RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第六篇第三章 ジェノスハーバー攻防戦

深淵に臨んで薄氷を履むが如し

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「……誰じゃ?童は」


「…どうでもええねん。そんなもん…!」



其の男は萱草色(黄色みのある橙色)の風を
槍の先から起こすと横に薙ぎ払いライアを
背後へと吹き飛ばすとロードを一瞥する。

そしてもう一度吹き飛ぶものの羽で旋回して
体勢を立て直して着地したライアに向けて
視線を向け直すと槍を低く構える。



「アンタがやったんか?コレ…」


「…なんでありんすか…?」


「アンタがウチの姫様こないな姿にしたんかって訊いとんねんボケがァァ!!」



突如現れた褐色肌の鎧の男は目付きを鋭く
するとまるで鬼かの様に声を張り上げる。



「そうでありんす…童はバルモアの人間じゃな?貨物船に乗り込んで来ておった者か…」


「ワイの事なんて覚えんでええわ。あんまりふざけ倒すといてこますで?」


「其れは妾の台詞じゃ…!」



ライアが石の地面を強く蹴ると羽の羽ばたき
に依って加速し鉄扇を下に向けて其の男へと
一気に間合いを詰めて行く。



「…疾風覚醒…“閃角翔馬グリントユニコーン”…!!!!」



間合いを詰めていたライアは其の男の覚醒が
放つ圧倒的な威圧感の突風に因りまたしても
背後へと吹き飛ばされてしまった。

風が其の男を中心に渦を巻いて天へと昇る中
で風が段々と凪へと変わって行くにつれて
覚醒の姿が其の視界に映り込んで来る。

額からは螺旋状の一本角が伸び、同じ様な
モチーフの防具が手首から肘の方向へと
そして足首から膝へと追加されて行った。

更には萱草色の毛皮のファーが首周りに
巻かれると其の男は頭上の位置で片手を使い
槍をぶんぶんと勢い良く旋回させる。



「姫様…重症みたいやからな…さっさと終わりにさせて貰うで?花魁姉ちゃんッ!!」



其の男の旋回させた槍がライアに向けて突き
出されると同時に螺旋状の萱草色の突風が
凄まじい音を立てて放たれる。



「…妾は…此のミッションをこなす事が出来ないでありんすか…?」



連戦を迎えていたライアは閃光のギフトの
チカラで強化されたロードとの戦いでかなり
のチカラを使ってしまっていた事もあって
駆け付けた鎧の男が放つ螺旋状の突風に為す
術無く巻き込まれてしまった。

身体ごと背後の壁へと叩き付けられたライア
は血反吐を吐きながら痛む腕を別の腕で
支える様に持つと足を震わせながら緩りと
立ち上がると全身から流れた血がライアの
限界を物語ってしまっていた。



「ここはお互い命を大切にしたらええやん。構わんといたるから早よ退いたらええ。ワイにも姫様を助けるっちゅう目的があるんやからな…!」



悔しさを隠し切れないライアが其の場から
背を向けたのを確認したロードは全ての緊張
の線がプツリと切れた様にそのまま意識を
失ってしまうのだった。

鎧の男がまだ何者なのかも解らぬままで。

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