RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

文字の大きさ
上 下
636 / 783
第十四篇第二章 大蜘蛛を背負う者

感恩戴徳の日々 “憂愁”

しおりを挟む






「…………運命から逃げちゃいけない」



サーラの言葉がストラーダに突き刺さる。



「………だが、サーラッ…」


「貴方はプレジアを背負う人間。家族の死を前にして……貴方はそこから逃げてはいけない……寂しいけど…辛いけど…苦しいけど…この現状を救えるのはストゥ……貴方しかいないでしょうッ!?」



思わぬサーラの説得に頭を下げていたランス
と慌てて顔を上げて此の先に待つ現実に在る
問題に心を移し、胸を痛める。



「…………何故だ、サーラ…お前は…」


「私は貴方と出逢えて…生きる希望を持つ事が出来た…軍に使われ、軍に見捨てられ…知らない敵国のど真ん中…貴方が居なければこんな幸せな日々は訪れなかった…貴方は誰よりも優しい人……その優しさを今度はプレジアの民に向けてあげてッ!!」



サーラの目に溜め込まれる哀しみの雫。

其れがストラーダの感情を揺れ動かし心の中
に重たくのし掛かって行く。

そして、腹は括った。



「……………解った…ッ……」



想いは追い付いてはいない。

だが、決断をせざるにいれなかった。



「………ストラーダ様…重ね重ね申し訳ありませんが……サーラ様は…俺達の手でバルモアへと戻って頂かなければなりやせん…」



予想は出来ていた。

だが、言葉にされるとどうしても気持ちの上
での整理が付く事はなかった。

そして、もう一つの問題点が二人を襲う。



「これで最後なんで……どうかご勘弁してくだせぇ……形は混血と言えど…息子であるロード様は……ストラーダ様の後継と成りえます………サーラ様にとってもロード様とは別れて貰わなきゃなりやせん……ッ!!」



表情が改めて強張り引き攣るサーラ。

だが、ランスの苦痛の表情を見れば言葉を
挟む事など躊躇して当然だった。



「だがしかし…ロード様をこのタイミングで皇居へとお連れする事は出来やせん……ですんで俺が……政府を抜け…面倒を見ます。いや、見させて下さいッ!!」



再び頭を下げたランスにサーラは涙を溢して
歩み寄ると肩にソッと手を添えて話す。



「頭を上げて…ランスさん……貴方の立場は大丈夫なの…?」


「俺は全く問題ねぇですから……ッ…ホントすいやせん…ホントにすいやせんッッ!!!」



謝罪を重ねるランスの元にストラーダもまた
歩み寄ると膝を着いて声を掛ける。



「辛い役回りをさせてしまった……済まない、ランス……此れからも其れは続いてしまうのが心苦しいが……俺の……俺達の息子を頼んだ…………ッ………!」


「…………ッ……御意ッッ…………!!」



こうして、涙に明け暮れた誰一人として幸せ
に等せぬ憂愁の出来事の幕は降りる。

ひょんな事で出逢うストラーダ・ケーニッヒ
とサーラ・ヘヴンリーは愛に繋がった。

そして誕生した息子のロード。

彼が両親と別れケーニッヒの名から母方の
ヘヴンリーを名乗る迄の物語が綴じられる。
しおりを挟む
感想 31

あなたにおすすめの小説

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

仰っている意味が分かりません

水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか? 常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。 ※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。

私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました

新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。

婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ! 

タヌキ汁
ファンタジー
 国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。  これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

処理中です...