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第十四篇第一章 追憶の遭逢
運命の岐路 “繋属”
しおりを挟むしかし、女性の考えは的を外した。
ストラーダという男は来る日も来る日も雨の
日ですら飽きる事無く、毎日の様に窓の外を
駆け回り洗濯、食事等の世話を続けた。
たまに、どうやったら山や川で採れるのかと
思う食材で料理を作って見たり。
一体何処から仕入れて来たのだろうかと思う
資材を使って部屋の中を綺麗にして行く。
毎日の様に耳へと入り込む木槌の音や川辺で
奮闘する音達が其の女性に日々変わる事すら
無い驚きを与えていた。
そうこうしている内に、約一月弱の時間すら
経過してしまい傷は完治を迎えた。
「…………やっと、立てる様になったのか?」
他の用事で部屋へと入って来たストラーダの
視界の先に遂に其の足で立つ女性の姿が目に
入って来ると頬を緩ませる。
「………ええ。此れは貴方のおかげ……でも、一つ訊いてもいい?」
「お、おお。質問なんてほぼされた事ねぇからドキドキすっけど……」
「貴方は私が……プレジアの人間で無い事は最初に悟っていたはず……そして一月もこうしている貴方がなんて…信じられないけど…貴方はプレジアの王族なんじゃないの?…なんで私を助けたの……?」
「………質問、いくつだ?それ……」
ストラーダは突然の様に堰を切った女性から
の質問を抜け落とさない様に言葉を浮かべて
答えようと思案した。
「……んと。アンタがバルモアの人間だってのは薄々感じてたさ……そんで、俺は一応…言いたかねぇけど……ケーニッヒ王家の人間だよ。だがな……家出中……みたいな?」
「家出って……そんなに簡単なモノなの?」
「まあ、まあ……先ずは最初の質問の最後だ…何で助けたか、だったな……そりゃあよ。同じ“人間”だからだよ…!」
ストラーダの言葉に女性は呆気に取られる。
「勿論、アンタはバルモアの人間で……特に俺の生まれた王家を恨んでいるだろうなって事も考えてた……其処まで、頭が回らねぇ程…馬鹿じゃねぇんだ……だからよ……看病させて貰えて……ありがとうッ!!」
全ては周知の上だった。
女性は王族と言えどストラーダという男には
何か他とは違うモノが在ると感じた。
「元気になって貰えて良かった……あー…でもそうなるとアンタともお別れか……殆ど話した事無かったけど…寂しくなるな…」
ストラーダはそう言って頭の上で手を組んで
少しトーンを上げて寂しさを誤魔化す。
しかし、直ぐに変化が訪れた。
背中越しにストラーダのシャツをか細く掴む
赤髪の女性が静かに口を開く。
「………サーラ…」
「………え?」
「私の名前は……サーラ・ヘヴンリー…。ずっと名前さえ教えなくてごめんなさい……貴方のおかげで…まだ生きて行ける……ッ」
背中越しに涙が溢れるサーラという女性の姿
を察したストラーダが振り返る。
そして、優しく抱き締めるのだった。
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