RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

文字の大きさ
上 下
725 / 783
第十六篇第三章 天下分け目の大戦・弐

絶やさぬ笑顔

しおりを挟む





「(まあ……全身を縛り付けるってのはこの人と僕ちんの力量差じゃムリ……そんでも打てる手は打ち続けて行かなきゃなんないっしょ~)」



エゼルはニヤリと笑みを浮かべながらアルマ
の身体に向けて槍の先端を突き立てる。

引き寄せられ片手の自由を失ったアルマへと
其の槍の先端が迫った時だった。



「甘ェなァ………茶菓子がってくれェ…甘ェよ……同盟軍のイケイケ兄ちゃん……ッ!」



アルマの目が変わった。

其の視線の鋭さにエゼルは得体の知れぬ悪寒
に襲われると危機を感知する。

攻め手は完全に自身の筈であるにも関わらず
其の悪寒の正体がエゼルの攻めを鈍らせた。



「ぐがァァ!!!!」



大きく口を開いたアルマの口元から放たれた
何かが卯ノ花色の爆発を持ってエゼルを襲い
爆風と共に身体を吹き飛ばす。

白煙から姿を現したエゼルの身体が地面へと
背を付けて倒れ込み、サングラスが破損して
ヒビ割れを起こしていた。



「……ぐっ…い、今のは……何っしょ……?」


「悪ィな……兄ちゃん…。オメェと俺の実力差はよォ……天と地程あんぜェ…?」



痛みに堪えながら身体を起こしたエゼルの目
に映ったのは既に覚醒を終えたアルマの姿。



「業火覚醒……“ 吼吠猿破バークエイプ”……」



全身の筋肉が増強され大猿の姿に変化。

更に、トンファーも身体のサイズに合わせて
巨大化し大きな二本の角を持つ。

此れが、獣人化を果たすアルマの覚醒だ。



「い、今のが……アンタの覚醒の固有特性か何かっしょ?そのヤベー声みてぇなの……」


「おうよ……俺の覚醒の固有特性はよォ…“圧声”だァ……声を炸裂させる特性……更にはギフトの特性“爆破”と合わさって大爆発を起こす必殺技みてェなモンよ……」


「な~る。そりゃあまた……特性ガチャ、大成功みたいなモンかな~…ヤベェっしょ」



固有特性“圧声”。

声を光線に変えて炸裂させる能力。

其れに加えてギフトの得意特性“爆破”に依り
範囲すら最大限化されているのだ。

エゼルは焦りすら通り越して既に笑う事しか
出来ない状態へと追い込まれている。



「こんな時までヘラヘラと……オメェには戦いの覚悟ってモンがねェのかよォ……!」


「へ?なんそれ……僕ちんはいつだって大真面目……その上で笑顔をチカラに変えて来たってコト、見せてやるっしょ~!!」



アルマに向けて距離を詰めて行くエゼル。

そう、エゼルの笑顔は決して相手を舐めるか
の様なモノでは無い事は確かなのだ。

命を賭ける戦争の中でもブレない心。

其れが彼の強さの秘訣。

エゼルは四本の腕を駆使しながらアルマへと
攻め込んで行くが何度も何度もアルマの放つ
“圧声”に依って吹き飛ばされ続ける。

其れでも、笑顔は絶やさない。

そして立ち上がる。

倒れ込む度に表には出す事の無い闘志という
チカラを燃やしながら。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました

新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

私を裏切った相手とは関わるつもりはありません

みちこ
ファンタジー
幼なじみに嵌められて処刑された主人公、気が付いたら8年前に戻っていた。 未来を変えるために行動をする 1度裏切った相手とは関わらないように過ごす

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...