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第十四篇第一章 追憶の遭逢
運命の岐路 “嘆願”
しおりを挟む怯えながら身体を震わす其の女性はチラリと
向けた視線の先にとあるモノを見つける。
そして、窓の外に干された其の羽織の紋様に
目を奪われ、一気に立とうと動き出す。
が、足を痛めておりベッドの下に落ちた所で
身動きが取れなくなってしまった。
「オイッ!アンタ、大丈夫かッ!!」
「来ないでッ!!!!」
ストラーダは其の女性の声にピタリと足を
止めて固まってしまった。
其の声には怒気とも恐怖とも取れる畏怖の念
が盛大に盛り込まれていたからだ。
そして、彼女の口から驚愕の言葉が飛ぶ。
「お前はプレジアの人間……しかもあの紋様は王族でしょうッ……何故、助けるのかすら意味が解らない……だからもう近寄らないでッ!!」
ストラーダは其の言葉から真実を見つけ出し
此の女性が何者なのかを悟った。
恐らく、此の女性は戦争の為に連れ出された
バルモア側の女性であると。
だからこそ王家の紋様を、見て恐怖を覚えて
まるで死を目の前にした獣の様に威嚇を見せ
牙を立てている様にも見えた。
しかし、ストラーダにとって其処は問題では
無く心の底からの想いを伝える。
「怖がらせて済まねェ。だけどアンタ…其の足じゃ…生きてくのは大変だ……だから頼む…命を粗末にしないでくれ……!」
「何をして…………」
其の女性は眼前の光景に目を疑う。
恐らくプレジアの王家の人間であろうという
男が自分の目の前で土下座を始めた。
其れもとても、深くだ。
「生きてく為の飯の調達とか……治るまででいいんだ…俺に看病をさせてくれ……!それ以外の時は俺は外でなるべく過ごす……だから頼むッ!!!」
其の女性は言葉を失った。
だから、返答はしなかった。
だが、ストラーダは静かに顔を上げて女性が
目を逸らしている横顔を見て笑う。
「……拒否しねぇって事は…いいって事だよなッ!?」
其の女性は身体を使って何とかベッドの上に
痛みを堪えて這い上り、また窓の外から川辺
を眺めて口をつぐんでしまった。
「おしッ!!魚焼いて来てやっから待っとけよ……腹が満たされりゃ…少しぐらい気持ちが明るくなるかもしんねーからよ!」
ストラーダは外へと駆け出して行く。
其の女性はチラリと其の背中に視線を送ると
複雑な胸中で心を揺さぶられていた。
軍の給仕として駆り出され敗軍の列の中から
逸れてしまった其の女性は既に三日間、仲間
の救けを待ったが誰一人現れなかった。
だからこそ、心が痛んでいた。
そして、皮肉な事に、そんな自分を救けよう
と動いたのはプレジアの王族。
其の女性は自身の言葉を巻き戻すとバルモア
の人間であるという事を彼は悟ったのだろう
と考えついてしまった。
きっと、いつかは飽きて殺される。
そんな恐怖をも宿しながら困惑する胸中の中
で己の人生の終焉を考えていた。
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