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第八篇第二章 運命の会談
王女が継ぎし太陽“継承”
しおりを挟むレザノフは心の中で想う。
国王である父、王妃である母が政治の中心と
なっていた時代ならば此のシェリーの決断は
必ず泡となって消えていただろう、と。
此の決断を聞いた分家の人間達の反応は明快
な物だった所まで予想通りだったのだ。
シェリーの決断を分家の人間達は快諾した。
危険が付き纏うのは百も承知なのだが分家が
快諾した背景には哀しき跡目争いのお話へと
戻って行ってしまう。
国王と王妃の一人娘であるシェリー。
其のシェリーが死ねば本家は力を失う。
分家の人間達からすれば其れを望むのだ。
レザノフは全てを知っていたからこそ護衛軍
へ現役復帰を此処で果たす流れとなった。
元護衛軍軍隊長、英雄レザノフの復帰に伴い
護衛軍はより一層の士気の上昇を得た。
だが、レザノフの現役復帰の背景には国家へ
という側面は無く王女シェリーと共に渡航し
プレジアに入る為の復帰だったのだ。
だからこそ、政府上層部には反対された。
英雄レザノフを失う事は許されないと判断を
下した事に依る猛反対もレザノフにとっては
何一つ看過して余りある物であった。
王女シェリーが下した夢見た幼少期の母との
約束を果たしたいと願う事で実現する戦争の
終幕化こそ必要だったのだ。
ノスタルジアの本家が力を取り戻し平和への
第一歩を踏み出す事で叶うシェリーの夢。
レザノフは其の夢に生涯を捧げた。
こうして革命軍の一手に依って王女自らが
此の国へと訪れた背景の疑問を振り払う。
そして、シェリーの記憶の中の旅から全員が
今へと舞い戻って来る事になる。
「私自らがこの国へと訪れた理由はそれが全てです…」
「……ノアはどんな手を使って王女なんていう有り得ない存在を引き入れたのかと思ってたが…まさかバルモアの王家もそんな事態になっているとはな…」
エルヴィスの疑問は最もであった。
其れに対してシェリーがまた口を開く。
「ノスタルジア王家にはこんな言葉がありますっ…」
“王たる者、民を照らす太陽であれ”
「私はまだまだ幼いです…もし両親にこのまま何かあれば私だけではバルモアを支えらません…しかし、今の私には為すべき事がありますっ」
シェリーはふうと息を吐くと決意を込めた瞳
でエルヴィスを見つめて口を開く。
「“明けない夜はありません”かつての兄弟国プレジアとバルモアの関係を再び繋ぐ架け橋として私は王家に産まれたこの運命という人生を捧げたいのですっ…!」
「…姫様っ…!」
シェリーの言葉を聞いていたレザノフの目頭
に熱い物が込み上げて行く。
「私はバルモアの民だけではない戦争で苦しむこのプレジアの人間達とも触れ合い、肌で感じて来たのですっ。両国は今…病んでいると…だからこそ私が“太陽”となって両国を照らしたいっ、これが私の想い全てですっ!」
真っ直ぐ言い放ったシェリーの言葉はロード
達に笑顔をレザノフには涙を流させた。
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