RISING 〜夜明けの唄〜

第十二篇第五章 繋がれて行く絆

揺るがぬ決心

「……見捨てろ…ってのか？俺に…仲間を…」



エルヴィスの声が強く震えている。

ヒューズは其の言葉を聞き終えると迫り来る
大将ララ達の方向へと目を向けた。

そして、ジャベリン型の槍を真横に突き出し
構えると迎撃の体勢を取る。



「話は終わってねぇぞッ…！ヒューズッ！何とか言えよォ！！」


「何言ってるの、エルヴィス。見捨てろなんて言ってないじゃないか……だって、僕の意思は背負って行ってくれるんでしょ？」


「ヒューズ……何の違いがあんだよ…其れのよッ……！！」


「アドリー。無事で良かった……やっと僕も君達の役に立てたかな……」


「やめてッ……ヒューズ！！」


「僕にも君達の想いを背負わせてよッ！！」



ヒューズの身体から多量の波動が流れ出す。

そして、樹木の覚醒が起こった。

身体が神話の生物、ケンタウロスの様に変化
するとヒューズとエルヴィス達の間に樹木の
草木が束ねられまるで牢の様に形成される。



「樹木覚醒……“ 槍陣怪馬ランサデルケンタウロス”ッッ！！」



止めようと樹木の牢を掻き分ける様に駆ける
エルヴィスの肩に一人の男の手が掛かる。



「離せッ！！離せよッ！！ギルドッ！！」



エルヴィスを止めたのはギルドだった。

ジタバタと暴れるエルヴィスとは対照的に
ギルドは落ち着き払った表情でヒューズへと
一言だけ、言葉を飛ばして見せた。



「後悔してんだったら…其の役、変わってやんぜ？ヒューズ」


「はは…ギルドさん。エルヴィス達を生かす事が此の国にとってどれだけ重要な事か…幹部を名乗った僕等なら解るでしょ？こんな大役…光栄過ぎて譲れませんね」



ギルドとヒューズの会話が終わったかの様に
見えた途端にエルヴィス同様に樹木の牢へと
駆け込もうとしたアドリー。

其のアドリーを抱き着いて止めたのは同じく
幹部のリズであった。



「アドアドッ！！お願いッ……ヒュズっちの言う通りにしようッ！！」



アドリーは絶句した様に立ち止まる。

家族との別れ等もう二度と起こしたくないと
語っていたリズまでもがヒューズを立てる。

背後に立っていたロード達と同様に完全に
アドリーも言葉を失ってしまった。



「テメェ等…勝手な事ばっかり抜かしやがって…生きるんだッ！全員でッ！ヒューズッ！！」



声を荒げたエルヴィスの身体をぐるりと手で
回したギルドが其の胸ぐらを掴む。



「男が腹括った後で…グダグダと抜かすんじゃねェ！！」



ギルドの咆哮にエルヴィスまでもが言葉を
失い黙りこくったタイミングでギルドとリズ
が二人の腕を引いて監獄の外へ走り出す。



「待ってくれッ！！ギルドッ！！このままじゃヒューズがッッ！！！！」


「なら全員揃って仲良く死ぬのを待つのかッ！？テメェが掲げた護国の言葉はそんなあめェモンだったのかよッ！！」



ギルドの言葉が轟く中で撤退を始めた仲間達
の背中を自身の背で見送ったヒューズは静か
に笑みを浮かべていた。