RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十一篇第二章 標的包囲戦

無限大の恋心

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「わかったっ…じゃあこうしよっ?ポアラちゃんだけは見過ごしてあげるから…退いてよっ?ここからっ!」




エルムの必死な訴えにポアラは目を丸くして
驚くが一つの言葉に引っ掛かる。



「だけって事は…少なくともそこに倒れてるシャーレは捕らえて行くんだよねっ…?」


「…うんっ…ごめんねっ…!」



静かに瞳を閉じたポアラは次に目を見開いた
時に驚くべき表情を浮かべた。



「それも無理っ!!だって…これからもずっと一緒にいたいもんっ!!」



エルムは驚く。

ポアラが突如として叫んだ事では無く、戦い
の覚悟を定めていた其の表情が突如として顔
を赤らめ間違い無く女の子の顔だったから。



「あれれっ…?もしかしてだけど…ポアラちゃんって…そこに倒れてるシャーレくんの事…好きなのっ…?」



エルムの問い掛けにポアラは黙り込む。

そして、意を決した様に思い切り口を開いて
思いの丈をぶつけて見せるのだった。



「悪いっ!?シャーレは確かにスケベで…だらしないトコもあるけどっ!!好きで好きでたまらないのッ!!ずっと一緒にいたいのッ!!こんな良い男…他になんていないんだからッ!!」



拳をグッと固めたまま真っ赤な顔でルタイ山
の山中に声を轟かせたポアラ。

其れを聞いたエルムは何やら顔を赤く染めて
本気の表情でポアラへと近付いて自身の手で
ポアラの両肩をグッと押す。



「…えっ…なにっ?」


「…ドキドキしたぁ…」


「えっ…えっ…?」


「がんばってねっ!ポアラちゃんっ…エルムちゃんずっと応援してるっ!!」


「えええっ…いきなりなになにっ!!」



ポアラの肩から手を離したエルムは後ろ手に
手を組んで同じ様に赤く染まった表情を見せ
ながらニコッと微笑んだ。



「ずるいよっ…エルムちゃんがそんな話聞かされて…捕らえようなんて出来ると思うっ?無理でしょっ!」


「エルムちゃん…」


「きっと戦いも愛があれば乗り越えられたりするのかもねっ…特に女の子は…恋してる時強いもんっ!」



エルムはそう言い残してポアラの瞳を優しく
見詰めた後でドーマンへと歩み寄りステッキ
を振るうと蒲公英色の風船を幾つか合わせて
ドーマンの身体を持ち上げる。



「いつか…ゆっくり恋バナしよっ?じゃあねっ!ポアラちゃんっ!」



そして、エルムはドーマンを連れてルタイ山
の夜の闇へと消えて行った。

思わぬ決着を迎えたポアラは膝から崩れ落ち
月明かりに照らされながら一息吐く。

窮地は去り落ち着きを見せる其の場だったが
唯一人だけ胸打つ鼓動を抑え込む事に必死な
人間が居る事を忘れては置けない。



「(ポアラ…待て。今のは…私の意識が無いと判断しての言葉である筈…今なら…声ぐらい出そうだが…もう少し…黙っているか…恐らく声を出せば恥ずかしがりのポアラは私を引っ叩く…限界の私は其れで逝きかねない…)」



ポアラの本音を聞いてしまったシャーレは
意識を失っていると偽る事を決め地面に赤く
なった表情を隠して見せるのだった。

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