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第十三篇第四章 暁光の聖天使
暁光の契機
しおりを挟む「クソッ……ニャロウがッ!!」
ロードが其の場から飛び出そうとした瞬間に
まるで怒号の様な声が瞳を閉じ大岩の真上で
座り込むグレイから飛ばされる。
「テメェは動くんじゃねェッ!!」
「んだとッ!?こんなになって指くわえて黙ってられっかってんだッ!!」
「………いいぜッ……?そうやって溜め込めよッ……怒りをよォ…!」
グレイの頬がほんの少し緩んだ先に放たれた
其の言葉にロードの背筋が凍り付く。
言い知れぬ恐怖に支配されたロードの真横で
いち早くシェリーが動き始めた。
「ロード様っ……ならココは私がッ!!」
シェリーが前に突き出した両手の掌から眩く
放たれた桃色の光がシャーレ達に降り注いで
行くと治癒の特性が働いて行く。
「皆様っ……いま治しますッ!!」
「いやはや……要らぬ手間を掛けさせてくれるな…バルモアの王女よ……」
回復に当たったシェリーの動きを察知し敵側
からはスネイクが蛇へと変化した鞭を大きく
波打たせシャーレ達に放って行く。
するとしなった蛇の鞭が鋭い牙を見せ付けて
シャーレ達を次々にしばき上げる。
「はわわっ…やめてくださいっ……!!」
シェリーはまた一つギアを上げるかの様に光
の強さを上げて転がったシャーレ達に治癒を
施して行くが今度は蝶の羽根を羽ばたかせて
ライアが鉄扇を振るう。
「およしよ……姫。無駄な足掻きじゃ。何度、癒そうとも何度でも攻めるでありんす……こう諭すのも二度目でありんすな……悲劇を呼ぶ姫よ……」
ライアの放った鎌鼬が桃色の光に包まれゆく
シャーレ達を平然と吹き抜けて行った。
舞う鮮血の紅が、ロードの瞳に映り込む。
そして、背中の刀の柄に再度手を伸ばし唇を
強く噛みながら前へと体重を乗せる。
其の勢いのままに飛び出したロードに合わせ
行動の沈黙を貫いていたグレイが動く。
薙刀を手に紺碧色の焔を宿したグレイの薙ぎ
がロードの脇腹付近を襲って行く。
ロードは、何とか刀を縦に向けて其の薙刀の
一撃を防ぐが光の泉の側へと吹き飛ばされて
しまい光る薬草の上を転がり行く。
シェリーは其の光景に頭を抱えてしまった。
両膝を付いて其の光景から目を逸らすかの様
に俯き、身体を震わせ始める。
やはり、何も護れないー。
其の恐怖がシェリーの内側を支配した。
仲間に助けられるだけではない、自分自身も
皆の為に何かがしたいと願った。
だが、結果が付いて来ない。
初めてロードに対して閃光のギフトのチカラ
が作用した、あの水の街アリアアクアに在る
闘技場の光景が鮮明に頭に流れ込む。
あの時は、奇跡が起きたのだー。
シェリーの持つ閃光のギフトはギフトの中に
於いても希少な時代を照らすチカラ。
少女は、またしても其の奇跡に縋り付く。
「(皆様をたすけたいっ……どうか、どうか………ご加護をッ……!!)」
願いとは、想いのチカラ。
閃光のギフトが果てしなく闇に包まれた世界
に眩き暁光を照らし始めたー。
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