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第十三篇第一章 創痕癒す光の泉
這い寄る恐怖
しおりを挟む女性陣が此の景色に其の瞳を奪われている中
男性陣はと言うと此方は此方で眼前に広がる
景色に口をあんぐりと開けていた。
「……おお、すっげ……」
感嘆の声を上げたロードはまるで其の景色の
中へと深くより深く沈み込んでしまいそうな
錯覚さえ感じていた。
其れ程、此の光の泉は幻想的だった。
そして、漸くロードが本来の目的を思い出し
手のひらをポンと叩くと口を開ける。
「つか、そうだった。ランス達がまってんだからさっさと薬草と水、とってかえんねぇとな」
ロードが勢い良く泉に向けて走り出そうと
した其の瞬間にシグマがロードの着物の裾
を徐に引っ張ってしまう。
「どわぁっ…!」
其の勢いでよろめいたロードと何故かシグマ
が裾を引っ張っていたのを離すタイミングが
ピッタリと合ってしまいロードは顔から勢い
良く草むらにダイブしてしまった。
「………って、何すんだこのヒジキ頭がァァ!!」
「うっさいねん、ボケェ。お前…今…とんでもないコトするトコやったんやぞ」
「………はあ?」
何やら神妙な顔付きで話し始めたシグマの事
を座り込んだ状態でロードが見詰める。
「ココはおそらくやが……とても神聖な場所なんやろ……いや、おそらくやない。ワイの勘がそう言っとるんや」
緩りと歩き出しロードの真横に立ったシグマ
の姿を顔面を摩りながらロードが見ていると
シグマが更にこう続けた。
「こういう神様が住んでそうなトコにはいるんやったらな、かかしちゃならんコトがあんねん」
「かかしちゃ…ならん、コト……?」
ゴクリと唾を飲み込み、喉を鳴らすロード。
「失礼しますッ!!」
品行方正、礼儀正しく腰を曲げて何故か泉に
挨拶をしたシグマを見てロードがズッコケて
背中から草むらに横たわった。
「……お前……そんなキャラだったのかよ…シグマ……何のために俺は……ニャロウ……腹立って来たぜェ……!」
ガバッと起き上がったロードは其の勢いの儘
立ち上がりシグマに向かって行こうとする。
だがしかしー。
「何やってんのっ?置いてくよっ、二人ともっ!」
「おう、すまんすまんっ!」
既に泉の周りに入っていたシャーレとポアラ
そして、シェリー、レザノフの元へシグマが
笑顔を浮かべながら其の輪に入り込んでいる
のを見たロードの中で何かがプツンと切れる
音がしたのだった。
「って、さっきのは何だったんだッ!!俺以外にも言いやがれッ!!シグマァァ!!」
ロードの叫びが泉の周りを囲む大草原へと
静かに寂しく木霊をするのだった。
そして、光の泉付近には一つの大岩が聳えて
いたのだが、其処に数人の足が掛かった。
大岩を登り終えた人間達はロード達を視界へ
捉えると静かに視線を落とした。
ロード達にも其の殺気混じりの視線は直ぐに
伝わり両陣営の視線が混じり合う。
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