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第十四篇第二章 大蜘蛛を背負う者
感恩戴徳の日々 “飛火”
しおりを挟む運命の子、ロード生誕から約一月後。
火の街メルフレアは思わぬ事件に巻き込まれ
人民達が慌てふためき退路を始めた。
「サーラさん、此方へ………」
ストラーダとサーラに抱えられたロード達は
ディルとアラネアの先導を受けて此の事件の
間隙を縫う様に安全地を目指す。
勃発したのは、またしても戦争ー。
バルモア軍の侵攻を受ける火の街メルフレア
に於いて、其れは再び起きてしまう。
地を駆けるストラーダ達の中で一番後方側を
走っていたアラネアは此の逃走劇の中で一つ
の違和感を感じていた。
「……………なあ、ストゥ…」
「何だ、こんな時に……」
「オマエ…最近どっかで人と関わったか?」
「いきなりどんな質問だよ…買い物とか行ってんだから…配慮はしてっけど…少しぐらい人とは会うだろ……」
ストラーダは自身の身を隠す為に彼から見て
最大限の配慮は重ねて来た筈。
だからこそ、アラネアの問い掛けに疑問符を
浮かべていると「まあ、そうだよな」と声を
漏らしたアラネアの表情が強張る。
「オレ達は戦争地から安全地を目指してルートを何度か変えた……だが、ヤツらとの距離感はずっと一定のまま……あの隊はもしかしたら西で帝国軍とヤリあってる連中と合流する気がねぇのかもしれねぇ………」
「アラネア…其れはまさか………」
ディルの言葉にアラネアが深く頷く。
そして、其のアラネアが不安視していた事実
が現実となって降り掛かって来た。
「背後の隊が左右に別れた……完全にオレらを狙ってやがる……いや、オレらというより……オマエの事だろう…ストゥ……」
「………俺の存在がバレた……ってのか?」
「ああ、恐らくな。だが、心配すんな…コノ辺りの山々は山道がかなり入り組んでる…オレとディルはそのへん熟知してっかんなあ逃げられるさ…ッ!」
ニッと笑ったアラネアの表情にストラーダ達
はほんの少しの安堵感を覚える。
だが、しかしアラネアは更に先を見ていた。
何処でバレたかは解明不能、だが現実的にも
此の場でバルモア軍がストラーダを捉えれば
ストラーダは対プレジア軍に対しての人質と
されてしまうだろう。
更に言えば、サーラは裏切り者として母国の
凶刃の餌食となりロードは、此の先バルモア
がプレジアを利用する為の捕虜となり得る。
アラネアは今、自分の眼前にバルモアという
戦争中の国にとって余りにも都合の良すぎる
カードが揃っている事を確信していた。
「アラネア…南側へ……此の山道を使って脱出を測ろう……」
「………ああ、そうだ。ディル……オマエ、来月誕生日だったよな?」
「……こんな時に…何を……」
「万屋“大蜘蛛”のオレの部屋によ、刀が飾ってあんだろ?アレ、オマエにやるよ」
状況的に、此の不可思議な会話がアラネアの
口から発せられた事で嫌な予感がストラーダ
達へと襲い掛かってしまう。
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