RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

文字の大きさ
上 下
399 / 765
第十篇第一章 反乱と革命のリゾルート

忘れざる指切りの約束

しおりを挟む





攻防とは言えど攻める側と防ぐ側がこんなに
ハッキリと別れる事はそうそう無いだろう。

エゼルは何度も何度も本気で狙いに来ていた
ルナの攻撃を楽しそうに笑顔を浮かべながら
紙一重で避ける事に全力を注ぐ。



「いつまで…そうしているつもりだ…?」


「んん?いつまでって…攻撃がやむまでに決まってるっしょ?」



ルナは段々とクールさを失って行く。

背中に背負った槍さえ抜く事の無いエゼルは
ただただルナの攻撃を躱し、たまにだが満面
の笑みをルナに向けて来る。

ルナは今何をしているかも段々と解らなく
なってきておりただただ弾丸を連射する。

そうしている最中、たった一発の弾丸が笑顔
を絶やさなかったエゼルの肩先を掠める様に
通過すると血飛沫が舞う。

そして、其の血飛沫を起点に紫苑色の氷が彼
の肩をじわりと凍結させた。



「……さあ、そろそろ化けの皮が剥がれる頃合いだ…女性に攻撃が出来ない?そんなもの…命の危険に晒されては貫く事など不可能だろう…エゼル・アッシュトール…!」


「おおっ!僕ちんの名前覚えてくれたんだ?嬉しくて跳びはねたくなるっしょ~!」



ルナの肩透かしは異常だった。

傷を負い表情筋がじわりと歪んで来ながらも
痛みを堪えてエゼルは嬉しそうに口を開く。



「何故だ…エゼル…貴方は死んだとしても私を攻撃しないつもりなの…?」


「んん?だ~か~ら~…最初っからそう言ってるっしょ…かわうぃ~子が好きなのは男の性…女性を攻撃しないのは…僕ちんが家族と“指切りの約束”をしたから…針千本なんて僕ちん飲めねぇし~」


「馬鹿げてる…死んだら何もかも終わりなのよ?約束一つで…死ぬ事を選ぶなんて…貴方…正気の沙汰じゃ無い…」



ルナの言葉にエゼルはほんの少し黙り込むと
雲一つ無い青空を浮かべて口を開く。



「ルナちゃん…命を懸けて守るから…約束…って言うんっしょ?」



ニッコリと微笑んで口を開いたエゼルの表情
に気圧されてしまったのは攻める側のルナ。

そして、エゼルの脳内にとある拭い去れない
過去の一ページがフラッシュバックされる。

エゼルの家族はもう此の世には居ない。

父も母も妹さえも。

父は不治の病に因って此の世を去り、母と妹
はバルモアの軍隊に捕らわれて不当な労働を
強いられた上でボロ雑巾かの様に殺された。

エゼルは行方不明になっていた家族を探して
当時、足を使って必死に探して回った。

其の末に殺された家族の亡骸を見て絶望の淵
に叩き落とされた過去が在る。

当時は全てを憎み、恨み辛みに支配されそう
になった事もあったが、彼を救ったのは母親
から父の死に対面した時に告げられた言葉。



『私はね…決して女性に手を上げないお父さんの優しさが好きだった…口ですら傷付ける様な事さえ…言わないのよ?エゼル…貴方は其のお父さんの子…誰よりも優しく…女性を護ってあげられる人一倍カッコいい男になりなさい…?』



エゼルは此の言葉を忘れる事は無い。

其れが今は亡き母との約束だから。
しおりを挟む
感想 28

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

旦那の真実の愛の相手がやってきた。今まで邪魔をしてしまっていた妻はお祝いにリボンもおつけします

暖夢 由
恋愛
「キュリール様、私カダール様と心から愛し合っておりますの。 いつ子を身ごもってもおかしくはありません。いえ、お腹には既に育っているかもしれません。 子を身ごもってからでは遅いのです。 あんな素晴らしい男性、キュリール様が手放せないのも頷けますが、カダール様のことを想うならどうか潔く身を引いてカダール様の幸せを願ってあげてください」 伯爵家にいきなりやってきた女(ナリッタ)はそういった。 女は小説を読むかのように旦那とのなれそめから今までの話を話した。 妻であるキュリールは彼女の存在を今日まで知らなかった。 だから恥じた。 「こんなにもあの人のことを愛してくださる方がいるのにそれを阻んでいたなんて私はなんて野暮なのかしら。 本当に恥ずかしい… 私は潔く身を引くことにしますわ………」 そう言って女がサインした書類を神殿にもっていくことにする。 「私もあなたたちの真実の愛の前には敵いそうもないもの。 私は急ぎ神殿にこの書類を持っていくわ。 手続きが終わり次第、あの人にあなたの元へ向かうように伝えるわ。 そうだわ、私からお祝いとしていくつか宝石をプレゼントさせて頂きたいの。リボンもお付けしていいかしら。可愛らしいあなたととてもよく合うと思うの」 こうして一つの夫婦の姿が形を変えていく。 --------------------------------------------- ※架空のお話です。 ※設定が甘い部分があるかと思います。「仕方ないなぁ」とお赦しくださいませ。 ※現実世界とは異なりますのでご理解ください。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

処理中です...