RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

文字の大きさ
上 下
261 / 648
第七篇第一章 雪降る氷山地帯の再会

音の無い剣閃

しおりを挟む



シルヴァは左手に携えた小刀に疾風のギフト
の風を纏わせ足音を消して目の前の裏帝軍の
細身の大男に向けて向かって行く。

月白色(月の光の様な薄い青みの白)の風を
逆巻く様に身体を包みながら体勢を低くして
駆けて行く様は正に忍者そのもの。

そしてシルヴァの持つ疾風のギフトの特性は
静寂であり足音を消して走る事が出来る。

素早い動きで裏帝軍の大男の周りを足の裏で
踏み締めた雪の上にサークルを描くかの如く
円状に走ると敵を撹乱し始める。

裏帝軍の男と右見ては左と其の速度を目だけ
で追いかけ続ける事は不可能だった。

そして音を消したシルヴァは裏帝軍の男の目
が自分を完全に失った瞬間を見逃さず円状に
走っていた身体を一歩で方向転換させた。

裏帝軍の男の背後から腕を畳んで構えた小刀
を突き刺す様に剣先を放つと裏帝軍の男は
何故か諦めた様に瞳を閉じた。

だが其の瞬間身体から溢れ出したのは大男の
鉄鏡のギフトのオーラであった。

京紫色(赤みがかった紫色)のオーラを身体
から噴き上げる様に垂れ流した裏帝軍の男が
目を見開くと同時にシルヴァの身体が背後に
向けて重力を失ったかの様に飛ばされる。

裏帝軍の男は反乱軍エゼルと同じく得意な
特性は磁力でありシルヴァの身体を反発させ
危機をいとも簡単に脱して見せた。

飛ばされたシルヴァも波動のチカラで特性を
破りふわりと雪の大地に両足を落とした。



「世知辛いな。名ぐらい名乗り合ってからでもいいだろうよ?なあ…革命軍の忍びくん」


「生憎、人の名等に興味が湧かなくてな」


「そうか…。陰気な者だな…だったら覚えようが覚えまいが構わない。此方が気分が悪いんでな…一応言わせて貰うぞ…?政府直下裏帝軍幹部アノン・ヴィルヘルムだ…。あの世への通行切符にはならないが…片道切符は私自ら渡してやろう…!」



名乗りを終えたアノンは大剣を持たない左手
の手のひらを前へと突き出すと磁力のチカラ
を発揮させシルヴァの身体を引き寄せる。

そして近付いて来たシルヴァの身体目掛けて
右手で握った大剣を軽々と振り上げ一刀両断
を狙うかの如く一気に振り下ろす。

だが、シルヴァは直前でまた波動のチカラで
磁力の特性を打ち破るとひらりと身体を捻り
アノンの背後に一歩で跳び距離を保つ。



「……惜しかったな?もう少しで…あの世逝きだったというのに…」


「…良く喋る男だな…主は…」



背中を向けて雪の大地に降り立ったシルヴァ
はすっくと立ち上がるとひらりと振り返って
小刀を身体の正面から見て真横に構える。



「…我は影だ…使命を全うする迄は死ねぬのでな…御免…!」



ニヤリと笑みを浮かべていたアノンのほんの
少し見せた隙を見逃さずシルヴァは音も無く
雪の大地を蹴ると小刀でアノンの肩元を一気
に斬り裂くと真っ白な大地に真紅の鮮血が
迸る様に肩口から噴き出して行った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺だけ毎日チュートリアルで報酬無双だけどもしかしたら世界の敵になったかもしれない

亮亮
ファンタジー
朝起きたら『チュートリアル 起床』という謎の画面が出現。怪訝に思いながらもチュートリアルをクリアしていき、報酬を貰う。そして近い未来、世界が一新する出来事が起こり、主人公・花房 萌(はなぶさ はじめ)の人生の歯車が狂いだす。 不意に開かれるダンジョンへのゲート。その奥には常人では決して踏破できない存在が待ち受け、萌の体は凶刃によって裂かれた。 そしてチュートリアルが発動し、復活。殺される。復活。殺される。気が狂いそうになる輪廻の果て、萌は光明を見出し、存在を継承する事になった。 帰還した後、急速に馴染んでいく新世界。新しい学園への編入。試験。新たなダンジョン。 そして邂逅する謎の組織。 萌の物語が始まる。

妻がエロくて死にそうです

菅野鵜野
大衆娯楽
うだつの上がらないサラリーマンの士郎。だが、一つだけ自慢がある。 美しい妻、美佐子だ。同じ会社の上司にして、できる女で、日本人離れしたプロポーションを持つ。 こんな素敵な人が自分のようなフツーの男を選んだのには訳がある。 それは…… 限度を知らない性欲モンスターを妻に持つ男の日常

勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス

R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。 そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。 最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。 そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。 ※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

転生したら倉庫キャラ♀でした。

ともQ
ファンタジー
最高に楽しいオフ会をしよう。 ゲーム内いつものギルドメンバーとの会話中、そんな僕の一言からオフ会の開催が決定された。 どうしても気になってしまうのは中の人、出会う相手は男性?女性? ドキドキしながら迎えたオフ会の当日、そのささやかな夢は未曾有の大天災、隕石の落下により地球が消滅したため無念にも中止となる。 死んで目を覚ますと、僕はMMORPG "オンリー・テイル" の世界に転生していた。   「なんでメインキャラじゃなくて倉庫キャラなの?!」 鍛え上げたキャラクターとは《性別すらも正反対》完全な初期状態からのスタート。 加えて、オンリー・テイルでは不人気と名高い《ユニーク職》、パーティーには完全不向き最凶最悪ジョブ《触術師》であった。 ギルドメンバーも転生していることを祈り、倉庫に貯めまくったレアアイテムとお金、最強ゲーム知識をフルバーストしこの世界を旅することを決意する。 道中、同じプレイヤーの猫耳魔法少女を仲間に入れて冒険ライフ、その旅路はのちに《英雄の軌跡》と称される。 今、オフ会のリベンジを果たすため "オンリー・テイル" の攻略が始まった。

