RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十三篇第五章 生まれながらの枷

失意のドン底

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ロストがシルヴァの首元を掴んだ儘、空中と
天空天守の境目へと辿り着くと片手を伸ばし
シルヴァの身体を其の境目へと差し出す。

無造作に掴み上げられだらんと全身の力が
抜けた状態のシルヴァはロストを睨みつける
気力さえ失っていた。



「(そうか……我のやってきた事は…全てが無駄だったのか……帰る場所も無い…頼れる仲間も居ない……決まっていたのかもしれないな……あの日あの時に……我は孤独の底で死に行く事を………)」



もう、抵抗はおろか前を向く事すら出来ずに
いたシルヴァにロストが追い討ちを掛ける。



「冥土の土産だ。最後に……絶望を拝ませてやろう」



言葉を発したロストの腕からシルヴァの身体
がいとも簡単に手放されてしまう。

無気力のまま、天空天守から城下へと無造作
に落とされたシルヴァの視線の先にロストの
放った其の言葉の真意が映し出される。

ロストの両肩辺りに突如として空間を呑んで
現れたブラックホールの中から、シルヴァの
覚醒に因って生み出された卍型の手裏剣双つ
が出現したのだ。



「(消失させるだけでなく…奪い取ったと言うのか………無理だ。あのチカラに攻略の意図口は無い………)」



更なる絶望がシルヴァの身体に酷く冷たい声
で諦める他に道は無いという事を悟らせる。



「堕ちろ……絶望のドン底へ」



ロストの声と共に卍型の手裏剣がシルヴァの
月白色では無く、ロストの暗黒色のドス黒さ
を持って襲い掛かって来る。

シルヴァにとっては呆れて言葉も出ない。

自身が一族の為だけに磨いて来たチカラ達は
一族を人質に、政府の為に使われて来た。

其れで最後には自身のチカラで死を迎える。

笑えもしない素っ頓狂な話が現実になりそう
な所で襲い掛かって来た手裏剣がシルヴァの
身体を斬り裂き、血の雨が空中から降る。

そして、旋回した手裏剣がまたもシルヴァの
身体に迫り来るのを見て瞳を閉じる。



「(そうか……我は誰の役にも立てなかったのだな……一族の…政府の…そして我の身勝手で……彼等を振り回してしまった……死んで詫びたとして…得をするのは…我だけか…ああ…此れで漸く…楽になれる……)」



地獄への扉を目の前にしてシルヴァは自身の
人生を全否定してしまった。

革命軍の仲間達へ謝罪すら出来ずに声を失う
という悔恨を其の胸に強く刻みながらー。

彼は、覚醒のモチーフはジャッカル。

ジャッカルとは、犬科なのか狼科なのかと
答えの出ない種族である。

シルヴァの立場に良く似合う。

彼は政府の犬だったのか。

其れとも銀狼率いる革命軍の幹部か。

死を目の前に其の論争をシルヴァは一人きり
で身勝手に綴じて行くのだろう。

人生の終わり、と共に。

吹き荒ぶ風が、彼の身体を包み込む。

だがしかし、其の風は単なる自然風ではなく
銀色の疾風であったーーー。
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