RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十篇第四章 反乱と革命のフェローチェ

紙一重の決着

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「トドメと行こうか…ウィルフィンッ!!」



突如として地面に手のひらを付いたフロウが
言葉を放つと共にウィルフィンの足元に先程
迄とはレベルの違う粘土が纏わり付く。

すると振り上げた大槌の先に獰猛で巨大な猪
の姿が顕現し声を上げながらウィルフィンに
向かって襲い掛かって行く。

そして大槌を頭上で旋回させながらフロウも
猪の姿と同化する様に空中へと跳んだ。



「絶技…“ 進奥・猪武牙しんおう・いぶきば”ァァァァ!!!!」



ウィルフィンは波動を流し込み何とか粘土の
大地から抜け出そうと動くがフロウの接近に
間に合わない事を察知し刀から漆黒の竜巻を
起こして迎え撃つ。

しかし、ウィルフィンの攻撃をいとも容易く
フロウの渾身の一撃が凌駕した。

直撃を受けたウィルフィンはフロウの一撃で
突き飛ばされ血飛沫を上げながら地面の上を
転がって行きうつ伏せで倒れ込んだ。



「……波動とギフトを使い過ぎたな…ヒューズという男との戦いが地味に効いている…」



うつ伏せで倒れ込むウィルフィンの身体を
囲む様に流れた砂煙を眺めながらほんの少し
表情を歪ませたフロウは、ウィルフィンへと
立ち上がるなという想いを込める。

しかし、ウィルフィンは意地で立ち上がる。

緩りと立ち上がったウィルフィンは血を流し
ながらも瞳の力は衰えていなかった。



「まさか…アレを受けてまだ立つか…」


「限界だからと自分を甘やかし…立ち止まる道理は無い…!」



ウィルフィンは痛みを堪えながらフロウへと
睨みを効かせて刀の柄を握り直す。



「絶技… 黒影殲羽こくえいせんば……」



ウィルフィンの身体が影と成りて溶け行く。

そして、フロウの視界に突如として黒き羽が
ふわりと舞うとウィルフィンを呑み込んだ影
からマントを翻しウィルフィンが姿を見せる
と目にも止まらぬ斬撃の嵐がフロウを襲う。



「クソッ…見切れなかったか…」


「フロウ…貴様に憎しみは無い…。だが、エルヴィスの道だけは邪魔させる訳には行かぬのだ……」


「互いに…誰かの為か…其れもまた良き…流れだ…!」



フロウの背後に立ち尽くしたウィルフィンが
刀を緩りと納刀し覚醒を解くとフロウの身体
が血飛沫と共にうつ伏せで地面へと沈む。

そして、フロウの意識が途切れた。



「ふう…危なかった…グッ…早く薬草を塗らねば…」



懐から薬草を取り出したウィルフィンは岩盤
に腰掛け自身の治療を始めようとするのだが
何やらフロウを眺め固まった後で渋々にも
見える表情でフロウの元へ歩み寄る。



「医療班が到着する迄の…応急処置…ぐらいはしといてやるか…」



フロウが感じたウィルフィンの無償の優しさ
此の場面でも目にする事が出来た事でフロウ
そして、ウィルフィンも命に別状は無い。

しかし、決着は着いた。

反乱軍副長ウィルフィン・フィンドールvs
革命軍参謀フロウ・ダルバインの戦いは
ウィルフィンに軍配が上がった。

フロウは、戦線離脱。


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