RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十二篇第一章 退路無き救出作戦

監獄に囚われし者

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薄暗くどんよりとした重たい空気を抱えつつ
冷たい石の壁に四方を覆われたとある施設の
通路を抜けて行く人間の足音に左右の牢の中
から荒れ狂った人間達がおよそ声とは呼べぬ
喧騒を響かせながら叫びを上げる。

鉄格子を両手で掴みながら牢の外を颯爽と
歩く金髪の女性を見て怒る者、女性と見るや
嬉々とする者と反応は多種多様。

しかし、其の金髪の女性は牢の中の囚人達に
一瞥をくれてやるどころか、其の存在すらも
まるで感知していないかの様に止まらない。

だが、其の女性はとある大きな鉄の扉の前で
静かに足を止めると重たい音を立てて其の扉
を自身から見て奥へと開いて行く。

其処には他とは違い灯りがついており闇の中
に一筋の光が溢れて行く。

円状の其の一室の中にたった一つの形は鳥籠
の様にも見える檻が存在する。

金髪の女性は其の檻の中で手を背後で縛られ
椅子の脚の部分に足を括られた空色の髪の女
を見下ろせる位置にまで近付く。



「はぁ…帝国軍大将と言っても随分と暇なのね…一日に何度もこうして現れて……」



囚人として檻の中に捕らえられている状態で
皮肉めいた事を話す其の女性に金髪の女性は
ムッと眉を上げて反応を示す。



「貴女が全てのアジトの位置を話せば私も此の薄気味悪い場所から出られるのよ?」


「はぁ…悪いけど、仲間を売る様な真似はしないわ……」


「そう?なら仕方ないわね。更に最悪の未来を呼び寄せる事になるわ…」



帝国軍大将ララ・スターハートは牢の中にて
捕らえられている反乱軍参謀アドリーに対し
静かにそう告げると今度はアドリーの表情に
変化が見られて行く。



「最悪の未来…?」


「ええ。貴女を帝国軍本部の処刑台の上で断罪する…しかも日時を公表してね」


「…………其れの何処が最悪の未来なの?」


「解っている筈よ?日時を公表する事で貴女を助けに反乱軍の面々が姿を現す…しかも場所は帝国軍本部…全勢力を以って反乱軍を一網打尽に出来るわ……」



ララの言葉にアドリーの表情は更に曇る。

しかし、ララが話し始めて直ぐにアドリーは
此の事を予想出来ていたのだと思う。

何故なら投獄されて間も無くから既に鋼の町
レアメタリクスの鉄鋼区域レアドキルナにて
自身が取った行動が本当に仲間の為になれた
のだろうかと思い悩んでいたからだ。

一人でも多くの仲間を救う為の行動だったが
其れを彼等はどう受け止めたのか。

見捨てて貰えるならアドリーとしては逆に楽
になれたのだろう。

しかし、其の結果は想像し難いと仲間として
の勘がそう伝えて来ている。

そして、俯くアドリーを見遣りララは静かに
牢に背を向けると扉の方向を見詰める。



「さて…其れが帝国軍本部への移送まで持つかどうか…彼はどう動くんでしょうね…」



小声で囁いた帝国軍大将ララは此の先に待つ
荒れた未来を想像してしまっていた。
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