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第九編第四章 此の国の護り神
包み込む紺碧の火柱
しおりを挟む「あ?テメェは何故、俺の前に立つ?」
軍団長グレイの言い放った言葉と其の内側
から滲み出す禍々しい程の狂気のオーラに
眼前に立ち塞がったロードは足が竦む。
「…つか、テメェ、どっかで見た顔だな…ああ…えっと…待てよ?何だったか…」
困り顔を見せていたグレイが一つの閃きを機
にロードの顔を見ながら不敵に笑う。
「思い出した…テメェ…アレだろ?プレジアの王の息子なんじゃねぇのかって疑いがある癖に…バルモアの姫に執着してるっつう売国奴じゃねぇか…!」
「…ばい…なんだって?つか…コイツ…とんでもねぇ殺気だ…!」
グレイが不敵に笑ったのは一瞬だった。
瞳は赤く明るい色である筈なのだが其の瞳の
奥はどうしても仄暗く燻んで闇を抱えている
かの様に狂気を思わせる。
だからこそ、ロードの足は竦む。
夥しい程の恐怖と狂気が入り混じり全神経が
眼前のグレイを拒絶するかの様に。
「オイ…掛かって来る気もねぇなら…わざわざ俺を立ち止まらせるんじゃねぇ…。ムカつく野郎だ…まあ、安心しろ…ガルフ共々…政府のクソジジイ共の前にテメェも縛り付けて差し出してやるよ…」
グレイは両手にロードと同じ業火のギフトの
オーラを纏うが其の色は対照的な紺碧。
やはり先程の火柱もグレイの仕業だった。
そして、動けないロードに向かって容赦無く
間合いを詰めて燃える紺碧の炎の拳で苛烈に
攻め立てるが割って入ったのは死蜘蛛狂天の
リゼアとソフィアであった。
「此の男は生かすのはアラネアの意志…某は其の想いに応えるのである…!」
「流石に…後で説明して貰いますよ…?其のアラネアという男の事…」
「……邪魔くせぇ…雑魚は雑魚らしく…イキがってねぇで…焼き尽くされろッ!!」
救援に入ったのも束の間、リゼアの腹部を
膝を曲げて下方からアッパー気味に紺碧の炎
の拳を叩き込んだグレイ。
更には真横から迫るソフィアの頭を燃える炎
の拳で掴み取ると鳩尾を膝でかち上げ後方へ
投げ飛ばして見せた。
「たくっ…アラネア…?知らねぇヤツの想いだの何だの…興味ねぇってんだよ…」
すると刀を抜刀して迫り来るのはディル。
グレイの足元を薙ぎ払う様に刀を振るうと
「おっと」と声を漏らしてグレイは躱す。
「テメェもか…次から次へとワラワラと…傭兵武族だか何だか知らねぇが…テメェはもう少し…見所のある男だろうがよ…」
そう言い残したグレイが咄嗟に地面を蹴ると
眼前に居たロードを蹴り上げ、浮かび上がる
ロードの首元を掴んで背後へ放り投げる。
「お愉しみを邪魔すんなよ…!」
グレイは其の言葉と共に何本もの紺碧の火柱
を活火山の空へと立ち昇らせロードと自身を
包み込む火柱のドームを創り上げる。
ディルは多少焦った様に其の後を追ったが
火柱の勢いが勝りロードとグレイのみの断絶
された空間を許してしまった。
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