度に表には出す事の無い闘志という
チカラを燃やしながら。
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