RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第七篇第二章 王家に仕えし血族の墓標

送り込まれた刺客

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「皆さん…誰か来ます…!」



其の一言にロード達はガスタが向けていた目
の方向へと集中を高めて振り返った。

そしてほんの少しの沈黙の後で其の壁穴から
飛び出て来たのは白いコートを羽織った白髪
の細身の女性であった。

そして着地した其の身体の揺れの影響で身に
纏っていた白いコートの下からロード達の目
に飛び込んで来たのは瑠璃色の羽織。

ロードは其の女性の姿を見た途端に其の女性
が何者なのか解ってしまっていた。

其の女性の髪色はロードの頭の中に浮かんだ
一人の男性の色と同じ、更にはコートの下に
羽織られた青藍色のマントの色には間違い様
の無い確かな見覚えがあった。

目の前の女性は膝を曲げて着地をしていたが
緩りと背筋を伸ばすと目の前のロード達に目
を向けると白いボブの髪が揺れ動く。

コートで見え難いが前を開けている為に足が
露出されたショートパンツに袖の無い黒色の
トップスを身に付けている事が解る。

突如として現れた白髪の女性の前にユラユラ
と身体を揺らしながらロードが進む。



「……アンタ…まさか…」


「…私の事を知っているのか?…だがお生憎様…今は後ろの老人一人が目当てなのだ…そこを退いて欲しい…」


「……悪ィ…そっちの方ももちろん…捨てて置けねぇんだが…アンタ…ソフィアって人じゃねぇか…?」


「……ソフィア・アインプテラ。私の名だ…君が求めているソフィアかどうかは知らないがな…」



ロードは確信に至る。

雪の郷ウルジムスルクで再会した新聞記者と
裏の情報屋を兼任しているサバネから教えて
もらった死蜘蛛狂天にいる妹の存在。

ガスタとの再会を果たし、引き受けたサバネ
の妹との邂逅すら流れ作業かの様にトントン
拍子で達成してしまった事に多少困惑気味の
ロードだったが意を決して口を開く。



「…間違いねぇ…ソフィアさん…アンタに話してぇ事がある…今は一回俺の話を聞いてくれねぇか…?」


「……悪いけど…私にとっては目的が全て。先に標的を仕留めさせて貰う…!」



ロードの言葉に聞く耳を持たなかった目の前
のソフィアが腰元に横に携えていた鞘に向け
両方の手を伸ばして鞘から刀を抜刀する。

刀身は短い物の何と両手に握られたソフィア
の武器は双剣小太刀、如何にも速度で撹乱し
間合いを詰めて戦うタイプにはお誂え向き。



「待ってくれッ!アンタとやり合う理由が俺にはねぇんだッ!」


「……今から後ろに居る人間を殺すとしてもか…?」



ソフィアの一言にロードはぐっと唇を噛んで
表情の変化を示すと話をするには此の状況は
余りにも不釣り合いだと悟ってしまう。



「……悪ィ…少し俺に時間くれッ!」



首だけほんの少し後ろに向けたロードは背後
のシェリー達に一つ断りを入れると仕方無し
とばかりに背中の刀を抜刀した。






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