RISING 〜夜明けの唄〜

Takaya

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第六篇第三章 ジェノスハーバー攻防戦

光を纏う真紅の業火

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ライアは其の一瞬を見逃した。

いや、此の表現は的確な物では無いだろう。

ライアはロードが踏み出した一歩目、そして
自身の手に持つ鉄扇に刀での一撃を加えた事
を自分の目で追う事が出来なかった。

凄まじい剣閃を受けたライアは真後ろへと
其の身体が吹き飛び自身が立っていた元の
位置にロードが至って居た事に理解の速度
は到底追い付く事は出来なかった。

ロードの持つ刀に依って薙ぎ払われたのか
下から斬り上げられたのか、それとも上から
斬り伏せられたのか何一つ理解が及ばない。

唯一つ解る事は、間も無く自身の身体は背後
の赤銅色の石壁に背中から衝突するという事
であり其の凄まじい勢いに抗えない事実。

ライアの身体が赤銅色の石壁に衝突した瞬間
とてつもなく大きなガラガラという音を立て
石壁が崩落して行き、其の石の雪崩にライア
の身体は呑まれて行った。



「…身体が軽い…!」


「ろ、ロード様っ…?」


「シェリー…怖い思いさせたな。でももう大丈夫な気がする…お前がくれたこのチカラのお陰でな」



ロードの笑顔を見たシェリーは連れて笑顔に
自身の表情を緩りと変化させて行く。

そんな暖かな時間はそうは続かない。

石の雪崩の中に消えたライアが居る位置から
幾つもの鎌鼬が耳に痛い音を立てて迫る。

ロードは其の鎌鼬を全て自身の持つ刀の剣劇
で目で追えぬ速度で斬り伏せる。

ライアは其の攻撃に向いたロードの意識の
間隙を縫い蝶々の羽をはためかせロードの
背後から風を纏う鉄扇を横に薙ぎ払うかの
様に力強く攻撃を仕掛ける。



「…悪ィ…そんぐらいの速度じゃ今の俺はやれねぇよ…?」



振り返ると共に鉄扇を蹴り飛ばすと迫り来る
ライアの額にふわりと手のひらを翳して其の
動きを完全に封じてしまった。



「…有り得ないでありんす…ッ…此れが同一人物だとでも…?」


「痛みも無ェ…身体は軽ィ…何でも出来そうな気がするんだよ。今だけはな」



ライアは額に翳されたロードの手のひらから
放たれる圧力に冷や汗を流しながら身動きが
取れない状態に固まってしまう。

ライアから見れば絶体絶命なのだが、ロード
から殺意は向けられていない事が不可思議で
逆に出所の解らない恐怖を抱かせる。

閃光のギフトの特性の一つ“付加”。

此れは他のギフトとは隔絶された特性だ。

自身だけではなく他の人間にチカラを付加し
其の人間の身体能力を飛躍的に上昇させる。

此の特性の異常さは此の戦いで証明される。

覚醒状態のライアに通常ギフトのロード。

先程迄は歯が立たなかった相手すら完封する
程の能力の上昇を見ればライアが怯むのも
理解は出来るであろう。

閃光のギフトのチカラ等、ライアも初めて
相見えるモノであり希少種だという事実も
改めて証明される事実であった。

常軌を逸したチカラだが、想像は簡単な程に
シェリーの表情に其の綻びが見え始めた。
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