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第十二篇第五章 繋がれて行く絆
辿り着く最深部
しおりを挟む「アドリーッッ!!」
最深部に唯一、隔離されたかの様に存在する
巨大な扉を蹴破るかの様に勢い良く壊し中へ
駆け込んで来た護国師団反乱軍総長を務める
エルヴィス・ハワードは真っ先に其の名を
大声で叫ぶと其の視界の奥の牢に鎖で繋がれ
自由を失ったアドリーと視線を交わらせる。
「……エル…ヴィス………ッ!!」
「待たせたな。救けに来たぜ?アドリー」
笑顔を浮かべたエルヴィスの視界の先で泣き
はらした様な顔で言葉に詰まるアドリーの姿
をエルヴィスは静かに其の瞳に映す。
そして、緩やかに歩み寄って行くエルヴィス
とアドリーの間に此の救出作戦の中、最大の
障壁となるであろう女性が立ち塞がる。
其の女性は小紫色の羽織をフワリと揺らして
エルヴィスの表情を静かに見遣る。
「まさか…此処迄辿り着くとは。其れが貴方達、反乱軍の絆というワケ?」
「アンタは確か……帝国軍大将のララ・スターハート。とんでもねぇ大ボスが待ち構えてたモンだな」
歩みを止めたエルヴィスと大将ララの視線が
交差し一触即発の雰囲気を醸し出す。
其処に待ったを掛けたのは鎖に繋がれたまま
のアドリーの喉を裂く様な声であった。
「どうしてッ……どうして来たのッ…エルヴィス……危険だって言うのが解らなかった?皆を護る為に…私が犠牲になったのが解らなかった……?」
アドリーの言葉にエルヴィスはすうと息を
吸い込んで一気に言葉を解放する。
「ゴチャゴチャうるせェッ!!」
其の言葉にアドリーの言葉は鎮まる。
そして、不思議と大将ララは言葉を挟む事を
せずに其の場に立ち止まっていた。
「お前はいつだってそうだ…。強がってばっかで涙なんか見せねぇ。本当は怖いくせによ」
「…エルヴィス……」
「俺は…俺達は…アドリー…お前っていう大切なモンを失わねぇ様に…此処迄…必死に走り抜けて来たんだッ!」
アドリーはとある過去の一ページを思い返し
其のシーンが脳内にフラッシュバックする。
其れは十年前のあの日、孤児村ピースハウス
から、ノアやティアから袂を別ち二人で行く
当ても無い世界へ飛び出した時の事。
其の夜に、アドリーは隠れて泣き伏せた。
其の涙をエルヴィスに見られていた事も鮮明
に覚えているが、忘れられないのは其の翌日
にエルヴィスに掛けられた言葉。
『……辛いのはお前もだったよな。悪かった…一人で辛い気になっちまってよ…ダセェよな俺…。それでもアドリーが俺に着いて来てくれんなら……例えお前の目に未来が見えなくなっても俺が照らしてやる…お前が…泣かない世界を創ってやる…!』
此の言葉をアドリーは忘れない。
そして、此の言葉からアドリーはまた一つ
違った解釈で受け止めてしまっていたのだ。
エルヴィスを支えたくて飛び出した。
しかし、自身が流す涙はエルヴィスの重荷になるのだと思ってしまったのだ。
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