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第十六篇第三章 天下分け目の大戦・弐
戦争が巻き起こす悪夢
しおりを挟む「(ドルーグ………ッ)」
アレスの言葉に依ってレザノフの脳内に強く
呼び覚まされた存在の名はドルーグ。
ドルーグ・スタールマン。
レザノフの実子にして、プレジアとの戦争の
最中に既に此の世を去った男である。
レザノフは実子の其の死を痛く悲しみ表舞台
から姿を消す様に一度戦線を外れた。
見た目や性格は全く違えども眼前でレザノフ
に迫り来るアレスの気迫に今は亡きドルーグ
という息子の姿を見た。
「……………戦争から得るモノ等、やはり何一つ無いのでしょう…」
片手でライフルを回転させながら鈍色の弾丸
を二発、放ったレザノフは迫り来るアレスの
鹿達を撃ち抜きカリスティックを蹴り上げて
間合いを取り切った。
「(………何故、この人は…こんなにも哀しい顔をしているんだろう……)」
悩みばかりだったアレスも感情が洗練されて
行くと同時にレザノフの本心を悟ったかの様
な状態へと錬磨されて行く。
だが、同情ばかりはしていられない。
だからこそ、全力を注ぐのだった。
「貴方こそ悩みや迷いがあるのならここから退場して構いませんよッ!!行きますよ…絶技…ッ」
「やはりやるしかありませんか……絶技…」
両者が身体に波動とギフトのオーラを錬磨し
溜め込んで行く姿が見られる。
アレスの顕現された鹿の角に空から降り注ぐ
様に光が集約されて行く。
対するレザノフは足場をギフトのチカラにて
硬化し、一撃の反動に耐えられる様に変化を
加えて行くとライフルを前へと構えた。
「 森羅万象・莉鹿森染破ッッ!!!!」
「 双撃・鋼弾孔ッ!!」
アレスの角から放たれた猛威を放つ光線。
そして、レザノフの放った二発の弾丸が交差
し一縷の弾閃を描く。
此の二つが互いに正面から混ざり合い戦場に
集った互いの兵士達を其の圧力と爆風に依る
突風で吹き飛ばす程の威力を見せる。
黒煙に包まれた、此の戦場。
しかし、其の黒煙が振り払われると共に決着
の音色が互いを包み込んで行く。
「…………何故、私が若き芽を摘まなければならないのか……」
立ち尽くしていたのは、レザノフ。
眼前では、爆風に依って羽織が焼け焦げる程
の衝撃を受け切ったアレスが倒れていた。
意識は、完全に飛んでしまっている。
「………戦争は恐ろしい。私は……やはり平和を望みますよ……せめて姫様達には其の様な道を緩りと歩んで欲しいものだ……」
アレスを見下ろしたレザノフの瞳には遣る瀬
無い想いがどれだけ詰め込まれていたのかを
測り切る事等、出来はしない。
勝って尚、乾く事しかしないのだ。
戦争からは、得るモノ等、無い。
レザノフの言葉は、真理なのかもしれない。
帝国軍本部、右翼の戦い。
同盟軍レザノフvs政府軍アレス
アレス・ニールズ 戦闘不能
勝者 レザノフ・スタールマン。
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