RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十一篇第二章 標的包囲戦

窮地に晒されて

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「あれっ?ドーマンくん…?」



其処に現れた茶髪の女性は其の光景に血の気
の引いた表情を見せながら慌てて駆け寄る。

そして、ドーマンの状態を膝を着いて確認し
其の女性は胸を撫で下ろした。



「はぁっ…大ケガはしてるけど…何とか大丈夫みたいだねっ…エルムちゃん…ドキドキしちゃうよ…もうっ。でも急がなきゃ行けないね…!」



其処に現れたのはポアラと交戦していた少将
エルム・ミュリアルだった。

同僚であるドーマンの生存を確認した後で
後方にて待機させていた医療班へとエルムは
無線で連絡を入れると立ち上がる。



「この人が…ドーマンくんを…」



エルムは伏せるシャーレの傍らに立ち尽くし
見下ろす様に視線を落として呟いた。

残り火の様な意識の中でシャーレは此の窮地
が何を意味するのかを悟っている。

しかし、身体も動かず声も出せない。



「……この人も…国家指名手配の人間達に加担する悪い人の仲間…やっぱりこのままって訳には行かないんだよね…」



静かに呟いたエルムの口振りからは何かを
自身に諭しているのだろうかとも受け取れる
様な心情の揺らぎが感じ取れる。

そして、エルムがグッと拳を固めた其の瞬間
背後から一人の女性が割り込んで来た。



「させないっ!!」


「えっ?そんな…まさか自分で動けるなんてっ…!」



エルムは背後から飛び掛かって来た女性に
身体を掴まれて繋がった状態で山中の地面を
勢い良く転がって行く。

そして、手が離され立ち上がった目の前の
女性を尻もちを着いた状態でエルムは目を
まんまるにして見詰める。



「…ポアラちゃんっ…えっ…なんで追ってこれたの…?動ける様なケガじゃなかったでしょっ?」


「舐めないでっ…か弱いだけが女の子の専売特許じゃないって…エルムちゃんだって知ってるでしょっ?」


「えーっ…って言ったってさあ…流石に想定外すぎるよお~」



土埃を叩きながら立ち上がったエルムは再び
力強く瞳に力を宿したポアラを見遣る。



「でもっ…手間が省けちゃった…ポアラちゃんと一度離れてる時に思ったんだよね…殺すなんて事はできないけどっ…やっぱり捕らえておかなきゃいけないのかなって…だからそこに倒れてる男の人を捕らえた後で戻ろうと決めた矢先だったからさ…」


「言ったでしょ?させないって…!」



痛む身体に何とかチカラを伝播させる様に
自身に「戦え!」と言い聞かせるポアラの
姿にエルムは笑みを浮かべる。



「ポアラちゃんは…強い子だなあ~。戦いなんてなかったら…お友達になりたかったよ」


「なんで諦めちゃうのよっ…そんな事…これからいくらだって変えていけるんだからっ」


「そうも行かないんだよっ…そこの男の人もポアラちゃんも…ぜーんぶっ…捕らえた後には犯罪者にされちゃうんだからっ…!」



心を痛ませながらエルムは言葉を発した。



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