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第十三篇第四章 暁光の聖天使
“人生の付き物”
しおりを挟む「………重てェよ……退けッ……」
グレイがロードから視線を完全に外した。
そして、ぶっきらぼうにそう言葉を述べる。
ロードは静かに立ち上がるとまたフラついて
倒れそうになるロードの肩を駆け寄って来た
仲間達が支えるのだった。
「フラフラじゃねぇか……そんな状態で偉そうに説教しやがってよ……」
「テメェ……俺は…本気で心配して……」
「うるせェ……疲れたんだよ。トドメ差さねぇんなら俺は寝る……さっさとどっかに行きやがれッ……!」
グレイは完全に瞳を閉じた。
ロードは其れを見て言葉が届かなかったのか
と胸を痛めたが、グレイの横顔にレザノフが
何かを察して、ロードの肩を叩く。
「……戻りましょう。ロード殿……薬草と泉の水を調達し彼等の元へ……私達にも成すべき事があります…」
「…………ああ。わかったよ……」
ロードはシグマとシャーレに肩を担がれ必要
としていた薬草と泉の水を手に入れると其の
場から背を向けて歩き出した。
ロードは一度、グレイに視線を戻したが未だ
グレイは動く様子を見せなかった。
そして、ロード達が夜闇に消えた途端に大岩
の所から裏帝軍の幹部達がグレイの元に続々
と足を引き摺りながら歩み寄って来る。
すると、アノンはグレイの横にドスっと勢い
良く座り込み、スネイクは月を見上げて立ち
の姿勢のままであった。
エマはアノンの対面に体育座りをすると首元
に腰を下ろしたライアがグレイの頭をそっと
膝の上に乗せる。
「いやはや……完敗、ですね……」
「うちら、こんしゃき、どげんなるっちゃろうか……?」
「オイオイ、弱気な事言うんじゃねぇ……。政府が刺客なんて送ってきやがったら返り討ちにするだけだろうが……ッ」
「アノン……なんでまだブチギレてるでありんすか……でもその通りじゃな……妾達はグレイ様をお護りする事が使命でありんす…」
其の声は勿論、寝た振りのグレイに届く。
そして、耐えて来たモノがグレイの瞳から
静かに頬を伝って零れ落ちて行く。
「……もう、やめてくれ……」
そう、零したグレイの言葉に幹部達は一斉に
其々の耳を傾けて行った。
「グレイ様……」
「………無理して付いて来なくていい……辛けりゃ外れたっていいんだ……」
グレイの言葉に幹部達は眼を丸くする。
「オイオイ、こんな傷心の軍団長殿…もう二度と拝めねぇぜ…」
「いやはや……確かにその通り……」
「ちょっ……キュンと来たでありんす……」
「無理ばい……だってうちら、一蓮托生ん仲間やろ?」
グレイは裏帝軍幹部達の身の危険を察知して
そう言葉を絞り出していた。
しかし、仲間達の言葉は其れでは動かない。
グレイの涙腺は静かに崩れた。
「…………チッ……ありがとよ……」
其の言葉に裏帝軍幹部達は笑顔を浮かべる。
彼等は此の時代に此の先、どんな未来の中を
其の足で歩んで行くのだろう。
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