RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十二篇第五章 繋がれて行く絆

果てしなく遠い一歩

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「鍵は手にした様だが参謀アドリーの解放は私達を超えてからだ」


「此処は地獄の大監獄、謀反者達の最後の大砦……絶望を味合わせてやろう」



エルヴィスとザックの前に立ち塞がる二人の
強者が圧倒的な波動を垂れ流す。



「ザックさん……援護頼めるか?俺が…アドリーを連れ戻して来る…!」


「総てを懸けて援護します…!」



エルヴィスの身体にノア戦で見せた程の威圧
溢れる金色の雷が迸り始める。

そして、一気に地面を蹴り上げる。

其のエルヴィスに迫る薔薇色の荊を背後から
ザックのボウガンの矢が撃ち抜きエルヴィス
をアドリーの元へと押し進める。

だが、エルヴィスの身体に柳色のマグマが圧
を誇って流れ込み雷ごと呑み込んでしまう。

熱にやられたエルヴィスはまたしてもザック
と共に並んでいた位置まで押し戻される。

其れでもエルヴィスは素早く体勢を立て直し
ララとマッドに向けて飛び込んで行く。

しかし、エルヴィスの攻撃はアドリーの元へ
届かずララとマッドに防がれてしまう。

血反吐を吐きながらもエルヴィスは何度も
何度も、駆け込んで行く。

防がれては駆け込んで、防がれては馬鹿の
一つ覚えかの様に立ち向かって行く。



「はぁ…はぁ……クソッ……後一歩、後一歩なんだよッ……其の一歩が…どうしても…果てしなく遠い……!」



膝を付き眼前の強敵を睨み付けるエルヴィス
を見下ろすかの様に視線を落とした大将ララ
とケルベロスの覚醒を起こしたマッド。

其の視線にエルヴィスの心は既に折れかけて
しまっており視線が一度落ちる。



「(此処迄なのかよ……結局俺は…大事な人間を護れやしねぇってのか……ッ!?)」



唇を強く噛んで悔しさを露わにし心の中で
姉レイナの事を思い出すエルヴィス。

そして、アドリーとの他愛の無い会話さえも
此のタイミングで思い返し始めてしまう。





“無理だ”





エルヴィスは此の奪還劇の最終盤に今の状態
では此の夢は叶わないと悟ってしまう。

心は完全に折られてしまった。

其れ程、大将ララ、監獄署長マッドのチカラ
は凄まじくエルヴィスの前に立ち塞がった。

止まる訳には行かない。

其れでも足は怯み、竦んで己の弱さの実感を
無慈悲にも心の中を覆って来てしまう。



「(後一手なんだ……アドリーを救け出す為には少なくとも後一手……悔しいが…俺のチカラじゃ届かねェ……)」



戦いの中での末期症状。

エルヴィスに降り掛かった其の想いは成功率
を大幅に下げてしまう夢物語。

其れでも、信じるしかアドリーの奪還という
遥かに高い壁を乗り越える事は出来ない。

そう悟ったからこそエルヴィスは其の想いを
何一つ根拠の無い其の想いだけを心の中に
想い浮かべてしまったのだろう。



「奇跡ってのは…起きちゃあくれねぇのかよ……!」



“奇跡”という夢物語に想いを馳せエルヴィス
は牢の中のアドリーを見詰めた。




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