RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第七篇第二章 王家に仕えし血族の墓標

ディルの立ち位置 

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「此の俺をこんな目に遭わせてさっさとトンズラこくつもりか?あァ!?ディルよォ…」



激しい怒り口調で捲し立てるアノンの言葉に
当事者であるディルは変わらず不気味な笑み
を浮かべて相手を一瞥する。

そして言葉は無い儘に背を向けたディルは
同じく死蜘蛛狂天のソフィアと共に改めて
大滝に向けて視線を飛ばした。

そして手のひらから放たれた紅葉色の水流に
因ってまたしても大滝に風穴を開ける。

そして其の大滝の風穴に向けて一気に跳躍
しようとした瞬間に意味深な言葉が飛ぶ。



「……ディル君……今の貴方は敵なのでしょうか?」



言葉を放ったのはガスタだった。

ガスタの言葉に水流の勢いで跳躍をしようと
していたディルは其の動きを止めた。



「………フフフ……ガスタ殿…貴方の見解にお任せ致しますよ…!」



そう言い残すと水流を巻き起こし其の勢いに
乗ってディルは跳躍しソフィアは不慣れながら氷雪のギフトの特性“造形”に因って白銅色
の氷の翼を構築すると飛び上がる。

そして死蜘蛛狂天の幹部であるディルの思惑
が不透明なまま死蜘蛛狂天はエルブルーム山
の大滝プトラムフォールから撤退した。



「クソがァ……何しに来やがったんだッ…あの野郎はよォ…!!舐めた真似してくれやがって…!!」



怒りで豹変したアノンの気持ちも正直解って
しまうぐらいにディルの行動は不明である。

残された人間達も一陣の風の様に消えた
ディルの行動の驚きから解放され現実へと
戻されて行き次の行動へと移って行く。



「…チッ…あの野郎への怒りももう全部…アンタに上乗せしてやるよォ…姫もアンタも皆殺しだァァ!!!!」



身体がビリビリと痺れる程の雄叫びを上げた
アノンに向けてロードとシグマが応戦しよう
と武器に手を伸ばすが其の動きをシルヴァが
完全に静止して止めに入った。



「……其の方がガスタという男か…。合流出来た様で何よりだ…此処は改めて我が食い止める…さあ、行け…」


「いや…アンタだって怪我してんじゃねぇか…!アイツ…強ェんだろッ!?」



シルヴァの提案に対してロードが怪我を負い
ながらも殿を務めようとする姿に慌てた様に
疑問を呈して見せたがシルヴァはブレない。



「……何よりも姫を逃す事が…最優先だ…。違うか…?赤髪…」


「……そりゃあ…!」


「ボヤボヤせんと行くで!?赤頭…ゴチャゴチャ言っとったら何もかんも水の泡になる事だってあんねん…ボケがァ…!」


「…チッ…生きて戻れよッ!?」



ロード達はガスタとシェリーを警護しながら
ディル達と同じ様に大滝を割ってギフトの
チカラを其々が用いて此の場を切り抜ける。



「……あァ……かったりぃ。テメェ…さっさと失せとけよ…邪魔なんだよ…なんもかんもがよォォ!!!!」



雄叫びと共にアノンがシルヴァへと力強く
片手で握った大剣を振り下ろした。


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