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第十六篇第一章 “日の出戦争”
動き出す政府軍
しおりを挟む同盟軍の侵攻が始まった。
政府軍を指揮する宰相ガズナ・ペティットは
此の進軍を見て不敵な笑みを浮かべた。
「微温い……微温いわッ……焦る事等…微塵も無い……大将達は其の儘……奴等の別れた四隊は陽動であろうて…ちょこまかと動けると思うたか……中将達に現場指揮を託すとしよう……各個撃破じゃッ!!」
宰相ガズナの命を受け陽動四隊の各個撃破に
中将達が緩りと動き出していた。
「そして……漸く姿を見せたな…ランス・テラモーノ…ガスタ・レイノルズ……貴様等にも訊きたい事が山程あるのじゃよ…帝国軍本部中央には…あの男を差し向けるのじゃッ!!中将の中では未だ最強の男をのうッ!!」
元帥、大将達は後方で鎮座した儘。
宰相ガズナの命に依って帝国軍中将達が迫る
同盟軍の五隊撃破へと動き出す。
迅速なる対応を見せたガズナは緩りと重い腰
を上げて天空天守に立つロストの横へ向かう
と其の高い位置から城下町の櫓を見下ろす。
「………ふん…櫓に残ったのは混血の王子…バルモアの王女…そして裏切りの元大将に…革命軍と反乱軍の総長達か……フッ…フハハハハハ……此の戦いで獲る物は多いぞ…ロストよ」
高笑いを浮かべた宰相ガズナを横目に吹く風
を浴びて物思いに耽る元帥ロスト。
「アンタが其れを手に入れてェってんなら…俺は全身全霊で獲りに行くだけよ…」
「フハハハ…頼もしき男よのォ……!」
不動たる政府軍の最高戦力達。
一気に動き始めた戦争の構図の中で櫓に残る
同盟軍の主力達と白柱、そして天空天守にて
動かぬ政府軍の最高戦力達との激しき視線の
ぶつけ合いは未だに終わらない。
そして、間もなく同盟軍の先行五隊と政府軍
の中将に指揮を取らせた部隊達が衝突する。
其の中で、たった一人の男だけが中将達から
掛けられた招集に応じてはいなかった。
其の男は帝国軍本部の中央で空を睨む。
「…………なあ、サーガ。お前なら何を選んで前へ進んだ?」
コーンロウに決めた其の髪が爽やかな風にて
吹かされ揺らぐ中庭でそう、呟く。
だが勿論、答えは返って来る筈も無い。
「だよな…喋れねぇからおっ死んだってコトなんだよなァ……たくっ……思ったより優柔不断だったわ……俺…」
自分への苛立ちを隠し切れずに其の男はそう
自身の事を責め続けていた。
帝国軍少将U・J・ブラッド。
彼は招集地点へ向かうべきか否かを中庭にて
悩んでいたが、其の姿を本部の上階から見て
いた一人の男がいた。
其れは、彼の元上司であり現在の帝国軍中将
クロス・ヴェルタイガーだった。
そんな彼の姿をクロスは帝国軍本部内の廊下
で視界に映したが、驚いた事にお咎めを出す
どころか何かを思案し持ち場へと向かう。
様々な想いが交錯する中、両軍の配置展開は
整ったと思われる状況が来た。
互いに譲れぬ正義の為に、彼等はプレジアの
歴史上で上位を争う戦争へと浸って行く。
既に幕は切って落とされたのだ。
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