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第十四篇第二章 大蜘蛛を背負う者
感恩戴徳の日々 “憂愁”
しおりを挟む「…………運命から逃げちゃいけない」
サーラの言葉がストラーダに突き刺さる。
「………だが、サーラッ…」
「貴方はプレジアを背負う人間。家族の死を前にして……貴方はそこから逃げてはいけない……寂しいけど…辛いけど…苦しいけど…この現状を救えるのはストゥ……貴方しかいないでしょうッ!?」
思わぬサーラの説得に頭を下げていたランス
と慌てて顔を上げて此の先に待つ現実に在る
問題に心を移し、胸を痛める。
「…………何故だ、サーラ…お前は…」
「私は貴方と出逢えて…生きる希望を持つ事が出来た…軍に使われ、軍に見捨てられ…知らない敵国のど真ん中…貴方が居なければこんな幸せな日々は訪れなかった…貴方は誰よりも優しい人……その優しさを今度はプレジアの民に向けてあげてッ!!」
サーラの目に溜め込まれる哀しみの雫。
其れがストラーダの感情を揺れ動かし心の中
に重たくのし掛かって行く。
そして、腹は括った。
「……………解った…ッ……」
想いは追い付いてはいない。
だが、決断をせざるにいれなかった。
「………ストラーダ様…重ね重ね申し訳ありませんが……サーラ様は…俺達の手でバルモアへと戻って頂かなければなりやせん…」
予想は出来ていた。
だが、言葉にされるとどうしても気持ちの上
での整理が付く事はなかった。
そして、もう一つの問題点が二人を襲う。
「これで最後なんで……どうかご勘弁してくだせぇ……形は混血と言えど…息子であるロード様は……ストラーダ様の後継と成りえます………サーラ様にとってもロード様とは別れて貰わなきゃなりやせん……ッ!!」
表情が改めて強張り引き攣るサーラ。
だが、ランスの苦痛の表情を見れば言葉を
挟む事など躊躇して当然だった。
「だがしかし…ロード様をこのタイミングで皇居へとお連れする事は出来やせん……ですんで俺が……政府を抜け…面倒を見ます。いや、見させて下さいッ!!」
再び頭を下げたランスにサーラは涙を溢して
歩み寄ると肩にソッと手を添えて話す。
「頭を上げて…ランスさん……貴方の立場は大丈夫なの…?」
「俺は全く問題ねぇですから……ッ…ホントすいやせん…ホントにすいやせんッッ!!!」
謝罪を重ねるランスの元にストラーダもまた
歩み寄ると膝を着いて声を掛ける。
「辛い役回りをさせてしまった……済まない、ランス……此れからも其れは続いてしまうのが心苦しいが……俺の……俺達の息子を頼んだ…………ッ………!」
「…………ッ……御意ッッ…………!!」
こうして、涙に明け暮れた誰一人として幸せ
に等せぬ憂愁の出来事の幕は降りる。
ひょんな事で出逢うストラーダ・ケーニッヒ
とサーラ・ヘヴンリーは愛に繋がった。
そして誕生した息子のロード。
彼が両親と別れケーニッヒの名から母方の
ヘヴンリーを名乗る迄の物語が綴じられる。
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