593 / 783
第十三篇第四章 暁光の聖天使
桃色の聖天使
しおりを挟むバルモア王女シェリー・ノスタルジアが遂に
稀有な存在である閃光のギフトの覚醒という
扉を開く事に成功した。
「いやはや……何という輝き……」
「あの姫が……まさか……戦えるという情報は皆無だった筈でありんす……!」
「なんも覚醒は戦うタメだけんチカラやなかっちゅうコトやろうか……」
「ゴチャゴチャ言ってんなッ!!変わんねぇよッ!!ピカピカ眩しいモン、ぶっ壊すだけだろォォ!!」
裏帝軍幹部達は、アノンの掛け声に合わせて
頭上に舞い上がったシェリーへと攻め込む。
だが、しかしー。
其の攻撃はシェリーには届かなかった。
そして、其の事実は裏帝軍幹部達に驚く程の
予想の範囲外の事で防がれていた。
「……テメェ等はァァ……ぶっ倒れてたハズだろうがよォ!!」
アノンの怒りの声を飛ばされた蒼い髪の男は
ヒラリと腕に付いたマント型の盾を翻し息を
小さく吐くと青龍刀でアノンを吹き飛ばす。
「……私達にも…理由は良く解らないんだ。先程迄の痛みも消えたが……何故、今…此れ程迄に身体が軽いのか…」
「そいつァ…ワイも同感や。コレも全部、姫様のチカラっちゅうコトかぁ?」
「ロード殿に…御力を与えた事は知っていましたが…此れ程、同時に等…正しく驚嘆の光景ですね……」
「みんなっ……不思議なコトなんてなにもないよっ……ほらっ…見てッ!!」
妖精の姿をした翠色の髪の女性が突き出した
装備のナックルフィストに違和感を感じた。
其れは、カラーが桃色に変化していた事。
其れを見た他の三人は自分の覚醒体に起きた
変化に其の目を丸くし始めた。
其れは、シグマの首周りのファーと槍の先端
が桃色に、レザノフの左腕に装着された盾と
右腕に持つライフル、更にはシャーレの右側
の腕に付いていた盾型のマントと額に生えた
角の片側もまた桃色に変わっていた事。
そして、四人がシェリーの真下に立ち並ぶ。
其の瞬間、閃光のギフトの付加の特性が四人
にもロードに与えたチカラと同等のチカラを
付与したのだった。
「シェリーちゃんっ……救けてくれてありがとっ……おかげで命拾いしたッ!!」
「……ポアラ様っ……!!」
ポアラが飛ばした其の声がシェリーの胸の内
にじーんと染み込んで行く。
想えば、彼女は自身を責め続けていた。
戦うチカラは無い、しかし自分自身の意志で
訪れたプレジアでは当たり前の様に其の命を
狙われる日々が続いた。
其れでも、傷付くのは自分ではなく仲間。
チカラに成れぬ不甲斐無さと己の無力感に心
を強く苛まれ、仲間達と共に歩んでは行けぬ
とまで悩み疲弊した夜もあった。
だからこそ、ポアラの其の一言に合わせ皆に
向けられた笑顔を振り撒く其の瞳がシェリー
の瞳を潤ませる事に繋がった。
だが、泣いている場合では無い。
涙を拭い、いざ戦いの舞台へ王女が舞うー。
50
お気に入りに追加
23
あなたにおすすめの小説
仰っている意味が分かりません
水姫
ファンタジー
お兄様が何故か王位を継ぐ気満々なのですけれど、何を仰っているのでしょうか?
常識知らずの迷惑な兄と次代の王のやり取りです。
※過去に投稿したものを手直し後再度投稿しています。
私が出て行った後、旦那様から後悔の手紙がもたらされました
新野乃花(大舟)
恋愛
ルナとルーク伯爵は婚約関係にあったが、その関係は伯爵の妹であるリリアによって壊される。伯爵はルナの事よりもリリアの事ばかりを優先するためだ。そんな日々が繰り返される中で、ルナは伯爵の元から姿を消す。最初こそ何とも思っていなかった伯爵であったが、その後あるきっかけをもとに、ルナの元に後悔の手紙を送ることとなるのだった…。
婚約破棄の後始末 ~息子よ、貴様何をしてくれってんだ!
タヌキ汁
ファンタジー
国一番の権勢を誇る公爵家の令嬢と政略結婚が決められていた王子。だが政略結婚を嫌がり、自分の好き相手と結婚する為に取り巻き達と共に、公爵令嬢に冤罪をかけ婚約破棄をしてしまう、それが国を揺るがすことになるとも思わずに。
これは馬鹿なことをやらかした息子を持つ父親達の嘆きの物語である。
【完結】そして、誰もいなくなった
杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」
愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。
「触るな!」
だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。
「突き飛ばしたぞ」
「彼が手を上げた」
「誰か衛兵を呼べ!」
騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。
そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。
そして誰もいなくなった。
彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。
これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。
◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。
3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。
3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました!
4/1、完結しました。全14話。
とある元令嬢の選択
こうじ
ファンタジー
アメリアは1年前まで公爵令嬢であり王太子の婚約者だった。しかし、ある日を境に一変した。今の彼女は小さな村で暮らすただの平民だ。そして、それは彼女が自ら下した選択であり結果だった。彼女は言う『今が1番幸せ』だ、と。何故貴族としての幸せよりも平民としての暮らしを決断したのか。そこには彼女しかわからない悩みがあった……。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる