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第十二篇第三章 激震の大監獄
不変の帝国主義
しおりを挟む「ヒューズ…改めてお前は政府に楯突く犯罪者…此の騒動終結後にお前が帰るのはまた此の檻の中だ…」
「政府に楯突く犯罪者、ですか……勿論、真っ当な理由で牢の中に居る人の方が多い…其れでも居ますよね?政府の要らない法律のせいで気に食わないと牢に入れられてる方も」
「何を言ってんだ……政府が其の法を決めてるんだから…其れを犯した奴等が牢に入れられんのは当然だろうが…」
「そうでしょうか。政府は…恐れてるだけでは?自分達に歯向かう勢力の台頭を…」
「只の悪徳な技術屋だったお前が…反乱軍という看板を背に随分と自信付けたみたいだな…ビービー泣いてたあの頃とは違うってか?」
過去を想起させるロアの言葉と笑みに多少の
胸の痛みを抱えながらヒューズは何とか其の
恐怖に打ち勝とうと前を見る。
「違いますよ…二度と見たくもなかった此の場所へだろうと足を向けられたのは…仲間の為ですから…!」
「安い陶酔だな…儚い夢から早く覚めろ…現実に戻り…また可愛がってやるからよ…!」
「結構です…。僕、貴方の事、嫌いなので」
ヒューズが一気に空中へと跳びジャベリン型
の槍の先端をロアへと向ける。
遂に攻撃を仕掛けて来たヒューズからロアは
目を切って下へ目線を落とすと呟いた。
「流水覚醒……“ 泡沫鋏撃”………」
ロアの覚醒が引き起こす衝撃波に因って背後
へヒューズが吹き飛ばされる。
全身を包んだ深藍色の固い甲羅の様な身体に
二本の触覚が額の上で躍る。
そして、棍棒は消え去り両腕も深藍色の蟹の
鋏の様な形へと変貌を遂げた。
其のロアは左の鋏を前に突き出すと鋏の間
から多量の泡を発現させて行く。
吹き飛ばされたヒューズは急いで立ち上がる
ものの其の泡は辺り一帯を既に包囲しており
ニヤリと笑みを浮かべるロアの視線が其の泡
の中に佇むヒューズに注がれる。
「プレジアってのは王家…所謂、帝を擁する帝国主義国家……三百年続くケーニッヒ王家の支配の前だって…別の王家が擁立されてあんだよ…搾り取る側、搾り取られる側…もう生まれた瞬間に決まってんだ…!」
ロアの言葉と共に宙を舞う泡全てがヒューズ
の周りで連鎖する様に弾け大爆発を起こす。
其の連鎖の中で焼き焦げた様な姿で攻撃を
まともに食らったヒューズが静かに大監獄の
地に頭から伏す様に倒れて行く。
「変えたいと動いた人間は数知れず。しかし皆儚く散っていった…身の丈に合わない夢は捨てろ…其れが立場を持たずに生まれてきた俺達が生きる為にしなければならない唯一の事さ…ヒューズ…!」
政府の定めた法を犯す事。
其れは純粋な国への反逆を意味している。
護国の志、革命の志、総てを嘲笑うかの様に
帝国プレジアの誇る巨大戦力の一端が仲間を
救う為に立ち上がった黒の軍団に牙を剥く。
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