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第十篇第二章 反乱と革命のグラツィオーソ
並ぶ事無き轍
しおりを挟む爆風が掻き消えて行き、両者共に全身に傷を
負いながらも膝と足裏に力を込めて其の巨体
を何とか支えていた。
其の姿からは、互いに先に倒れてなるモノか
とアドラスとウォッカ、二人の気迫と意地が
垣間見える様だった。
そして、無言の均衡の中、其れを破るかの様
に先に吐血し身体をグラつかせたのは革命軍
に所属する幹部ウォッカだった。
「(永ェ…戦いだったなァ…お前さんにはまだ言ってねェ…事があった…)」
ゆらりと倒れ込みながらウォッカは自身の頭
の中に鮮明に流れて来た記憶を辿る。
「(俺っちはよォ…妻と娘亡き後…此の人生を掛けて…二人の夢を追うと決めた…ホントはよォ…最後ぐらい…お前さんと共に歩んで見たかった…!)」
ウォッカは革命軍に所属を変えると決心した
直ぐ後にアドラスへラブコールを送る動きを
見せていた事を心の声で明かす。
だが、運命はチグハグな人生を歩ませた。
ほぼ同じ頃にアドラスはエルヴィスと出逢い
反乱軍加入を正式に表明してしまっていた。
しかも目的を完全に分ける両軍への在籍と
なった事で運命は互いに戦う使命を与えた。
「(……妻と娘にゃあ悪いがよォ…アドラス…お前さんに此の人生の片ァ…着けられんなら…文句なんざあるめぇよ…いやあ、何とも…永く…素晴らしい人生だった…!)」
緩りと流れていた時がまた始まるかの様に
ウォッカは笑みを浮かべたまま地面に臥す。
アドラスは何かを失ってしまったかの様な
消失感を醸し出しながら斧を握り歩み寄る。
そして、ウォッカの身体を上から見下ろして
緩りと斧を振り上げ瞳を閉じる。
「待ってくれッ!!」
突如として鳴り響いた声にアドラスは緩りと
其の動きを止めると声の先に居た橙色の短髪
をした青年へと目を向ける。
「テメェか…裏切りの将兵…革命軍幹部ロイ・バーナード…!」
アドラスは斧を地面へと静かに下ろすと息を
荒くさせたまま場を収めに来た八重歯が特徴
の革命軍幹部ロイを見遣る。
「こんなトコで…トドメを刺しちまったら…絶対に後悔する…抗ってくれよ…アンタ等の運命ってヤツに…!」
「若僧が…知った風な口を効きやがって…タマァ獲って終わりにしてやんなきゃ…いけねぇんだ…生かされたと知るコイツのプライドの為にもよォ…!」
革命軍幹部ロイはハッとする。
誰の為でもない、相手の為にトドメを刺す。
此の終わり方すらウォッカを想っての行動で
あり悔しさを押し殺すアドラスの表情からは
其の覚悟がひしひしと伝わって来た。
だが、運命はまたも新たな悪戯をする。
其の覚悟を持ったアドラスにも限界の時が
此処で訪れ緩りと気を失いながら倒れ込んで
しまいロイだけが此の場に残された。
「……敵同士で在りながら…不変の相手への信頼か…凄いモン見せられたな…」
反乱軍幹部アドラスvs革命軍幹部ウォッカ。
両者、戦闘不能に因り引き分け。
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