RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第十篇第一章 反乱と革命のリゾルート

真っ直ぐに伸ばした手

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意識が遠退いていたデュークは敵のガルダが
伸ばした腕に救われて意識を引き戻される。



「ガルダ…君は…何をしているか理解しているのか…?私と君は…敵同士…」


「ゴチャゴチャ、ゴチャゴチャ…うるせェんだテメェはァァ!!黙っとけ…ぶっ飛ばされてェのかァァ!!?」



顔を歪め滴り落ちたガルダの血がデュークの
頬へと到達すると共に勢い良くガルダの腕力
でデュークの身体が高台の上へと引き戻され
互いに息を荒々しく吐きながら大の字に高台
の上で寝転がる形となった。



「はぁはぁ…何故…助けた…?ガルダ…」


「はぁはぁ…あァ!?良くわかんねェ…俺様はバカだからなァ…良くわかんねェけど…ウチの総長はテメェんトコの総長をバカにしたコトは何一つ言わねェし…逆に誉めてやがるんだよッ!!」


「エルヴィスが…?」


「そんでよォ…テメェとはよォ…もう何度目だァ!?良ォくやり合っただろ!?テメェの強さも…テメェのスゴさも俺様ァ骨の髄まで知らされてたんだ…ウチの総長エルヴィスもテメェんトコのノアも…それにデューク…テメェも…んな簡単に死んだらいけねェ気がしたんだァァ…文句あるかァ!?」



ガルダはらしく声を高らかに張り上げながら
自身すらも纏まり切らない胸の内の想いを声
に変えて絞り出していた。

言葉と共に何度となく吐血をしてもだ。



「ガルダ…君は…憧れる程に真っ直ぐだ。君程の男が惚れ込み担ごうとするエルヴィスは其れ以上の男だという事か…?」


「あァ!?あったりめぇだろうがァァ!!俺様のリーゼントに誓ってもいいぜェ!?」


「何故…リーゼントに誓うのだ…フッ…底知れぬ程に面白い男だ…」



デュークが初めて笑みを浮かべた。

貿易名家オースティン家の復興を願い革命軍
の下地を創っていたノアと出逢い未来へと足
を大きく踏み出して行ったデューク。

反乱軍加入前は片田舎の暴走族チームの頭を
張り流れでエルヴィスと揉めてタイマンでの
決着を求める中、敵対していたエルヴィスに
自身と仲間の危機を救われたガルダ。

互いが互いを見て想うのだろう。

言動や見た目はかけ離れていても誰かの下に
簡単に下る様な男では無いという共通点。

其の両者が互いの想いは在りつつも命を懸け
エルヴィス、そしてノアの両者が歩む道のり
を拓こうと意地とプライドをぶつけ合った。

互いに相手方の総長の器の大きさに興味が
絶えずに湧き上がっていた。

今、咄嗟に伸ばした腕と咄嗟に掴んだ掌が
繋がった様にいつしかあの二人が解り合える
日が来て欲しいと朧げに期待しながら。

苦しく残酷な戦いを包み込み其れを嘲笑うか
の如く雲一つない一面の青空を見上げた。

そして、二人は言葉を交わさなくなった。

いつの間にか全力を出し切った両者の意識は
其処からは消え失せてしまっていたのだ。

反乱と革命の交響曲、最終楽章。

荒鷲ガルダvs幻騎士デュークは引き分けの
形で決着の刻を迎えていた。
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