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第十五篇第四章 政府軍〜威光再臨譚〜
プレジア浄化計画
しおりを挟む帝国軍本部内最上階、元帥執務室。
先程の用件で宰相警護特命衛士イヴが宰相の
ガズナを訪ねて来ていたが其の問題の話さえ
ガズナは一笑に伏して聞き流した。
「……いいのか?」
「ええんじゃ、今はそんな小事に気を回している場合では無いのじゃよ」
イヴが立ち去った後で話を黙って耳に入れて
いた元帥ロストからガズナへ問い掛けが入る
が其れもまたガズナは笑い飛ばす。
すると、ガズナは腰の後ろで手を組みながら
着物の裾を引き摺って天空天守へと出て行き
ロストは緩りと其れを追って行く。
「大願成就は目の前じゃ。もう頓挫では済まぬ所まで来た……薄汚れたケーニッヒの血を洗い流しワシ等が愛すべきプレジアという国を取り戻す…計画は総て順調じゃよ」
「プレジア浄化計画…。初めて聞いた時から大逸れた事だとは思ってたが…まさか此処迄の形にするとはな…」
「行動力、基い信念無き者は…振り上げられた其の旗を笑って来たのじゃ。じゃが、出る杭を打つだけの者達は己の力が無き事をひた隠す様にグレーゾーンを見て見ぬ振りを続けて来ただけ…其れが今の此の薄汚れた国の末路なのじゃよ」
「だから、一度全てを壊すと。そして新たに創り上げる……恐れ入ったよ…其の信念の強さはな……」
天空天守から国を見下ろすガズナとロスト。
此の二人のルーツは未だ知れぬが、彼等には
其の浄化計画を可能にするだけのカードをも
手中に収めている事は間違い無い。
途方も無い程の苦労であったろう。
だが、其の計画の達成も目前なのだ。
反政府組織となり得るケーニッヒ王家の息が
掛かった六撰将達はストラーダの息子である
ロード・ヘヴンリーと其の仲間達を自身達の
目的の為に引き入れた。
其の中には、何と目の上のたん瘤となり得る
バルモア王女シェリー・ノスタルジア迄もが
居る事も調べ上げた。
更には、ロードとシェリーの関係値から此の
先に新政府の障壁となり得る反乱軍と革命軍
が同盟軍の戦力として加わった。
ガズナは、笑みが止まらない。
敵も強大な戦力と言えばそうなのだが反政府
の人間達を一網打尽にする好機だからだ。
更に言えば、どんな人間達が集おうとも自身
の隣には元帥ロスト・ヘルウェイドが居る。
ガズナは、ロストの存在もあって負ける事の
恐怖を打ち払えているのだ。
だからこそ、決着の刻は近い。
些細な問題等、ロストを中心に積み重ねる事
に成功したチカラの前で捻り切る。
其の自信が、プレジア浄化計画を遂行させて
行く中で大きな歩みとなって来たのだ。
遂に、雌雄を決する時。
総ての準備は整ったと言えよう。
此処にプレジアという国が辿った歴史の中で
最も大きな転換点となる戦争を記す。
其の名は、“日の出戦争”。
三百年もの間、動く事の無かった歴史が遂に
動き始める刻が此処に訪れたのだ。
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