RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

文字の大きさ
上 下
700 / 783
第十六篇第一章 “日の出戦争”

動き出す政府軍

しおりを挟む





同盟軍の侵攻が始まった。

政府軍を指揮する宰相ガズナ・ペティットは
此の進軍を見て不敵な笑みを浮かべた。



「微温い……微温いわッ……焦る事等…微塵も無い……大将達は其の儘……奴等の別れた四隊は陽動であろうて…ちょこまかと動けると思うたか……中将達に現場指揮を託すとしよう……各個撃破じゃッ!!」



宰相ガズナの命を受け陽動四隊の各個撃破に
中将達が緩りと動き出していた。



「そして……漸く姿を見せたな…ランス・テラモーノ…ガスタ・レイノルズ……貴様等にも訊きたい事が山程あるのじゃよ…帝国軍本部中央には…あの男を差し向けるのじゃッ!!中将の中では未だ最強の男をのうッ!!」



元帥、大将達は後方で鎮座した儘。

宰相ガズナの命に依って帝国軍中将達が迫る
同盟軍の五隊撃破へと動き出す。

迅速なる対応を見せたガズナは緩りと重い腰
を上げて天空天守に立つロストの横へ向かう
と其の高い位置から城下町の櫓を見下ろす。



「………ふん…櫓に残ったのは混血の王子…バルモアの王女…そして裏切りの元大将に…革命軍と反乱軍の総長達か……フッ…フハハハハハ……此の戦いで獲る物は多いぞ…ロストよ」



高笑いを浮かべた宰相ガズナを横目に吹く風
を浴びて物思いに耽る元帥ロスト。



「アンタが其れを手に入れてェってんなら…俺は全身全霊で獲りに行くだけよ…」


「フハハハ…頼もしき男よのォ……!」



不動たる政府軍の最高戦力達。

一気に動き始めた戦争の構図の中で櫓に残る
同盟軍の主力達と白柱、そして天空天守にて
動かぬ政府軍の最高戦力達との激しき視線の
ぶつけ合いは未だに終わらない。

そして、間もなく同盟軍の先行五隊と政府軍
の中将に指揮を取らせた部隊達が衝突する。

其の中で、たった一人の男だけが中将達から
掛けられた招集に応じてはいなかった。

其の男は帝国軍本部の中央で空を睨む。



「…………なあ、サーガ。お前なら何を選んで前へ進んだ?」



コーンロウに決めた其の髪が爽やかな風にて
吹かされ揺らぐ中庭でそう、呟く。

だが勿論、答えは返って来る筈も無い。



「だよな…喋れねぇからおっ死んだってコトなんだよなァ……たくっ……思ったより優柔不断だったわ……俺…」



自分への苛立ちを隠し切れずに其の男はそう
自身の事を責め続けていた。

帝国軍少将U・J・ブラッド。

彼は招集地点へ向かうべきか否かを中庭にて
悩んでいたが、其の姿を本部の上階から見て
いた一人の男がいた。

其れは、彼の元上司であり現在の帝国軍中将
クロス・ヴェルタイガーだった。

そんな彼の姿をクロスは帝国軍本部内の廊下
で視界に映したが、驚いた事にお咎めを出す
どころか何かを思案し持ち場へと向かう。

様々な想いが交錯する中、両軍の配置展開は
整ったと思われる状況が来た。

互いに譲れぬ正義の為に、彼等はプレジアの
歴史上で上位を争う戦争へと浸って行く。

既に幕は切って落とされたのだ。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました

新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?

アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。 泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。 16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。 マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。 あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に… もう…我慢しなくても良いですよね? この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。 前作の登場人物達も多数登場する予定です。 マーテルリアのイラストを変更致しました。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

私は、忠告を致しましたよ?

柚木ゆず
ファンタジー
 ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。 「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」  ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。  ロマーヌ様。まだ間に合います。  今なら、引き返せますよ?

処理中です...