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第十一篇第三章 鬩ぎ合う苦悩
消え行く憑き物
しおりを挟む後方の援軍としてザックとU・Jが其々の
立場で向かう事が決まった。
其の中でサーガだけが足を止めたまま。
そして、静かに口を開いた。
「U・J…そっちは任せたッス…」
「はあ?サーガ…お前はどうすんのよ…」
「ガスタさん…でしたよね?ちょっとあと一つだけ…聞きたい事があるッス……」
走り出そうとしていたU・Jとザックは其の
言葉を放ちガスタを見詰めるサーガの姿から
疑問符を浮かべながら一度立ち止まる。
「……ええ。余り…時間を取る事は出来ませんが……」
「充分ッス……つー訳で…U・J…後ろのみんなの事は任せたッスよ…」
「………オメェも早く来いよな……」
「ははっ…わかってるッスよ……」
そう言い残してザックとU・Jは其の場から
勢い良く駆け出して行くとほとぼりの冷めた
後方へと足を急がせる。
そして、改めてガスタとサーガが面と面を
突き合わせて言葉を交わし始める。
「国王のあの噂は本当なんすよね…?」
「……正直な所…ほぼほぼ見抜かれている通りだと思います…」
「鎖国政策の事だけを考えれば此れは民への重大な裏切りッス…なのに何でアンタ達は国王を護ろうと考えるンスか?」
「国王と私達だけなら…話は別でした。ロード君の存在…其の母の存在……特に二年前からガズナは何処に居るとも知らぬ母サーラの存在に気付き裏で刺客を動かしています…彼女を使いケーニッヒ王家に終焉をもたらす為に…」
「国王も母親もそして息子であるロード君も処刑し…新たな王族となる…そんな所ッスかね?」
「ガズナが描く青写真は恐らくそうでしょう…」
「自業自得…とも取れないッスかね?」
サーガの言葉は何かを待っているかの様にも
聞こえて来るのだがまだ其の実情の部分は影
に隠したままである。
「私達は…罪を感じています。しかし…因果の中に生まれて来た…ロード君には…何の罪もありません…」
「ロードの事は解ったッス…。でも…アンタ達は罪を感じていると言った…どう償うつもりッスか…?」
「ええ…私達は此の戦いの果てに…………」
ガスタの放った最後の一言だけが山中に吹く
風にふわりと掻き消されてしまった。
しかし、サーガの表情は唖然としていた。
「まさか……そんな事したら…プレジアはどうなるッスか……?」
「私達はあくまでロートル。前時代の人間です…此れからの未来を築き上げるのは若き世代なんです……どう思われようと未来の為に国王様が描いた絵図こそ…私達が此の命を賭して貫くべき正義なのです……!」
ガスタの真剣な眼差しを受けながらサーガは
其の言葉を一つ一つ自身の頭の中で咀嚼して
自分の中へと落とし込んで行く。
「ガスタさん…散々イジワルな質問して悪かったッス…でもアンタのお陰で俺の中のモヤモヤしたモンが消えたッスよ」
憑き物が落ちたかの様な清々しい表情を月夜
に浮かべてサーガは満面の笑みを見せた。
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