家族に無能と追放された冒険者、実は街に出たら【万能チート】すぎた、理由は家族がチート集団だったから

ハーーナ殿下
ファンタジー
 冒険者を夢見る少年ハリトは、幼い時から『無能』と言われながら厳しい家族に鍛えられてきた。無能な自分は、このままではダメになってしまう。一人前の冒険者なるために、思い切って家出。辺境の都市国家に向かう。  だが少年は自覚していなかった。家族は【天才魔道具士】の父、【聖女】の母、【剣聖】の姉、【大魔導士】の兄、【元勇者】の祖父、【元魔王】の祖母で、自分が彼らの万能の才能を受け継いでいたことを。  これは自分が無能だと勘違いしていた少年が、滅亡寸前の小国を冒険者として助け、今までの努力が実り、市民や冒険者仲間、騎士、大商人や貴族、王女たちに認められ、大活躍していく逆転劇である。

××の十二星座

君影 ルナ
ファンタジー
※リーブラの外での呼び方をリーからリブに変えましたー。リオもリーって書いてたのを忘れてましたね。あらうっかり。 ※(2022.2.13)これからの展開を考えてr15に変更させていただきます。急な変更、申し訳ありません。 ※(2023.5.2)誠に勝手ながら題名を少し変更させて頂きます。「〜」以降がなくなります。 ─── この世界、ステラには国が一つだけ存在する。国の名も世界の名前同様、ステラ。 この世界ステラが小さいわけではない。世界全てが一つの国なのだ。 そんな広大な土地を治めるのは『ポラリス』と呼ばれる羅針盤(王)と、その下につく『十二星座』と呼ばれる十二人の臣下。その十三人を合わせてこの世界の『トップ』と呼ぶ。 ポラリスはこの世界に存在する四つの属性魔法全てを操ることが出来、更に上に立つ人間性も必要である。そして十二星座全員が認めた者しかなれない。この世界を治めるからには、条件も厳しくなるというもの。 そして十二星座は、それぞれの星座を襲名している人物から代々受け継がれるものである。ただし、それぞれ何かに秀でていなければならない。(まあ、主に戦闘面であるが) そんな世界ステラで、初代に次いで有名な世代があった。小さい子から老人まで皆が知る世代。その名も『××の十二星座』。 その世代のことは小説や絵本などになってまで後世に根強く伝わっているくらいなのだから、相当の人気だったのだろう。 何故そこまで有名なのか。それは十三人とも美形揃いというのもあるが、この代の十二星座はとにかく世界が平和であることに力を注いでいたからだ。だからこそ、国民は当時の彼らを讃える。 これはその『××の十二星座』の時代のお話である。 ─── ※主要キャラ十二人は全員主人公が大好きです。しかし恋愛要素は多分無いと思われます。 ※最初の『十二星座編』は主人公を抜いた主要キャラ目線で進みます。主人公目線は『一章』からです。 ※異世界転生者(異世界語から現代語に翻訳できる人)はいません。なので物の名前は基本現代と同じです。 ※一応主要キャラは十三人とも一人称が違います。分かりやすく書けるようには努めますが、誰が話しているか分からなくなったら一人称を見ていただけるとなんとなく分かるかと思います。 ※一章よりあとは、話数に続いて名前が書いてある時はそのキャラ目線、それ以外はマロン目線となります。 ※ノベプラ、カクヨム、なろうにも重複投稿しています。

【R18】異世界に来たのに俺だけ経験値がセックスな件〜エロスキルで成り上がる

ビニコン
ファンタジー
 突然の学校のクラス全員が転生からの、テンプレ通りの展開で始まる、職業はエロ賢者というアホのような職業だった。  アホのような職業で直ぐに使えないと判定からの、追放されることになる。  ムッツリスケベであった陰キャ主人公が自分の性欲を解放していき、エロで成り上がる。

実力を隠して勇者学園を満喫する俺、美人生徒会長に目をつけられたので最強ムーブをかましたい

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】  ゼルトル勇者学園に通う少年、西園寺オスカーはかなり変わっている。  学園で、教師をも上回るほどの実力を持っておきながらも、その実力を隠し、他の生徒と同様の、平均的な目立たない存在として振る舞うのだ。  何か実力を隠す特別な理由があるのか。  いや、彼はただ、「かっこよさそう」だから実力を隠す。  そんな中、隣の席の美少女セレナや、生徒会長のアリア、剣術教師であるレイヴンなどは、「西園寺オスカーは何かを隠している」というような疑念を抱き始めるのだった。  貴族出身の傲慢なクラスメイトに、彼と対峙することを選ぶ生徒会〈ガーディアンズ・オブ・ゼルトル〉、さらには魔王まで、西園寺オスカーの前に立ちはだかる。  オスカーはどうやって最強の力を手にしたのか。授業や試験ではどんなムーブをかますのか。彼の実力を知る者は現れるのか。    世界を揺るがす、最強中二病主人公の爆誕を見逃すな! ※小説家になろう、pixivにも投稿中。 ※小説家になろうでは最新『勇者祭編』の中盤まで連載中。

処理中です...