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第九編第一章 流浪人の帰郷
編笠の浪人の正体
しおりを挟むロードは其の一瞬に起きた出来事を未だ頭の
中で把握し切れず口を大きく開けて驚嘆した
表情を浮かべて固まっていた。
「アルマよ…。儂の事を良く知ってるっつーならそんな戦力で囲んだ所で無意味なのも解ってるよな?…しゃらくせぇ…!」
ガルフは先程の一瞬で刀に手を伸ばした。
だが、抜刀した瞬間は目で捉える事は出来ず
其の刀を柴に突き刺した事も見えなかった。
目で追えない程の抜刀術に依って抜かれ柴に
突き刺した刀の鋒を起点に黝色(青みを帯び
た黒色)の氷波が瞬く間にアルマを除く家を
三百六十度取り囲んだ隊士達を氷漬けの姿に
変貌させていたのだった。
「……マジ…かよ…!」
ロードが此の光景を現実だと呑み込む事すら
難しかった事すら頷ける程の早業。
だが、其れを見たアルマは冷や汗が一滴頬を
伝うのを感じながら呆れた様に笑った。
「ガルフ殿…アンタ…衰え…って言葉知ってますか…?五十も超えて来てるってのに…相変わらずおかしいでしょ…?コイツは…」
「其れが解ってんなら…帰れ。幾ら今は中将に登り詰めたって言ってもお前に勝ちの目なんざ存在してねぇ…」
「はっ…俺の上に立つ連中は…化け物しかおらん訳ですか…。今改めて身に沁みましたよ…“元帝国軍大将”ガルフ・ジャッククォーツ殿…!」
ロードは目をパチクリさせると二度三度に
渡って交互にアルマとガルフに目を向ける。
ガルフから知らされた目の前の男アルマは
帝国軍中将でありロードも対峙したヨハネと
同格の精鋭である事は間違いない。
其の精鋭に“化け物”と言わしめさせた目の前
の肩書き等無いと語っていたガルフの背中に
視線を止めて驚嘆する。
元国王直下帝国軍大将ガルフ。
初めて其の目に見る大将という肩書きの男。
其のガルフの一連の動作から起こしたギフト
の練度の高さに納得していくしかなかった。
「だが…退いてはいられねぇんですわ。俺も今やアンタの隊の准将では無く部下を従えた中将という立場なんもんで…!」
中将アルマは腰元に忍ばせたトンファーと
呼ばれる打撃系の武器を構えて自身のギフト
のチカラを解放して行く。
アルマのギフトは卯ノ花色(僅かな青みの
ある白色)の業火のギフトであった。
身体とトンファーに纏わせる様に激る白炎を
揺らめかせてグッと足を前に運ぶ。
「ロード…ほんの少し見てろ。しゃらくせぇが…数秒で終わる…!」
敵は帝国軍の中将であり数秒で終わるという
のは過信が過ぎるのでは無いかと本来ならば
考えたくもなるのだろうが今回に至っては
頷く事しか出来なかった。
ガルフが見せた一瞬の早業。
磨き上げて来た氷雪のギフトの練度。
其の全てが折り重なりガルフの言葉は真実で
あると不思議な安心感を漂わせる。
そして何よりガルフが負ける。
そんな姿を想像するのは難しかったのだ。
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