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第十篇第一章 反乱と革命のリゾルート
忘れざる指切りの約束
しおりを挟む攻防とは言えど攻める側と防ぐ側がこんなに
ハッキリと別れる事はそうそう無いだろう。
エゼルは何度も何度も本気で狙いに来ていた
ルナの攻撃を楽しそうに笑顔を浮かべながら
紙一重で避ける事に全力を注ぐ。
「いつまで…そうしているつもりだ…?」
「んん?いつまでって…攻撃がやむまでに決まってるっしょ?」
ルナは段々とクールさを失って行く。
背中に背負った槍さえ抜く事の無いエゼルは
ただただルナの攻撃を躱し、たまにだが満面
の笑みをルナに向けて来る。
ルナは今何をしているかも段々と解らなく
なってきておりただただ弾丸を連射する。
そうしている最中、たった一発の弾丸が笑顔
を絶やさなかったエゼルの肩先を掠める様に
通過すると血飛沫が舞う。
そして、其の血飛沫を起点に紫苑色の氷が彼
の肩をじわりと凍結させた。
「……さあ、そろそろ化けの皮が剥がれる頃合いだ…女性に攻撃が出来ない?そんなもの…命の危険に晒されては貫く事など不可能だろう…エゼル・アッシュトール…!」
「おおっ!僕ちんの名前覚えてくれたんだ?嬉しくて跳びはねたくなるっしょ~!」
ルナの肩透かしは異常だった。
傷を負い表情筋がじわりと歪んで来ながらも
痛みを堪えてエゼルは嬉しそうに口を開く。
「何故だ…エゼル…貴方は死んだとしても私を攻撃しないつもりなの…?」
「んん?だ~か~ら~…最初っからそう言ってるっしょ…かわうぃ~子が好きなのは男の性…女性を攻撃しないのは…僕ちんが家族と“指切りの約束”をしたから…針千本なんて僕ちん飲めねぇし~」
「馬鹿げてる…死んだら何もかも終わりなのよ?約束一つで…死ぬ事を選ぶなんて…貴方…正気の沙汰じゃ無い…」
ルナの言葉にエゼルはほんの少し黙り込むと
雲一つ無い青空を浮かべて口を開く。
「ルナちゃん…命を懸けて守るから…約束…って言うんっしょ?」
ニッコリと微笑んで口を開いたエゼルの表情
に気圧されてしまったのは攻める側のルナ。
そして、エゼルの脳内にとある拭い去れない
過去の一ページがフラッシュバックされる。
エゼルの家族はもう此の世には居ない。
父も母も妹さえも。
父は不治の病に因って此の世を去り、母と妹
はバルモアの軍隊に捕らわれて不当な労働を
強いられた上でボロ雑巾かの様に殺された。
エゼルは行方不明になっていた家族を探して
当時、足を使って必死に探して回った。
其の末に殺された家族の亡骸を見て絶望の淵
に叩き落とされた過去が在る。
当時は全てを憎み、恨み辛みに支配されそう
になった事もあったが、彼を救ったのは母親
から父の死に対面した時に告げられた言葉。
『私はね…決して女性に手を上げないお父さんの優しさが好きだった…口ですら傷付ける様な事さえ…言わないのよ?エゼル…貴方は其のお父さんの子…誰よりも優しく…女性を護ってあげられる人一倍カッコいい男になりなさい…?』
エゼルは此の言葉を忘れる事は無い。
其れが今は亡き母との約束だから。
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